委託契約のポイント(入門編)-その(4)契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント

委託契約 契約書 条文 成果の帰属 有効期間

【今日のポイント】

5回シリーズでお届けしております「委託契約のポイント(入門編)」。

第4回目の今回は、「契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント」についてお話ししたいと思います。

各条項で気をつけるべき事だけでなく、条項間の整合性などについても、契約交渉中に契約案をお互いに修正しているうちに矛盾点が出てきていないかなどの注意が必要となります。

 

● 委託契約書の構成と各条項の概要

今回は、以下の5項目の内、「4.委託契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント」についてお話ししたいと思います。

1.なぜ、委託契約は必要なのか?

2.契約交渉前の準備

3.委託契約書の構成例と各条項の概要および「ひな形」について

4.委託契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント←今回の説明事項

5.契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理まで

● 第4回 委託契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイント

4-1.委託契約書の各条項で気をつけるべきポイント

ここでは、技術契約における委託契約の基本的な条項とそれぞれで気をつけるべき一般的な内容の概略をお話いたします。

委託契約書の構成例と各条項の概要および「ひな形」についてと合わせてお読みいただければ、大変幸いに存じます。

なお、ここに記載した注意点自身についても、個別案件ごとに詳細な検討が必要ですし、企業、業界、個別案件によって、他にも多くの注意すべきポイントがありますので、あくまで参考例としてお考えいただければ、大変幸いに存じます。

また、委託契約が(準)委任契約なのか、請負契約なのかによって、収入印紙の要否や担保責任などが変わってきますが、民法(債権法)の改正との関係もあって複雑なため、ここでの説明は、改正民法の対応も含めて割愛させていただきます。

また、委託契約や技術契約一般に関する注意事項については、今までにもご紹介した

東京都中小企業振興公社の『技術契約マニュアル – 東京都中小企業振興公社
のほか、以下の文献なども参考になるかと思います。

技術関連契約において必要とされる基本知識,ノウハウ
パテント2004-36-Vo l .57 No.2 渡辺 秀治氏 日本弁理士会

(1)表題:単に「委託契約書」と記載するよりも、「●●●に関する委託契約書」と、ある程度何に関する委託契約なのか判断できるような表題をつけることが他の契約と混同するリスクを減らせるのでお勧めするところです。

また、同じ相手と同じ件名で連続して契約を結ぶ場合には通番や(2019年度)などをつけて、区別することも検討してよいかと思います。

(2)前文誰と誰が(契約締結者)については、略称(日本の契約書では、通常「甲」、「乙」などを使います)を記載しますが、ここでは締結者の正式名称を記載の上、略称をつけることが必要となります。

また、契約締結者以外の企業などを再委託先等の関係で記載することもありますが、その場合は、その企業の社名の他に本社所在地などを記載するなどして、特定できるようにしておくことも必要になる場合があります。

前文に記載する目的や内容は簡潔に記載しますが、必要に応じて本文中にもう一度目的を詳細に記載することも検討します。

また、この契約に関連する契約(以前に結んだ基本契約や秘密保持契約など)を記載する場合は、その契約の締結日と締結者*、今回の契約との関係を記載します(*>今回の契約当事者以外が既存の契約の締結者に入っている場合もあり得ます)。

(3)本文

① 定義:成果や委託業務、知的財産権に関する定義など、契約中で用いる言葉の定義を行います。

なお、法律の条文を引用する場合、その法律の条文が改定などによって変わっていないかも注意する必要が出てきます。

② 委託の範囲:この範囲と次節の委託項目は、第2回の交渉前の準備でもご説明した、自社のニーズ、委託の目的と整合するかという点で非常に重要となります。

委託の範囲によっては費用科目が異なるなど、経理や税務的な面からのチェックも必要になることがありますので関係する担当者にも確認してもらうことが望ましいかと思います。

③ 委託項目:前回もお話したとおり、別紙などで詳細を決める、あるいはある期限内に相手と協議したり、提案書や業務計画書を提出してもらったりして詳細を決めることもありますが、委託の目的や範囲との整合性と費用・期限などの制約条件からの検討と交渉が必要となります。

また、再委託については、後述の成果の帰属や秘密保持義務などの規定を再委託先にもかけること、その履行を委託先が保証することなどを規定しておく必要があります。

④ 委託する側(委託者)が提供するもの:後述の秘密保持義務の対象とする他に、自社施設を利用させる場合安全管理や秘密保持に関する規定も入れることを検討します。

自社の関係者が相手の施設や設備を利用する場合にも同様の配慮が必要となりますし、その際に相手側にどんな規定があるかも確認が必要となってきます。

 

⑤ 委託期間:委託期間について明記しておくことと、進捗状況によっては協議の上変更できるかどうか変更した場合の費用支払などに変更が生じるかなどの確認と、相手との合意をとって、契約書内に記載することの検討が必要となります。

