ケンタッキーのピックアップサービスにみる、顧客購買行動の制約を外す価値
【今日のポイント】
ケンタッキーがピックアップロッカー利用サービスを開始しましたが、マクドナルドなどと同様に、顧客の購買行動の制約を外し、購買における空間的・時間的・コスト的・心理的なハードルを下げる手段は、今後も重要な事業課題であり続けるものと思います。
自社の制約を外すだけでなく、他社の顧客の購買行動を支援することで、企業の提供価値を届ける手段自体を価値化することは、今後の事業提携においても有効な視点となるものと考える次第です。
● 顧客の「面倒・敷居が高い」という購買行動の制限を外す動き
最近の、顧客の購買行動における、心理面を含めたハードルを下げる動きに関するニュースをいくつかご紹介します。
・日本KFC、店舗設置型「ピックアップロッカー」利用サービスを試験導入~ファストフード業界初、すべて非接触でテイクアウト商品を提供~
2020/10/13に日本ケンタッキー・フライド・チキンは表記のプレスリリースを公表しました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『お客さまがKFCネットオーダーで注文される際に、来店時間を設定。
店舗では来店時間に合わせて商品を準備し、「ピックアップロッカー」内に保管します。
お客さまは来店時に注文番号を「ピックアップロッカー」に入力することで商品を受け取ることができます。
なお、お客さまが配達代行サービスを利用される場合にも、配達代行のスタッフは本サービスを利用して指定場所に商品をお届けします。
待ち時間無しで(テイクアウト)商品を提供することでお客さまの「買いやすさ」向上につながることに加え、従業員の生産性向上への効果も期待できます。』
⇒発注から受け取りまでの場所と時間の制約を低減するという点でも、新型コロナの影響は要注目と感じます。
・LINEヘルスケア、ノバルティスと循環器代謝疾患においてパートナーシップ契約を締結 離れて暮らす家族の健康を見守るサービスを展開
2020/10/13にLINEヘルスケアは表記のプレスリリースを公表しました。
『ノバルティスがソリューション構築に必要な循環器代謝疾患に関する専門知識や医療上のニーズに関する情報をLINEヘルスケアに提供し、LINEヘルスケアはこれらの情報に基づいて具体的なソリューションを開発、運用していく予定です。
まずは、離れて暮らす家族の健康を見守るサービスを提供します。』
⇒LINEという、普段気軽に利用しているコミュニケーションツールから、医療への窓口が広がることで、早期治療だけでなく予防にも貢献することを期待する次第です。
・全国初。マンスリーマンションのペーパーレス契約を9月1日より実験開始 ~新技術等実証制度における借地借家法分野での電子契約システム初の実証計画認定~
2020/8/28ににgooddaysホールディングス株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
『9月1日から3か月間に亘り、借地借家法において書面によって契約しなければならないこととされている定期建物賃貸借契約を、電子的な手段を用いて作成し印刷した書面を用いて行った場合でも、同法により保護される賃借人の利益が損なわれることがないかを、GDH子会社であるグッドルーム株式会社の運営するマンスリーマンションを対象に実証します。
なお、本実証計画には、当社が2020年4月1日付で譲受した不動産業向け電子契約サービスを活用します。』
⇒規制のサンドボックス制度を利用した試み。今後は、VR等も活用した取引のオンライン化が各分野で進むことが予想できるかと思う次第です。
● 顧客の購買行動の入り口を広げ、その後の道のりを短縮する
上記の記事、そして以下の記事にみる様に、顧客の購買行動の入り口を広げ、その後の道のりを短縮する第一歩としての顧客接点の確保は、今後も重要な事業課題である事が窺えます。
・ヴァンテージマネジメント株式会社はミニストップポケットを導入致しました。
2020/11/16のヴァンテージマネジメント株式会社のプレスリリース(PRTIMES_JPより)。
『ミニストップ店舗で扱っている商品をオフィスで手軽に購入できるようになるため、外出してコンビニに行く手間が減り、より時間を有効活用できるようになっております。』
⇒コンビニの物流と品質管理のインフラ活用による新しい顧客接点の確保。
グリコの同様なサービスと同様に、富山の薬売りの「温故知新」が窺えます。
・本ブログのトピックス 『ハタプロのコミュニケーションロボットにみる、ユーザーインターフェースというボトルネック』
⇒ハタプロの対話型AIロボット「ZUKKU]。
親しみやすいルックスで、マーケティングを始めとして多くの分野に展開を始めています。
事業の幅を広げる上で、エンドユーザーとの接点を押さえることの重要性を示す事例かと思います。
・ドコモとダイドードリンコが『自動販売機の基盤を活かした 5G 基地局』によるサービスエリア提供を 2020 年内に開始
2020/11/5の株式会社NTTドコモ関西支社とダイドードリンコ株式会社のプレスリリース。
『株式会社NTTドコモ関??社(以下、ドコモ)とダイドードリンコ株式会社(以下、ダイドー)は、ダイドーの自動販売機の上部に 5G アンテナ(sub6:3.7GHz 帯)を設置し、5G 携帯電話向けのサービスエリア拡充を 2020 年内にサービス開始します。
自動販売機の基盤を活かした「自動販売機の 5G 基地局化」によるサービスエリアの提供は、日本初※1 となります。 (※1 ドコモ・ダイドー調べ )』
⇒これを自販機業界側から見ると、電源が既にあるという点や自販機の分布と相性の良い顧客を持っているなど、自社事業のインフラにニーズを持つ企業・業界を探す事は、B2Bにおける顧客の制約を外すという視点から、新規市場を探す有効な手段である事が窺えます。
また、以下の記事にみるように、配達時だけでなく、顧客の購買時におけるラストワンマイルなどのボトルネックの解消も重要な課題となり得ます。
・【製造業様向け】月額20万円の「AI×弁護士」による定額制顧問弁護士サービスの新プラン登場|未来創造弁護士法人
2020/11/17の未来創造弁護士法人のプレスリリース(PRTIMES_JPより)。
『【サービス内容】契約書(邦文)チェック、労務相談、法律調査、取引関係相談など電話、メール、対面、オンラインいずれもTPOに合わせてご相談いただけます。
(交渉、調停、訴訟等の手続や書面作成は別途料金となります。)【料金】月額20万円(定額制/税別)』
⇒AIとの併用に加えて、定額制とも組み合わせた専門家のサポート提供サービスは、今後も各分野で増えていくものと考える次第です。
● ユーザーへ商品・サービスの持つ価値を届ける手段自体の価値を考え、事業提携を活用する
自社の商品・サービスの価値提供手段として他社と協業出来ないかという課題と、
他社の商品・サービスの価値を提供する手段に自社が貢献できないかという課題の両方から、自社事業の拡大や新しい提供価値を考えることは、今後も有効な成長戦略の手法かと思います。
この手法を実際に使うためには、自社が価値を提供している相手、提供価値、提供方法それぞれの把握と関連、価値提供の流れ、更にその為に利用している知的資産を含めた経営資源を把握する事が必要となります。
上記の事項の把握において、知的資産経営報告書や経営デザインシートは有効なツールになるものと、改めて活用をお勧めする次第です。