このページでは、知的資産経営の説明と、企業経営にどんなメリットがあるかについてお話していきます。

知的資産経営とは

経済産業省の、「知的資産経営ポータル」( http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/ )では、知的資産経営を以下のように説明しています。

<引用>

**************************************

「知的資産」とは、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク、ブランド等の目に見えない資産のことで、企業の競争力の源泉となるものです。

これは、特許やノウハウなどの「知的財産」だけではなく、組織や人材、ネットワークなどの企業の強みとなる資産を総称する幅広い考え方であることに注意が必要です。

さらに、このような企業に固有の知的資産を認識し、有効に組み合わせて活用していくことを通じて収益につなげる経営を「知的資産経営」と呼びます。

*************************************

つまり、自社の、特に目に見えない事業上の強みが知的資産であり、
その目に見えない知的資産を明確にして社内外と共有し、経営に活用することで企業の利益力工場に役立てることが知的資産経営といえるかと思います。

知的資産と無形資産、知的財産の関係は?

知的資産に似た言葉として、無形資産や知的財産などがあります。

下図のように、知的財産<知的資産<無形資産という包含関係になっています。

 

また、知的財産である特許権などは、明文化された権利ですが、知的資産は権利として明文化されていないものも含んでいます(それだけに分かりにくい反面、競合他社にも真似されにくいという面があります)

 

 

なお、知的資産は、以下の「人的資産」、「構造資産」、「関係資産」の3つに分類されます。

  • 人的資産:社員に付属しているもので、その人が会社を辞めると、自社から失われるものであり、社員個人の知識や経験、人的能力(交渉力などのスキル)が該当します。
  • 構造資産:社員が会社を辞めても、自社に残るもので、業務フローやそれを支えるシステム(マニュアル、ITシステム、データベースなど)、知的財産権(特許権など)、企業風土や企業理念、組織の学習能力などが該当します。
  • 関係資産:自社と、取引先やお客様、金融機関など社外との間で構築されたもので、取引先との信頼関係、顧客ロイヤリティなどが該当します。

 

知的資産経営のメリットは?

それでは、知的資産経営にはどんなメリットがあるのでしょうか?

下の図は、私が考える知的資産経営で行うことと(淡青色)、そのメリット・活用先(ピンク)を俯瞰したものです。

 

自社の知的資産を明確にすることで、自社の強みと、顧客への提供価値を可視化することが出来ます。

また、自社の課題(3つの資産に偏りがないか、強みがちゃんと活かされているか)も明確になり、これらの強みや課題を社内で共有することが可能になります。

 

 

これによって、

 

1.社内向け

・社内のモチベーションアップ:経営層から社員まで自社の強み・課題の意識を共有して、事業方針や今後の方向性について自信を持って業務に取り組むことが出来き、モチベーションアップに繋がります。

・事業承継:事業後継者の方に、財務諸表などには現れない自社の強みやポリシーを伝えることができ、円滑な事業承継に繋がります。

2.社外向け

・社外へのPR:顧客や取引先に、自社の強みとそれが可能にする提供価値を理解していただけるようになり、他社との差別化につながります。

・新規市場開拓:融資や補助金を受ける際に有利になるとともに、他社との事業連携にも活用することで、新規市場の開拓や、既存事業の強化に繋がります。

 

実際の使い方>知的資産経営報告書について

知的資産経営を実際の経営にどのように導入するか?

知的資産経営は、

自社の知的資産を可視化し、

その知的資産を自社の強み(お客様が自社を選ぶ理由)の源泉にして、

自社の事業の発展や利益創出につなげる「企業価値創出のストーリ」を作り、

それを社内外に情報開示することから始まります。

上記ストーリーの中では自社の持つ課題とその解決も含まれています。

これら一連の

知的資産の可視化→強みと課題→価値創出のストーリー→情報開示

のツールとして、知的資産経営報告書があります。

報告書に記載することは、自社が持つ知的資産をヒト、組織、社外関係者など多方面から洗い出し、それが自社の強みとどのように結びついているかを表していくことになります。

また、過去から現在までの取り組みだけでなく、将来の企業価値創造につなげる道筋を描くことで、今後の経営方針をより具体的に説得性のある形で示すことが出来ます。

この報告書を作る過程自身が、社内での自社の強みや課題に対する認識を共有する貴重な場となるので、この作業は、会社全体の構成員が参加して行うことが重要になります。

形式はA3版1枚の簡易なものから、数十ページにおよぶ報告書まで開示先と用途に応じて選べぶことができますが、内容を充実させるには

経済産業省の「知的資産経営報告書と他の報告書との関係」( http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/ )にあるように、

内容を詳細に説明する報告書等があれば別添するという方法もあるので、知的財産経営報告書一本で完結する必要はなく、既存のリソースも活用して柔軟に対応することが可能です。

実際の作成については、以下のサイトが参考になるかと思います。

マニュアル類のリンク

● 経済産業省 知的資産ポータル (https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/index.html

事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)作成マニュアル(2012年5月改訂)
http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/guideline/list13.html

中小企業のための知的資産経営マニュアル(2007年3月)
http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/guideline/list6.html

地域金融機関と連携した知的資産経営の推進について(2013年12月)
https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/guideline/list20.html

 

●知的財産戦略本部サイト(経営デザインシートの紹介)

『経営をデザインする』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/