秘密保持契約における契約終了時の秘密情報の取り扱い(概要)

秘密保持

【今日のポイント】

秘密保持契約を結び、秘密情報の交換を始めたあと、その目的を達せた場合、残念ながら果たせなかった場合の双方を想定して、交換した秘密情報の取り扱いを決めて契約内で規定する必要が出てきます。

ビジネス上の目的から逆算しつつ、交換するお互いの秘密情報の重要性などを考慮しながら、案件ごとに契約終了時の秘密情報の取り扱いを決めていくポイントの概要をお話いたしますので、ご参考になれば幸に存じます。

秘密保持契約終了時の秘密情報の取り扱い

以前のトピックスで、『秘密保持契約における秘密情報開示範囲のポイント(概要)』と題して、秘密保持契約書の、秘密情報を開示して良い範囲の記載と実際の開示実務についてそのポイントをお話いたしましたが、

今回は、秘密保持契約終了時の取り扱いについて、契約書内の記載方法と、実際の情報管理のポイントの概要を取り上げます。

 

秘密情報交換の目的からみた、交換する秘密情報の性質の把握と共有

これは、契約終了時の取り扱い検討に限らず、秘密保持契約全般に共通する事項ですが、
まず、秘密保持契約を結ぶ前に、今回の情報交換を行う相手とは、どのような目的で、情報交換を行い、更にその後どのような関係(取引)に進むつもりなのかを明確にすることが、検討の第一歩となります。

これによって、今回相手に開示する情報と自分が開示を受ける(受領する)情報のどちらが多いのか、また、それぞれの重要性(自社、相手双方にとって)を以下の図のように、契約交渉の事前の段階で想定しておきます。

秘密情報の重要性マトリックス

 

このような整理の中で、まずは、自社が開示する秘密情報について、

パターンa(図の1×3):自社に取って重要性(秘匿性)が高く、相手にとっても重要性が高い
パターンb(図の1×4):自社にとっては重要性は高いが、相手にとってはそれほど高くない
パターンc(図の2×3):自社にとってはそれほど重要性は高くないが、相手に取っては重要性が高い
パターンd(図の2×4):自社にとっても、相手にとっても重要性は低い

などのいずれのパターンに相当するか、あるいはその組合せかについて検討し、次に、相手から受領する秘密情報についdて

パターンe(図の5×7):自社に取って重要性(秘匿性)が高く、相手にとっても重要性が高い
パターンf(図の5×8):自社にとっては重要性は高いが、相手にとってはそれほど高くない
パターンg(図の6×7):自社にとってはそれほど重要性は高くないが、相手に取っては重要性が高い
パターンh(図の6×8):自社にとっても、相手にとっても重要性は低い

等のパターンあるいはその組合せのどれに相当するかを想定します。

 

そして、例えば、

パターンA(パターンa×パターンe):双方にとって重要な秘密情報をお互い出し合う場合

パターンB(パターンa×パターンh):自社が開示する秘密情報は双方にとって重要性が高いが、相手から受領する秘密情報の重要性は双方ともそれほど高くない

パターンC(パターンd×パターンe):自社が開示する秘密情報の重要性はさほど高くないが、相手から受領する秘密情報は双方にとって重要性が高い

など、相互に開示する秘密情報の重要性によって、情報開示のパターンを分けて、それぞれに適した契約終了時の条件を検討し、相手と交渉していくことになります。

 

情報交換後に生じるケースの想定

上記のように、秘密情報の交換は、お互いにあるビジネス上の目的を持って行うわけですが、

・その目的が果たせて、共同で次の段階に進む場合(共同開発や事業提携など)と、

・情報交換した結果、少なくとも今回はそこで今回のビジネスに関するお付き合いを終える場合

の双方が想定できます(ここでは、契約違反による解約のような事象はとりあえず別の機会にお話したいと存じます)。

それぞれの場合で、交換した秘密情報の取り扱い方が変わってきますが、
次の段階に進められることを期待しつつも、ここで共同検討が終了する場合も想定して、どちらのケースにも対応できるよう、事前検討して契約に落とし込むことが必要となります。

 

秘密情報の重要性の個別判断とその利用

上記は、今回結ぶ秘密保持契約全体の特性把握のために行うものですが、当然ながら、交換する情報の中には重要で、長期間厳重に秘密情報として管理すべきものもあれば、そこまで重要ではない情報が両方入ってくることが一般的かと思います。

 

その場合、全体としては重要な情報と同じレベルにそろえて管理することが多いかと思いますが、相手とその情報の重要性について個別に確認することも検討し、必要に応じて、特に重要な秘密情報などは、別に定義して、秘密保持期間や管理方法などを他の秘密情報とは別条件で規定することもあります。

 

ただし、情報交換時に考えていた重要性が、その後の状況(外部環境や、相手との関係、自社の事業戦略など)によって変化することもあり得ますので、

リスク回避の面からは、秘密情報として交換した情報については、いずれも双方にとって重要になり得ることを想定し、慎重に取り扱う方向でまずは検討することが望ましいかと考える次第です。

 

秘密保持契約書での契約終了時の規定

上記のように、今回の情報交換でお互いが開示する秘密情報の双方に取っての重要性などを把握し、その重要性や情報の使い方に応じて、取り扱いの条件を契約内容に落とし込むわけですが、

契約終了時に関する規定としては、一般的なものとして以下のようなものがあります。

 

・有効期間:契約自体の有効期限と、その有効期限終了後も規定によって別途有効期限(「残存期間」などと呼ばれます)を規定します。

・返還・破棄条項:契約の終了時や、秘密情報の開示者が要求したときなどに、相手に秘密情報を返還したり、あるいは破棄したりすることを規定します。
この条項では、特に破棄した場合にそれを証明する書面を相手に提出する義務をかける場合もありますが、自社に同じ義務がかかる場合も踏まえて、内容を検討することが必要となります。
また、秘密情報の性質(電子的な情報か印刷された紙の資料か等)とその管理方法等によっては、例えば、コンピュータシステムにコピーが残り、技術的に削除が出来ないなど、返還や破棄が困難な場合があります。

特に秘密保持契約自体の存在やその内容を秘密情報とした場合には、当該契約の締結に関する社内稟議書などに秘密保持契約の概要を記載することが多いため、その稟議書等の保存期間は、秘密情報を保有し続けなくてはならなくなります

従って、返還・破棄の例外として、法令等の義務から保有が必要な場合には、その目的に限って該当する秘密情報は、秘密保持義務を負ったうえで保有し続けられるなどの例外規定を設けることも検討する必要があります。

また、通常の有効期間終了だけでなく、契約自体を解約する場合について、通常の有効期間終了とは別の規定を設ける必要性などについても検討することが望ましいかと思います。

以上、秘密保持契約の終了時の規定に関するごくベーシックな部分についてお話しましたが、

他の規定と同様に、まずは契約の目的と取り扱う秘密情報の性質、およびその利用方法などから逆算して、その秘密情報は、契約終了時にどのように取り扱うべきかを個別具体的に判断しながら、契約書に落とし込むことをお勧めする次第です。

 

秘密保持契約については以下のトピックスでも取り上げていますので、ぜひ、御覧ください!

「秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(15)~秘密保持契約が必要な場面」

「秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(25)~契約交渉の前準備」

「秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(35)~秘密保持契約の主要項目とポイントー1

「秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(45)~秘密保持契約の主要項目とポイント-2

「秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(55)~秘密保持契約締結後の管理」

 

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