委託契約のポイント(入門編)-その(3)委託契約書の構成と各条項の概要

委託契約 構成 条項 関連法規

【今日のポイント】

5回シリーズでお届けしております「委託契約のポイント(入門編)」

第3回目の今回は、「委託契約書の構成例と各条項の概要」についてお話ししたいと思います。

契約書の書式は原則自由ですが、委託契約の構成の一例と各条項で何を決めているか、またひな形の効用と使うときの注意点などについてお話いたします。

 

● 委託契約書の構成と各条項の概要

今回は、以下の5項目の内、「3.委託契約書の構成例と各条項の概要および「ひな形」」についてお話ししたいと思います。

1.なぜ、委託契約は必要なのか?

2.契約交渉前の準備

3.委託契約書の構成例と各条項の概要および「ひな形」について←今回の説明事項

4.委託契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント

5.契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで

● 第3回 委託契約書の構成例と各条項の概要および「ひな形」について

3-1.委託契約書の構成例

契約はどのような形式でも、相手と合意し、法規制等で規定されていない限りは原則自由に結ぶことができます。
以下に説明する構成も、一つの例としてお考えいただければ、大変幸いに存じます。

なお、構成や項目に関する一般的な注意事項については、

東京都中小企業振興公社の『技術契約マニュアル – 東京都中小企業振興公社
なども参考になるかと思います。

委託契約に限らず、契約書では、大まかに

(1)契約書のタイトル(表題)

(2)前文

(3)本文

(4)末文

という構成をとります。

この中の本文中に、委託契約では、

委託(契約)の目的、各種定義、委託の範囲、具体的な委託項目、委託期間、費用、得るべき成果(成果の帰属と実施方法など)、秘密保持義務、一般条

などが入ってきます。

 

3-2.各条項の概要

(1)表題:単に「委託契約書」(受託する側の案ですと「受託契約書」)と記載されていることもありますが、「●●●に関する委託契約書」と、ある程度何に関する委託契約なのか判断できるような表題をつけることもあります。

(2)前文誰と誰が(契約締結者)どんな目的で、どんな委託について契約するのかという契約の内容を記載します。また、この契約に関連する契約(以前に結んだ基本契約など)がある場合は、その契約との関係を記載することもあります。

(3)本文

① 定義:この契約書で使う言葉を定義します。

② 委託の範囲:この契約で委託するのはどこまでの範囲なのか、例えば試作品を作る場合に、その設計までか、試作品の作成までか、試作品も原理試作までか量産試作までか、試作前の調査も委託するのかなど、委託する業務・研究開発の範囲を規定します。

③ 委託項目:上記の委託の範囲内で、どんな作業・業務を委託するのか、具体的に記載します。通常は箇条書きで記載しますが、必要に応じて別紙や別添資料で更に詳細に決めることを記載しておくこともあります。

また、契約書作成の時点ではまだ詳細を詰めきれない場合は、期限を決めて相手と協議して詳細を取り決めることを規定しておくことも必要になってきます。

なお、再委託を認めるかどうか、認める場合はその条件なども記載しておきます。

④ 委託する側(委託者)が提供するもの:委託先(受託者)が業務遂行上必要とする情報、施設、設備などを委託する側が提供する場合、何を提供するかを記載します。

⑤ 委託期間:委託する業務・研究開発の実施期間を規定します。

⑥ 費用:委託者が受託者に支払う費用の金額(税込みまたは税抜き)、支払う時期(請求書や成果物の受領時期との関係等)、支払い方法(現金振込か、一括払いか分割払いかなど)を規定します。

⑦ 得るべき成果(成果の帰属と実施方法等):委託の結果出てくる試作品や報告書、知的財産などの成果はどのようなものか、それぞれの権利は誰に帰属するか、その成果を、委託者と受託者はそれぞれどのように使える(実施できる)かなどを規定します。

⑧ 秘密保持義務:項目④に基づき委託する側が提供する技術情報や施設内の情報、委託の成果や委託契約自体を秘密情報として規定して、保護するよう規定します。

また、成果を公表したい場合には、その方法や相手に事前通知するかどうか、事前したうえで公表について協議するかどうかなどを記載することもあります。

なお、秘密保持の規定では、受託者にのみ秘密保持義務を追わせる場合と、お互いに秘密保持義務を追う場合とがあります。

⑨ 一般条項損害賠償解約(解除)条項、反社会的勢力排除条項、免責事項裁判管轄契約の有効期間協議事項など、契約一般で取り決めるべき事項を記載します。

 

(4)末文末尾(契約書の作成部数、誰が保有するかなど)、締結日お互いの契約締結者の記名・押印などが入ります。

上記はかなりシンプルな構成例で、これ以外にも、委託する内容や契約する企業の内規などによって、規定すべき項目が変わってきますので、個別案件ごとに必要な項目を追加していくことが必要になってきます。

 

3-3.「ひな形」の効用とリスク

委託契約に限らず、契約書(契約案)作成時に、社内外のひな形を使ったり、今まで似た案件や同じ契約先と結んだ契約書を再利用したりすることはよくあるかと思います。

委託契約のひな形はネットなどにも多く出ていますし、個別の業界で標準的なひな形を提供している場合もあります。

(1)ひな形を使うメリット

こういったひな形や既存契約を利用するメリットとしては、

まず、契約書を一から作成するよりも速く進められるということが一番のメリットと感じるところかと思います。

また、内容は別として、決めるべき項目というのはある程度決まってきますので、入れるべき項目(特に基本的な項目)について、ヌケモレがないかというチェックシートとしても利用できます。

さらに、同じ相手と結ぶ場合、一度先方と合意した条件は次回も相手と合意しやすいという点で交渉が容易となります。

 

(2)ひな形を使うリスクと注意点

以上のように、ひな形は便利なものですが、あくまで委託する場合に取り決める項目や、その条件の最大公約数となるように作成されているものですので、個別の案件ごとに、委託する目的に立ち返って、各項目の内容が適切化、他に規定すべき項目はないかをチェックする必要があります。

特に、昨今のAI・IoTなど、新技術が対象の場合や、お互いの事業環境が変化している場合には、注意が必要です。

また、前回はこちらが妥協してしまって不利な結果となっていた契約をベースに契約案を作成したり、その契約条件を前提に交渉を始めると、今回も不利な条件で契約せざるを得なくなることにもなりかねません。

さらに、知的財産権に関する法律(特許法や商標法、著作権法など)、独禁法や不正競争防止法など関連する法規制が改定されていた場合に、以前のひな形や契約がそれに適合していないと、そのままは使えない場合も出てきます。

このようなリスクを考慮して、ひな形から修正して利用したり、ひな形自身も適宜改定することが必要となりますので、ご留意いただければ、大変幸いに存じます。

以上、委託契約書の構成例と各条項の概要および「ひな形」についてお話いたしました。

【まとめ】

1.委託契約書の構成例として、表題、前文、本文、末文という構成が挙げられる。

2.本文には、各種定義、委託の範囲、具体的な委託項目、委託期間、費用、得るべき成果(成果の帰属と実施方法など)、秘密保持義務、一般条項などを記載する。

3.ひな型には、項目の抜け漏れを防ぐチェックリストとしての機能や、効率的に契約案作成を進められるというメリットがあるが、個別の案件ごとに条件や取り決めるべき項目が変わることを想定した見直しが必要。また、法規制などの外部要因の変化に注意する。

次回は、契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイントについてお話したいと思います。

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