委託契約のポイント(入門編)-その(5)契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで

委託契約 社内検討 社内確認

【今日のポイント】

5回シリーズでお届けしております「委託契約のポイント(入門編)」。

最終回となる第5回目の今回は、「契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで」についてお話ししたいと思います。

契約は交渉前の準備と締結後の管理が大切ですね。

交渉中は、特に契約案を修正する都度社内関係部所への確認と相手との認識合わせが重要になります。


今回は、以下の5項目の内、「5.契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで」についてお話ししたいと思います。

1.なぜ、委託契約は必要なのか?

2.契約交渉前の準備

3.委託契約書の構成例と各条項の概要および「ひな形」について

4.委託契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント

5.契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで今回の説明事項

なお、以前のトピックス
『秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(55)~秘密保持契約締結後の管理も合わせてご参照いただければ、大変幸いに存じます。

 

第5回契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで

5-1.契約交渉時のポイント

この契約交渉は、それだけで一冊の本になるような内容なので、ここではごくごくほんのサワリだけお話したいと思います。

(1)契約締結前後を含めた社内の認識共有と調整

第1回の『なぜ、委託契約は必要なのか?』や第2回の『契約交渉前の準備』でもお話したとおり、

そもそもこの委託契約はなぜ行うのか、自社のどんな事業上の目的を達成するために委託するのかという目的から逆算して契約条件を決め自社内の関係者で共有するという作業が、いわゆる「根回し」も含めて、契約交渉中にも重要になります。

相手との交渉中に契約条件を変更していく際にも、大本の目的に立ち返ってそれで良いかを確認し、第2回でお話した「ATNABest Alternative To a Negotiated Agreement (交渉が決裂した時の最善の対処策、案不調時対策案) 」を含めて自分たちの持っている手札を念頭に置きながら交渉を進めることが重要であり、

かつ契約担当者だけでなく、それを関係者で共有していくことが、交渉の中で社内のニーズを合わない方向に進んでいくリスクを減らし、また対応策を関係者で検討・準備することにも繋がりますので、交渉の過程も関係者間で(秘密保持には気を付けつつ)随時共有していくことになります。

また、最終的に相手と合意に至った際に、合意結果のフィードバックと共に、最終案を社内関係者間でも共有して問題がないかを再確認することが大切かと思います。

 

(2)相手との認識の共有

自社内でさえ、認識のズレは生じますので、立場が異なり、置かれている状況がわかりにくい相手とは、条件や、委託でお互いに目指すべき目的などの認識にズレは生じるものとの前提で交渉を進める必要があるかと思います。

また、お互いに自社の希望が通っているものと考える「希望的観測」のバイアスにかかりやすくなりますので、相手の提案が自社のニーズを考慮したものか、自社の提案が相手に必要以上に都合よく受け取られていないかなどを確認しつつ、交渉してくことが求められます。

契約書案をベースに交渉するときには、案文の修正だけはなくコメントなどで修正の理由、背景を記載したり、契約書案以外の資料(図表など)も使いつつ、会議など対面でのコミュニケーションも併用しながら、お互いの認識のすり合わせを行いつつ交渉していくことが必要です。

このときにも、第2回でお話した相手先の状況把握が効果を発揮しますので、普段お付き合いの無い新規の契約先等の場合はもちろんのこと、お付き合いがある相手でも、新しい案件ではどのように反応するか、相手の事業環境に変化はないかなどを事前にできるだけ社内関係者などから情報を収集しておくことをお勧めする次第です。

 

(3)全体から入り、個別の条文に進む

(1),(2)とも関係しますが、全体観を持って交渉を進めるうえで、いきなり個別の条文の条件交渉に入るのではなく、全体の目的についてお互いに合意できるかの検討・確認から入って、個別の条文の検討に移るよう進め方も工夫することが望ましいかと思います。

 

(4)お互いに抜け漏れはないかを確認する

(3)と同様に、成果の帰属や費用など、特定の条件に交渉が集中すると、その他の条文との整合性を含めて、抜け漏れが生じることを私も経験しております。

互いに、今交渉中の項目以外についても検討・交渉すべき事はないか、全体に注意を払いながら交渉を続ける必要があります。

5-2.契約書締結までの手続き

このプロセスは、企業によっても異なるところが多いかと思いますので、以下はあくまで一例ですが、

合意した契約案の社内での確認

⇒相手との最終確認

⇒各締結者の社内手続き(契約締結と費用支払に関する稟議書の上申など)

⇒社内手続き完了(稟議書の決裁)

⇒契約書の製本と押印手続き

⇒契約書を取り交わして、関係する資料と一緒に保管、写しなどを関係者で共有

という流れで最終合意から契約締結まで進むかと思います。

なお、第4回でもお話しましたように、この締結作業の期間中に、有効期間の変更の必要性などが生じる場合や、書式で言えば平成から令和に年号が移るなどの契約書文案の修正が生じる場合もありえますので、締結までの作業にどの程度の期間が必要かも予め相手と見積もっておく必要があるかと思います。

5-3.契約後の管理

秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(55)~秘密保持契約締結後の管理』でもお伝えしたとおり、

契約は「お約束」であり、「守るよう努力する」「守れない約束はしない」という意識で、契約するとともに、契約締結後も管理していくことが重要となります。

委託契約の契約締結後の管理としては、

委託期間中の進捗管理

委託期間終了時の成果の授受と費用の支払い

委託期間終了後の成果や秘密情報の管理

などが主な項目になるかと思います。

(1)委託期間中の進捗管理

これは、契約そのものというよりは、まさに研究開発活動の一環として行うべきものですが、その進捗状況から、契約の見直し、変更などが必要にならないかとのチェックは、契約担当者、または委託した研究開発に関する担当者のいずれが行うかなど、役割分担を決めて事前に対応できるようにしておくことが望ましいですね。

 

(2)委託期間終了時の成果の授受と費用の支払い

これは、契約で取り決めた通りに進んでいるかどうかということで、契約担当者というよりは、研究開発部所や経理担当者が行うことになりますが、そこでトラブルを生じさせないためにも、契約内容の事前確認と共有を社内関係者間で行っておくことが重要になります。

 

(3)委託期間終了後の成果や秘密情報の管理

得られた成果をきちんと受け取り、後の使用の障害を生じないように権利などの帰属に必要な手続き(発明等の出願など)や、使用にあたって必要な相手の権利に関する手続き等も済ませておくことを委託期間終了の前後で行います。

また、委託期間は終了しても、契約で規定した各種の有効期限の管理(特に秘密情報の管理)は続くことが多いので、こうした期限管理をできればデータベースなどのシステムを使って組織的に行うことが、後のトラブルの予防となるかと思います。

なお、委託中にお互いが取り交わした秘密情報の管理については、以下の秘密保持契約に関するトピックスをご参照いただければ、大変幸いに存じます。

秘密情報のリスクを回避する方法!秘密保持契約入門(55)~秘密保持契約締結後の管理

 

【まとめ】

1.契約交渉中の中で契約案を修正するときには、委託の目的に合っているか、さらに遡って事業上の目的に合っているかを社内関係者と確認し、調整しながら進める。

2.契約交渉先とも、お互いの修正案の意図の確認をしながら、契約で実現したい内容を共有する。

3.契約締結後の委託期間中は進捗管理、委託期間終了時は委託成果の確認と費用支払、委託期間終了後は、契約内の各期間の有効期限に沿って、秘密情報や成果を管理する。

以上、かなり駆け足で、5回に渡って技術契約における委託契約のポイントのサワリをお話いたしました。

今後の御社の研究開発や技術導入において、何かのお役に立てば幸いに存じます。

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