委託契約のポイント(入門編)-その(2)契約交渉前の準備

契約交渉前の準備 社内検討

【今日のポイント】

5回シリーズでお届けしております「委託契約のポイント(入門編)」。

第2回目の今回は、「契約交渉に入る前にどんな準備が必要か?」について、自社内での目的の共有や、相手の手札の予想などの観点からお話ししたいと思います。

● 契約の交渉に入る前に行うべきこと

今回は、以下の5項目の内、「2.契約交渉前の準備」についてお話ししたいと思います。

1.なぜ、委託契約は必要なのか?

2.契約交渉前の準備←今回の説明事項

3.委託契約書の構成と各条項の概要および「ひな形」について

4.委託契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント

5.契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで

● 第2回 契約交渉前の準備

2-1.自社のニーズの明確化

以前のトピックス 『研究開発の委託と受託、委託する際の契約のポイント
でもお伝えしましたが、何のために研究開発などを委託するのかという目的を明確にすることが交渉前の準備の第一歩となります。

自社の事業の目的から、その目的達成に必要な技術は何か、そしてその技術を得るためには、自社内で開発すべきか(できるか)、誰か社外の力を借りるかという技術の調達について、事業目的から逆算しつつ、今回の「委託で得たい成果」を具体的に考え、明確にすることが必要です。

この成果を考える際には、「事業における成果の使い方」から検討を始めることになりますが、使い方から逆算した「成果を使う時期」も重要となります。

いつ頃使い始めたいのかによって、「成果を得るべき時期」も変わり、そこから「委託において相手に成果を求める期限」も変わってきます。

「成果の使い方」については、短期間使うものか、中長期に使うものかによっても委託する相手にどのくらいの期間サポートしてもらうかなどの条件が変わってきます。

そこから、「誰に委託すべきか、「(研究開発等の)どの範囲のどの業務を委託するのか」、「費用はいくら掛けられるのか」などを含めて、「誰に、何を、どのようにお願い(委託)するのか」という、委託契約の内容につながって来ることになります。

なお、この「得たい成果を個別具体的に考える」段階は、契約書のひな形や、以前締結した契約書を焼き直して使う場合におろそかになり易いので、注意が必要です。

 

2-2.自社のニーズの内部での共有

上記の「明確にした自社のニーズ」は、契約担当者だけでなく、自社内の関係者間で共有することが重要です。

契約担当者と、委託の成果を使う人が異なる場合などに、この自社のニーズに関する認識のすれ違いが起きることがままあります。

また、委託の成果を使う人や部所が複数の場合にも、それぞれの立場によって、得たい成果やその使い方が微妙に異なることがあります。

その認識がずれたまま相手と交渉を始めることは、交渉中に自社の方針の軸やスタンスがブレたり、交渉の結果まとまった内容について、あとで自社内から異議が出てきたりするといったトラブルが生じる原因にもなりかねません。

交渉前に、まずは自社内でニーズと得たい成果およびその使い方を共有しておくことが重要です。

なお、第1回でも少し触れましたが、書面で契約するという一連の作業自体が、自社内での委託の目的共有のツールとしても使えるかと思います。

2-3.制約条件(費用、期間など)の明確化

 委託する際の費用や委託期間、また委託する際に自社がお金以外に委託先に提供する技術情報や事業情報などの秘密情報はどこまで出せるか、使用を許可する自社の工場などの施設・設備の範囲など、委託にあたっての制約条件を明確化し、費用などは必要に応じて予算に関係する担当者や部所と調整する必要が出てきます。

また、相手に提供する秘密情報などは、委託のニーズを持つ部所だけでなく、その秘密情報に関連する部所との調整が必要な場合もあります。

こういった社内調整も、交渉前に済ませておくことが、円滑に交渉を進めるためにも重要なプロセスとなります。

なお、独占禁止法や下請法、不正競争防止法などの法規制も、大変重要な制約条件(場合によっては自社に有利な条件)となりますが、紙幅の関係で、ここでは割愛させていただきます。

東京都中小企業振興公社の『技術契約マニュアル – 東京都中小企業振興公社
や、
公正取引委員会の
知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針
(公正取引委員会の独禁法に関する相談事例集)技術取引に関するもの
などをご参照いただければ、大変幸いに存じます。

2-4.譲れる部分と譲れない部分を明確にする

2-1~2-3のプロセスで具体化した、事業ニーズから逆算した委託で得たい成果の内容、使い方、使う時期(得たい時期)等および制約条件から、契約の条件について、譲れる部分と、譲れない部分を明確にしていきます。

この、譲れる部分と譲れない部分についても、社内の認識を合わせておく必要がありますね。

2-5.相手のニーズを知る、推測する

上記の社内での契約条件の明確化と平行して、委託先となる企業や研究所等の持つニーズ、事情、制約条件などの情報収集も重要となります。

第1回で、受託する側に立つ場合でも委託者のニーズや懸念事項を知っておくことの効用についてお話しましたが、個別の案件で交渉相手を知ることは大変重要になってきます。

できれば相手の背後にある関係者含めて、相手の状況や今後の方針について知ることができれば、委託の範囲や期限の実効性の裏付けを取ることもできますし、交渉において前述の譲れる部分でどのような提案ができるかの検討にも役立ちます。

2-6.相手の手札を予想し、自分の持つ手札と比較する
  
  ここからは、一部交渉中の内容とも重なりますが、自社のニーズや制約条件、委託先のニーズや制約条件から相手が要求してくる契約条件と、そこで相手が交渉のうえで切ってくる手札(自分の主張の裏付けなど)を予想して、自分が持つ手札と比較しておくと、自分の手札が十分か、更に準備が必要かなどを検討することが可能になります。

特に費用がかかる、あるいは自社にとって必要不可欠な技術に関する委託の場合などは、こういった段階についても交渉前に準備しておくことが望ましいと言えるかと思います。

なお、このプロセスでは、譲るか譲らないかだけではなく、WINーWINとなる条件を委託の目的の上位概念で探すことも、交渉の選択肢を広げるうえで大切なことかと思います。

2-7.契約できない時の対応も想定して準備する

上記のように、周到な準備を進めて委託契約交渉に臨むわけですが、相手のあることですので、残念ながら条件が折り合わないということもあり得ますね。

そのような、契約締結に至らない場合にとり得る選択肢を考えておくこともリスク対策として必要になってきます。

いわゆる交渉術で「BATNA=Best Alternative To a Negotiated Agreement (交渉が決裂した時の最善の対処策、案不調時対策案) 」と呼ばれる対策案です。

例えば、【事前に】委託先の別の候補を見つけて、そちらの方が現在交渉しようとする相手よりも良い点を押さえておくと、交渉決裂時に別の候補と交渉を行うというのが、BATNAに相当するかと思います。

なるべく強いBATNAを持っていると、最悪交渉がまとまらなくても良いということで、余裕を持って交渉に臨み、有利に進めることが期待できます。

以上、実際の交渉に入る前の準備についてお話いたしました。

【まとめ】

1.ビジネスの目的から逆算して今回の委託の目的、得たい成果などを明確にし、社内で共有する。

2.法規制や予算、期間などの制約条件も考慮して譲れる部分と譲れない部分を明確にする。

3.相手のニーズ・懸念点などを推測して、相手の手札を予想し、自社の戦略を立てる。交渉がまとまらないときの最善の対処策(BATNA)も用意しておく。

次回は、契約書の構成と各条項の説明および「ひな形」についてお話したいと思います。

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