⑥ 費用成果物の受け渡しと費用支払の時期の関係や、成果物の検収などの条件を明確に記載することと、費用支払い時期と消費税の関係なども確認して必要に応じて記載おく必要があります(この点は、2019年のように契約期間内に消費税率が変更される場合や、複数年に渡る契約の場合は特に注意が必要です)。

⑦ 得るべき成果(成果の帰属と実施方法等):まず、どんな成果を委託者は得るのか(受託者は提供するのか)を具体的に記載することが必要です。

その際に、有体物(試作品や報告書などのモノ)だけでなく、それに付帯する、あるいは委託した業務・研究開発から別途発生する発明、ノウハウのような知的財産などの無形資産について、それぞれ誰に帰属するのかを事前に決めておかないと、前述の費用との関係や、今後の成果の利用において思わぬ障害を生じる可能性が出てきます。

また、委託する前から委託先が持っている知的財産などが、委託した目的を達成する上で必要な場合には、その使用に関する取り決めも入れておく必要があります。

さらに、成果の一部、または全てを委託先も使用してよいかどうかなどについても、秘密保護の観点および、自社事業との競合の観点からの検討が必要になってきます。

⑧ 秘密保持義務:基本的には、秘密保持契約と注意すべきポイントは同様ですが、受託者のみ秘密保持義務を負う場合とお互いに秘密保持義務を負う場合で、秘密保持義務の強さを変える必要があるか、成果の使い方も考慮して検討することになります。

この点は、最初受託者側だけに秘密保持義務を追わせるよう提案した後で、先方との交渉の結果、お互いに義務を追うことになった場合(片務から双務に変化)、特に注意すべきポイントとなります。

⑨ 一般条項有効期間が秘密保持の期間や委託期間が含まれるように開始日も含めて十分にとってあるか、項目ごとに期間を変える必要が無いかなどについて検討します。

免責事項や損害賠償は、その範囲を明確にしておくことが、お互いの認識のズレを防ぐうえで重要になります。

また、天災などの不可抗力で委託の目的が達せられないときの対処方法についても、予め規定しておくことを検討しておくことは大切かと思います。

(4)末文締結日をいつにするかということについて、企業が契約当事者の場合は、社内の決裁が降りた日以降で、お互いの記名押印が完了した日とすることが通常かと思いますが、場合によっては締結日を実際の押印完了日よりも遡る必要が出て来る場合もありますので、個別案件ごとの判断と、社内および相手方との手続き上のスケジュール確認が必要となります。

思わぬアクシデントなどの影響を避けるうえでも、できるだけ契約締結のスケジュールは余裕を持って組んでおくことをお勧めする次第です。

前述のとおり、上記はかなり簡潔なポイント例で、これ以外にも、委託する内容や契約先との関係などによって注意すべき項目は変わってきますので、個別案件ごとに検討することが必要となります。

4-2.各条項間で気をつけるべきポイント

委託契約に限りませんが、各条項ごとの検討に加えて、契約全体を通しての確認も必要となります。

(1)論旨・条件の一貫性

個別の条文について交渉しながら修正している間に、条文の条件が他の条文の条件と整合が取れなくなることがあります。

例えば、委託の内容と期間の変更が得られる成果や費用に及ぼす影響を考慮して該当する条文も変更すべきところを修正し忘れたときや、

別紙に規定する委託内容やスケジュールの詳細と契約本文の間に齟齬が生じる場合などが該当します。

また、契約交渉している間に、秘密情報の交換が始まってしまった場合などの手当てなど、実態に合わせて契約案を修正する場合にも、契約全体を見ながら、各条項間で齟齬が出ないかを注意しながら進める必要が出てきます。

また、個別の条文の条件交渉に気を取られるあまり、全体としての事業上のニーズとの適合性から乖離していくリスクも出てきますので、都度契約書全体の見直しを意識することが大切かと思います。

 

(2)期間や条文番号の齟齬

委託期間、契約期間、締結日などの期間の一部を変更した際に、残りの期間の規定についても変更すべきところを変更せずに、実態と合わなくなるような事態が生じないかという点も注意すべきポイントの一つです。

また、条文の追加や削除による条文番号の変更は、特に契約書の文章中で他の条文を参照している部分の記載に影響を及ぼすので、前述の契約の有効期限における個別の条文ごとの期間(残存期間)の規定の文章等に注意が必要となります。

以上、委託契約書の各条項および条項間で気をつけるべきポイントについてお話いたしました。

【まとめ】

1.委託契約書では、委託の内容(範囲と項目】、各種期間、費用、委託先からの提出物、再委託、秘密情報の取扱などについて、具体的に記載する。

2.委託で発生する成果について、報告書などの有体物だけでなく、知的財産などの権利関係についても誰に帰属するものか、どのように使えるのかを個別具体的に取り決めておく。

3.契約案を修正しているうちに、各条文の期間や条件などに不整合が生じないよう、常に全体を通して一貫しているかを見直す。また、条番号のズレなどにも注意する。

次回の最終回は契約交渉時のポイントと契約締結から契約後の管理までについてお話したいと思います。

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