ソニーの新素材トリポーラスにみる、知財を活用した他社との連携

【今日のポイント】

電池開発から生まれた新素材を男性化粧品にも適用するというソニーの知財戦略。

自社の事業領域外に自分たちが持つ知的資産を活用するための他者との連携は、自社の事業の軸をブラさずに市場を広げる方法としても検討の価値があります。

 

水や空気や男を美しく磨く新素材? ソニーの電池開発から生まれた「トリポーラス」とは

2019/8/14IT media newsに表記の記事が掲載されていました。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1908/14/news057.html#utm_term=share_sp

リチウム電池の研究開発から生まれた植物由来の新素材であるトリポーラス(商標も出願しています)について報じています。

※>トリポーラスソニーグループ株式会社の商標です。

ソニーのトリポーラスのライセンス開始のリリースはこちら

2019129『新素材「TriporousTM(トリポーラスTM)」のライセンスを開始』

(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

『ソニーは1991年に世界で初めてリチウムイオン二次電池を商品化し、その後も高性能化を目指して研究開発を行ってきました。

その過程で特殊な構造を持った炭素材料であるトリポーラスを発明し、特定の物質に対し、既存の活性炭より高い吸着量や速い吸着速度を持つことを見出し、基礎から応用に至るまで特許を取得してきました。

トリポーラスは、水や空気の環境浄化から、化粧品や薬剤、衣類や布製品に至るまで幅広い分野での応用が期待され、その発明は公益社団法人発明協会主催の平成26年度全国発明表彰において「21世紀発明奨励賞」を受賞しています。

ソニーは、この新素材トリポーラスの技術を社会に役立てるため、製品化や量産化の可能性を検討してきました。この度、実用化の目途が立ったため、多くの方々にトリポーラスを活用して頂けるよう、ライセンスを開始します。』

幅広く知的財産の権利を取って、他社にもオープンに対応するというソニーの戦略。
今後のビジネスの広がりが楽しみです。

 

自社の知的資産を他者に使ってもらい、適用先を広げる

知財: 特許、意匠、商標などの知的財産については、

まず、

1.自社の事業の自由度を維持するために、使う技術やデザイン、名称の権利を保護する(自分が使え)というための知的財産権(特許権や商標権)の取得と、

2.自分の事業領域を守る(競合などに入ってこさせない)ための知的財産権の取得に大きく別れ、

後者はさらに、

2-1.自分が使っている技術やデザイン、名称を他者に使わせない(自分が使っている技術や名称の知的財産権の取得)と、

2-2.自分は使っていないが、自分の事業領域で他者が使うであろう技術やデザインを自社で囲い込むことで、他者の参入を防ぐための知的財産権の取得

に分けることが出来ます。

1,2とも得た知的財産権は、自社がその事業を行わなくなった場合(市場の成熟や、自社の事業領域の変更など)には、放棄したり、第三者にライセンスして収入を得たりする方向でその利用方法を検討することになりますが、

今回の事例のように、自社の事業領域の外で、他社との連携で周辺も含めて市場を広げるために、自社が取得した知的財産権を他の市場で必要とする第三者にライセンスするなどして活用することも、効率よく自社の市場を広げるうえで有望な選択肢となります。

さらに、「環境に優しい素材」など、業界によらず普遍的な価値を持つ場合には、統一した名称を使うために商標を活用する事で、幅広い分野で自社ブランドを展開することが可能となってきます。

なお、特許情報は出願されると技術内容が公開されるので、社内に秘匿すべきノウハウと特許の使い分けで差別化を図ることも重要な検討課題です。

このように、事業戦略、成長戦略と連動した知財戦略が重要となりますが、これは、知的財産だけでなく、他の知的資産についても同様であり、

人的資産ならば、事業戦略に応じた採用・育成の戦略が、

構造資産ならば、知的財産だけでなく、上記のような事業戦略と知財戦略を連携させるための仕組みも重要な知的資産となります。

関係資産においては、知財戦略を実現するための弁理士・特許事務所などの専門家との繋がりや、自社の事業領域外にもライセンスできるような、あるいはライセンスを受けられるようなネットワークも、事業環境が急速に変化する現在には必要になってくるかと思います。

このような、事業戦略、成長戦略と連動した知的資産戦略を立てる上でも、知的資産経営報告書の作成と更新は、有効なツールとなるものとしてお勧めする次第です。

 

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