エネルギー情勢懇談会の提言に見る「シナリオの検討方法の重要性」

未来予測 不確実 不透明

● 2050年のエネルギーの姿

2018/4/13資源エネルギー庁は、2017年8月から始まった、「エネルギー情勢懇談会」について、2018年4月10日の開催で第9回目を迎え、4月13日、提言が発表されたことを表記の記事で伝えています。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/joseikonteigen.html

(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)

『エネルギー情勢懇談会では、「2050年に向けたエネルギーを取り巻く世界の情勢」、そして、「2050年に向けてどのようなエネルギー政策のあり方が求められるのか」について、海外のエネルギー企業や識者などにもヒアリングし、さまざまな角度から議論をおこなってきました。懇談会の模様は毎回生中継され、フルオープンな検討がおこなわれてきました。』

このエネルギー情勢懇談会では、
世界のエネルギー選択の歴史の流れエネルギー技術間の競争が生む「不透明さ」技術の変化がもたらす地政学上の変化国家間・産業間の競争の本格化などを踏まえて、

「脱炭素化」「可能性」「不確実性」の3つをこれからのエネルギー政策のキーワードとして、以下の提言をまとめています。
この提言は、この夏を目途に政府でまとめていく「エネルギー基本計画」改定に反映されていく予定とのことです。

今回特に興味を引いたのは、「シナリオの描き方」に力を入れているところで、時系列、地域、技術等の考慮すべき要素と、全体像を描くことの双方に配慮していると感じました。

http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/img/rbne-2avnjwx1.png
エネルギー選択の流れ>資源エネルギー庁 

http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/img/rbvr-2avnjyds.png
再エネの主力化がもたらすエネルギー安全保障への影響>資源エネルギー庁

 

 

● 「可能性」はあるが「不確実性」が高い2050年に向けたシナリオ設計の考え方

資源エネルギー庁は本懇談会の提言の解説の中で、

複雑で予測困難な環境下での2050年シナリオは、現行の「エネルギー基本計画」で採用したような、「2030年のエネルギーの姿」という単一ターゲットを掲げるだけでは対処が困難です。野心的なゴールを掲げつつも、状況変化に応じてこれを設定し直す「しなやかさ」が必要となってきます。

また、エネルギー選択は各国固有の環境を反映したものにするという点を重視する必要があります。』

と中長期のシナリオ構築においては、予測困難であることを前提に、単一のターゲットではなく、高い目標を掲げつつも、これを柔軟に設定し直せるようにあらかじめ設計することが必要であり、かつその際に、各国の環境も反映することが必要と述べています。

そして、提言の中では、今後のエネルギーの課題への取り組みは、

『「野心的な複線シナリオ」を追求し「より高度な3E+S」を実現するためには、世界の競合を相手に先手を打っていく戦略性が求められること、また「技術」「人材」というエネルギー安全保障の源をたくわえ、「総力戦」で対応することが重要』
と、あらゆる要素を有機的に組み合わせた総合力を発揮する仕組みが重要であることを述べています。

http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/img/rbkq-2avnjwaz.png
総力戦での対応の考え方は「360度対応」>資源エネルギー庁

中長期の事業環境の予測を行う際にも参考になる視点かと思いました。

 

 

● シナリオの『作り方』と『見直し方』をセットで設計する

「日本の省エネの歴史や仮想通貨から考える時代の流れの見方」
https://wp.me/p9D2bS-sd

で、自社の事業環境が置かれている大きな流れとその流れに影響を与える要因、例えば「集中システムから分散システム」という文脈で流れを捉えることの重要性をお話し、

「エネルギー情勢懇談会にみる複数の課題の同時解決の視点とは?」
https://wp.me/p9D2bS-hC

で、複数の課題解決において

・一つは手持ちのカード(知的資産)を今とは異なる使い方が出来ないか考える、あるいはよそから借りてくるという視点、

・一つは目指す目標・目的自体を変えてみる(抽象化したり、検討する期間を中長期に置くなど)という視点

・更に外に手本を探す(国内外の同業他社、異業種、歴史など)という視点から、
課題を見ていくことを提案しましたが、

そういった環境変化を予測するためのシナリオの作り方および見直し方として、

・自社事業に影響を与えるシナリオにおいて、歴史的な変化、技術の変化が自社の業界や競合に与える影響、どのくらい将来が不透明なのか、未来の分岐点があるのかを考慮して「複数のシナリオ」を作ること、

・そして、そのシナリオに影響を与える要因を洗い出しておいて、適宜その要因に変化があれば、シナリオを柔軟に見直して対応すること

の重要性を改めて感じさせられた事例でした。

また、この考え方は、知的資産経営のSWOT分析や、価値創造ストーリーにも参考になるものと考える次第です。

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