リニア中央新幹線談合問題にみる「競争環境変化のリスク」

● リニア談合、工事中止も…JR東海に疑念広まる、ゼネコン結束崩壊で裏切り合い

2018年01月06日のBusiness Journalに表記の記事が掲載されていました。
(引用は「」でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)

「リニア中央新幹線の関連工事入札をめぐり、スーパーゼネコン4社が談合を繰り返していたことが発覚した。最初に捜索を受けた大林組が4社の談合を認め、違反を公正取引委員会に自主申告した。」

http://biz-journal.jp/2018/01/post_21917.html

同記事には、大林組の自主申告は、独禁法の「課徴金減免制度」の適用を狙ったものであり、その背景には株主代表訴訟の回避もあるのではとに推測を記載しています。

課徴金減免制度とは、「事業者が自ら関与したカルテル・入札談合について,その違反内容を公正取引委員会に自主的に報告した場合,課徴金が減免される制度」
(公取委HPより http://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/genmen.html )
で、いわゆる「早い者勝ち」で課徴金の減額率が大きく変わる仕組みとなっています。

今回、大手ゼネコン4社の内、大林組が自主申告しましたが、関係している土木建設会社は20社以上にのぼるので、この中からも自主申告を行う企業が出てくる可能性もありますね。

 

● 独禁法の適用と競合関係

独禁法では、取引先との商慣行なども規制の対象となりますが、やはり、今回のゼネコンなど、本来競合関係にある企業同士が談合などの不正なやり取りを行ったときに、厳しい判断が下されます。

市場シェアの大きさや、競争制限が市場や消費者などに及ぼす影響も個別に考慮されるので、一概にどんな判断が下されるかを推定することは難しく、案件ごとに、法的リスクを評価することが必要になってきます。

 

● AI・IoTが「競合の定義」に及ぼす影響

上述の通り、「競合同士」がお互いに相手を制限し合うことは、独禁法上のリスクを伴う可能性を持っていますが、では「競合」とはどのように定義されるかといえば、市場競争における実態、また取引関係(取引関係者間の力関係など)、代替商品の有無なども関係してくるので、「自分の業界ではない企業との約束だから安全」と言い切れないものがあります。

そして、AI・IoTなどの新技術の特徴として、業界の壁を越えてビジネスモデルが構築され、同じ市場を異業種間で取り合う競争を促進する面がありますので、従来の業界、業態といったくくりで独禁法などの法的リスクを判断することは、問題となる可能性が出てきます。

また、「課徴金制度」「内部告発」など、他社や社内から自社のビジネスのコンプライアンス上の問題点を告発される確率は大変高くなっているので、コンプライアンスは今後さらに重要かつ幅広い視野で見ていく必要のある課題となってくることと思います。

 

● アンテナを広く張る

AI・IoT等は、その応用も含めて変化が激しいので、自社がどこと競争しているのかは、中々判断しにくいところがありますね。

かといって、法的リスク、コンプライアンス上のリスクを考えた場合、放っておくことも出来ません。

従って、自社の競合状況を自社業界だけでなく、お客様への提供価値からみた市場での競争、自社の市場に参入する異業種、また自社が新規参入する市場の既存の企業など幅広く捉えて、その動向を競争戦略とリスクマネジメントの双方の観点から見ていく必要がありますね。

その方法の一つとして、知的資産経営報告書作成におけるSWOT分析や価値創造ストーリー作成は、コンプライアンスリスクのマネジメント手法としても活用できるのではないかと考える次第です。

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