三菱総研のAIによる行政への問合せさ対応サービスにみる(ニーズの多様化と標準化の両立)

● AIによる住民問い合わせ対応サービスを提供開始~鍵は行政情報の標準化~ 

2018/9/4に三菱総合研究所(三菱総研)は表記のリリースを公表しました。

(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)

『1. 背景・経緯

人口減少が急速に進行するわが国では、今後労働力不足が深刻化し、行政分野にも波及することが予想されます。一方で、多様化する住民ニーズや、スマートフォン普及によるコミュニケーション手段の変化に合わせた行政サービスの提供が求められています。

こうした課題に対応するため、MRIでは行政分野におけるAI活用に取り組んでいます。その第一弾として、AIによる住民問い合わせ対応サービス「AIスタッフ総合案内サービス」を開発し、2018年2月~3月に、全国35自治体の協力を得て実証実験を行いました。そこで得られた知見・経験を踏まえ、2018年10月からサービスの提供を開始します。

2. サービスの特徴

本サービスは、AIとの対話(チャット)により、住民が知りたい情報を提供します。最大の特徴は、機能や内容を標準化し、自治体間で共同利用する点です。これにより、職員の負担を極力増やさず安価にサービスを提供し、かつ多くの自治体が利用することでAIの学習効果を高めることができます。サービス利用料金は月額10万円からの予定です。
コミュニケーションアプリ「LINE」からのサービス利用も可能です。

また、「無料お試しサービス」も準備しました。問い合わせ対応用の質問・回答データを格納するだけで、使い勝手を体験したり導入効果などを実感したりすることができます(2018年10月以降随時受付、最大3カ月間)。

なお、本サービスは日本ビジネスシステムズ株式会社(代表取締役社長:牧田幸弘、以下 JBS)と共同で取り組んでおり、JBSは主にシステムの構築・運用を担当しています。』

と、AIによる住民問い合わせ対応サービスを、2018年2月~3月に全国35自治体の協力を得て行った実証実験結果を踏まえ、2018年10月からAIとの対話(チャット)により、住民が知りたい情報を提供するサービスを開始すること、

メインの特徴として、機能や内容を標準化し、自治体間で共同利用する点を挙げ、これにより、職員の負担を極力増やさず安価にサービスを提供し、かつ多くの自治体が利用することでAIの学習効果を高めることが可能と謳っています。

いわゆる「スマート行政」(AI・ICT等による行政の効率化とサービスの高度化)に向けたサービスの事例ですね。

 

● 多様化と標準化の組み合わせ

上記のサービスは、インターフェースとコンテンツ(内容)は多様に、問合せのフォーマットなどは標準化することで、ビッグデータを活用し、安価で高性能なAIサービスの提供が可能を可能にしているという点も注目すべきかと思います。

行政のサービスは「お役所仕事」と揶揄されることもありますが、その画一的なサービスを逆手にとって、複数の地方自治体でAIの学習効果を共有するという、「画一的」「融通が利かない」という弱点を「標準化」という強みに変えた事例とも言えます。

 

● フォーマット化すべき点を見極める

「特許庁とAIの相性は?」
で、特許情報がデータベース化しやすいのは、特許出願時から公開、登録に至るまで、公報や出願書類の書式が決まっていること、かつ、基本的な構成が変わらないからであり、これは、特許情報に限らず、体系化してデータベースに落としやすい
情報に共通の条件であること、

人的資産である経営者や社員の持っている知識や経験を形式知化して行くときに、技術分野では特許出願やあるいは特許の明細書の書式でまとめておくことは、データベースとして構造資産にする有力な手段であることをお話しましたが、

生産性の向上ときめ細かなサービスを両立させるには、お客様に提供するサービスの流れの中で、どこは多様化すべきか、どこは標準化(統一、共通化)すべきかという切り分けが重要になってきます。

AI・IoTに限らず、ITなどの技術を導入して自社事業の改革を進める際にも(自社の中にシステムを入れる場合、外部のサービスを利用する場合の双方)、この多様化(複数の選択肢の用意)と標準化の使い分けを意識することをお勧めする次第です。

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