中国電力の「エネルギアグループ知的財産報告書(2018年2月)」にみる「知的資産の評価と対外PR」
● 「エネルギアグループ知的財産報告書(2018年2月)」の発行について
2018年2月16日に中国電力は、表記のリリースを発表しました。
http://www.energia.co.jp/press/2018/10973.html
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
2008年度以降毎年発行しており、今回は10回目のレポートとなるとのこと。
特集の「『海外事業』を支える知的財産活動」
も、同じエネルギー分野あるいはエネルギー関連分野で海外展開に関心のある方には興味のあるところかと思いますが、
私は、この報告書の構成自身と巻末の
【活動報告】「EnerGia IP※ Activity 2017 -知財活動の概観-」
『 IP:Intellectual Property(=知的財産)』
の特許の価値評価の部分に特に興味を惹かれました。
● 知的財産活動の対外PR
本報告書は、以下の構成を取っています。
1.知財戦略の基本理念と推進体制(11~15頁)
同グループの知財戦略の基本的な考え方や基本理念,知財戦略推進体制等の紹介
2.電気事業を支える基盤技術と特許との関わり(16~19頁)
良質で低廉な電気の安定供給に欠くことのできない基盤技術の紹介と、基盤技術と特許の関わり(当社グループの特許出願の目的)、特許の価値の定量的評価の考え方等
3.研究・開発への取り組みと独自技術(20~24頁)
重点開発分野とその研究・開発テーマ例等
4.知財マッチングにおける地域との連携(25~26頁)
これまで蓄積してきた知財を地元企業に活用していただく取り組みについて,
社外関係者の声や、参加したマッチング事業など
5.商標への取り組み(27~28頁)
お客さまとの重要な接点のひとつとしてシンボルマーク等を活用するための商標としての権利化活動
6.知財リスクへの対応 (29~30頁)
権利取得機会喪失リスク回避のための取り組み事例や他者権利侵害
リスクに関する教育の取り組み事例
7.CSRの取り組み(31~32頁)
知的財産を活用した地域貢献活動への取り組み
知的資産の一つである知的財産について、自社の基本姿勢から知的財産の取得と自社事業への活用方法、その評価、リスク対応、地域・社会への貢献という切り口(項目)で整理し、対外的に説明するというこの構造は、知的財産に限らず、自社の知的資産を紹介する際の参考になるかと思います。
● 特許の価値評価
中国電力では、特許の価値を『主にコスト低減等の経営効率化という形で効果を発揮』するものと捉えて、以下の3項目の評価額を示しています。
1.特許技術が関係したコスト低減額
『新技術を特許出願していることにより事業活動の自由度を確保できていることの金額効果』
2.特許の価値の定量的評価額
『「特許技術が関係したコスト低減額」に特許の強さ等を加味して算定しています。これは,新技術が特許で担保されていることにより当社のみがメリットを享受できている金額効果』
3.他社技術導入原資獲得額
『クロスライセンスで他社から技術導入した場合に支払う対価相当額(2016 年度は159億円×A) (中略) 自社が対価性のある特許を保有していればライセンス料支払額が相殺されることから,他社技術導入の原資として特許の金銭的側面を評価したもので,相手先企業との事業規模比により算出される係数Aの値により変動』
なお、2の特許の強さ等の評価項目は,特許庁の「特許評価指標(技術移転版・2000年公表)」をベースにしているとのことです。
特許評価指標(技術移転版)の2007年版はこちら
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/246190/www.jpo.go.jp/torikumi/hiroba/tokuiten.htm
● 知的資産の評価とPR
中国電力では、特許の価値を主にコスト低減の面から定量的に評価していますが、
知的資産についてもコスト低減、効率化の視点からの評価は必要かつ比較的定量化し易いところかと思います。
一方で新規事業や新しい顧客(市場)の獲得など、「新しい収益源の確保、売上の向上」いう視点からの評価も重要ですね。
こちらの方は、中々定量的な評価は難しいのですが、知的資産経営報告書で用いられるKPIの設定方法が参考になるかと思います。
「【レポート】Web担当者Forumミーティング 2017 Autumnにみる「事例」の重要性」https://wp.me/p9D2bS-uA
でも紹介した知的資産経営報告書の事例集や、
中小機構 「「知的資産経営報告書」作成企業の実態調査」(2014年)
http://www.smrj.go.jp/doc/research_case/h25chitekishisanchousa1.pdf
また、今回の、特許の価値評価などを参考にしながら、自社の知的資産の評価・棚卸しをし、その結果を自社の強みの裏付けとして社内外のPRに活用してみてはいかがかと考える次第です。
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