「シンギュラリティ」の議論にみる人間・社会理解の重要性

● シンギュラリティは来ない? AIの未来予想でよくある7つの勘違い

2017.10.23のMIT Technology ReviewにMITコンピューター科学・AI研究所のロドニー・ブルックス前所長が、
「人工知能(あAIやロボット工学の目覚ましい進歩が、私たちの未来の生活を大きく変えると言われており、仕事を失ったり、ロボットに殺されたりするのではないかと心配している人たちもいる。しかし、起こり得ないことを恐れる必要はない。」
として、AIが社会に及ぼす影響について人々が間違った考えを持つようになった7つの理由について説明する記事が掲載されていました。
(引用は「」でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)
https://www.technologyreview.com/s/609048/the-seven-deadly-sins-of-ai-predictions/

1.過大評価と過小評価
「アマラの法則」でよく知られている。「私たちは短期的にはテクノロジーの効用を過大評価し、長期的には過小評価する傾向にある。」を引用して、
AIに対しても「人々は短期的には過大な期待や恐れを抱いているが、長期的な視野から言えば、おそらく過小評価されている」として、以下の6点を評価を誤る原因として挙げています。

2.魔法のようなテクノロジー
SF作家のアーサーCクラークの有名な「高度に進んだ科学は魔法と見分けがつかない」を引用して、高度に発達した科学(技術)の限界を知ることは困難であるため、適切な評価が出来ないと指摘しています。

3.やっていること(Performance)と能力(Competence)の違い
ここでは、フリスビーで遊んでいる人々の写真を提示する「人」と同じようにフリスビーで遊んでいるかどうかを判定する「AI」を例に上げ、「人」はフリスビーとはどのようなもので、どこで遊ぶのかなどといった質問に答えられるが、AIはそのような質問に答えられないとして、現在やっている作業とその背景として持っている知見の差について述べています。

4.スーツケースワード
これは、スーツケースに色々なものを詰め込むように、同じ言葉が非常に多くの意味を含み、人によって解釈が異なってくるような事象を示すものですが、
ここではスーツケースワードとして「学習(Learning)」を取り上げ、人間の学習とAIの学習は意味・内容が異なるにも関わらず、人間の学習と同じようにAIが学習すると誤解される例を挙げています。

5.指数関数
ムーアの法則を取り上げて、指数関数的にAIの能力が増大すると予測されているが、iPodとiPhoneの記憶容量(実際には、両者の容量の差は指数関数的には増大しなかった)を例に上げて、技術面だけでなく、ニーズの面で限界に達すれば、機械の能力が指数関数的に増加するとは限らないことを指摘しています。

6.ハリウッドのシナリオ
ここでは、ハリウッドのSF映画(ロボットを召使にしながら、現在の様に紙に印刷された新聞を読んでいるシーン)を例に上げて、科学技術の進歩に対する想像力は、実際の社会の具体的な変化を予測できないこと、一方で新しい技術は時間の経過とともに技術的に進化し、それがもたらす社会の変化については、人々は十分対応できるだろうと述べています。

7.展開のスピード
ここでは、ソフトウェアとハードウェアにおける技術の展開スピードの違いに焦点を当てて、AIのソフトウェア技術と同じスピードでハードウェアや設備などが変化すると、AI関係の技術者・研究者は考えがちだが、社会に変化を及ぼすには、この分野の内外双方の人々の想像以上に時間がかかることを指摘しています。

 

● 人々、社会に対する理解の重要性

以上長々と、シンギュラリティを始めとするAIやIoTの影響について、予測が困難な理由を紹介してきましたが、上記の論点は、AIなどその技術に特有なものではなく、人間社会の普遍的な特徴・性質に根ざしたものであることが分かります。

つまり、AIやIoT等の新規技術の社会や自社への影響を考える場合、その技術自身に対する理解も必要ですが、同様に社会や人間に対する理解が適切でないと、未来予測を誤るということですね。

 

● 人間学、社会学、科学史が有用な知識源に

AIIoTにかぎらず、自社の事業に影響を及ぼす技術の進展や新しい商品・サービスの出現というのは、常に意識すべきものですが、その影響、特に中長期的な影響を判断するには、対象となる技術や商品だけでなく、その影響を受ける側の社会、市場、顧客を含めた人々に関する知見も重要ですね。

そのような知見を得る上で、既存の科学技術が社会に与えてきた影響の歴史や心理学・社会学等に関する基礎的な知識を持つことは有用ではないかと思います。

そして、これらの知見を持つ人材を社内、社外に持つことは、大変有用な知的資産の構築につながるものと考える次第です。

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