ライフ・シフトの著者が語る「職場は健康を保つための場所」という視点の活かし方

健康経営

【今日のポイント】

今や「健康経営」は、中小企業においてもES(従業員満足)を超えて、企業の生産性向上に必要な課題となってきていることを感じます。

少子高齢化が先行している日本だからこそ、世界に発信できるサービスや社内の仕組みなど新しい知的資産を生み出す機会と前向きに捉えることが大切ですね。

● なぜ中小企業にこそ「健康経営」が必要なのか
L・グラットン氏「人生100年時代の重要課題」
2019/02/07 東洋経済オンラインに表記の記事が掲載されていました。

東洋経済新報社が開催した「中小企業における『働き方改革』と『健康経営』」の講演の紹介記事です。
あの「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」の著者の1人で、人材論・組織論の世界的権威であるロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏も登壇しています。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

東京大学政策ビジョン研究センター特任教授の古井祐司氏は、欠勤や休職、体調不良による能率低下が労働生産性に与える悪影響は、費用換算すると健康な人の約3倍となることを指摘しています。

『「体調不良で欠勤や休職するアブセンティーイズム、出勤しても体調不良で能率が低下するプレゼンティーイズムによって、労働生産性は失われる」と指摘。

具体的には、健康リスクの高い人と低い人で、労働生産性の損失は費用換算で約3倍に上り、従業員数100人の中小企業であれば1億円規模の損失になるというデータを示した。』

 

また、経済産業省ヘルスケア産業課長の西川和見氏は、健康不良などについて、先進国のGDPにも5~8%の損失を与えているとのデータを示しています。

『「米国商工会議所の2016年の『健康と経済』についてのレポートによると、従業員の早期退職に加えて、病気による欠勤や体調不良などで、先進国のGDPが5~8%失われている」という衝撃的なデータを示した。各国別に見ると、すでにGDPの損失額は日本で7%、米国8.2%、中国5.4%、マレーシア6.3%などとなっている。それが2030年には日本8%、米国8.1%、中国6.4%、マレーシア7.1%になると見込まれている。』

両氏は、健康を軸にした企業内のコミュニケーションの活性化や、設備投資や研究開発と同じぐらいの位置付けで、健康関連に投資をすることが必要と主張しています。

そしてリンダ・グラットン氏は、

『企業における健康と生産性の向上については「人生100年時代のど真ん中にある課題」と述べ、「職場は健康を保つための場所というのは絶対的に重要な視点」と強調した。
また、中小企業が健康経営に取り組む意義については、日本の少子高齢化などで労働市場が逼迫している現状を指摘。「従業員の働き方に配慮して健康経営に積極的に取り組む企業が、人々により選ばれる傾向になる」と明言した。そのためにも給与水準のように、「健康経営の水準を目に見える形で示すことができる標準的な測定方法が望まれる」と語った。』

と、企業は職場を健康を保つための場所という視点を持つこと、また、中小企業が健康経営に取り組む意義として、労働市場が逼迫している現状の中で、健康経営への取り組みが採用にも影響を与えることなどを指摘しています。

氏の発言の中でも、「職場は健康を保つための場所というのは絶対的に重要な視点」は、それ自体が重要な発想の転換と感じました。

 

● 健康の再定義と職場や仕事が果たす役割の見直し

職場で健康を損ねないという視点から、職場でプライベートも含めた健康を保つ
という視点への転換は、健康の定義自体の拡大も含めているものと捉えられます。

能力やスキルと健康を別けず、身体の健康だけでなく、心や知力、対人スキルなども含めた全人的な能力を人生100年時代に必要な心身の健康と位置付けたものですね。

そこに従業員と市場と自社事業や商品のライフサイクルを重ねて、自社の人材関連のポリシーを決め、グランドデザインを描くことの重要性を示唆しているかと思います。

 

● 土壌づくりと健康水準の可視化、比較評価手段の作成/導入

今回の講演会でにおいて、健康経営優良法人(中小規模法人部門)に2年連続で認定された、広告製版・DTP・デザインなどを手掛ける浅野製版所の経営企画部主任の 新佐絵吏氏は、健康経営への取り組みは制度導入前の土壌づくり(事前準備)および施策の継続が重要と、企業側からの知見を提供しています。

『制度導入前の“土壌づくり”から始めるべき」と強調。
そのために、まずすべきこととして、①従業員の面談をして、働き方や健康に関して何が問題なのか課題を抽出する、②取り組みを推進するためのキーパーソンを各部署で見つけて、協力を要請する、③すぐに結果が出なくても、1つの施策について最低5回は続ける――と自社の体験を基に語った。』

同社の健康経営への取り組みについては、以下の中小企業診断協会の事例紹介も参考になるかと思います。

健康経営の取組み事例―株式会社浅野製版所

またリンダグラットン氏の上記のコメントにもある、『健康経営の水準を目に見える形で示すことができる標準的な測定方法』というのも重要な視点かと思います。

自社で作るか、世の中の指標にアンテナを張って取り入れるか、いずれにせよKPIの一つとして考えることが早晩必要になってくるものと思います。

グラットン氏は、

『「世界は長寿化の先頭を進む日本の対応に注目している。

人々がこれからどう健やかに老いていくのか、また企業の従業員はどう健康に働き続けるのか。さまざまなロールモデルや新しいサービスが出てくることを期待したい」』

と少子高齢化が先行している日本から、新しいソリューションが出てくることへの期待を述べていますが、少子高齢化社会での健康経営という課題が、宇宙開発同様に、イノベーションや知的資産を生み出す場、資源と前向きに捉えることの大切さを改めて気付かせていただいたと感じる次第です。

 

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