経産省のモデル契約と公取委の調査に考える、オープンイノベーションにおいてリーガルテックが果たす貢献
【今日のポイント】
公正取引委員会と特許庁が連携して、オープンイノベーション促進のための調査結果やモデル契約等を公表しています。
これら行政の動向とともに、今後電子契約などのリーガルテックが企業連携に果たす役割は大きいものと期待しており、その動向にもアンテナを張っておくことをお勧めする次第です。
● (令和2年6月30日)スタートアップの取引慣行に関する実態調査について(中間報告)
2020/6/30に公正取引委員会は表記のリリースを公表しました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『公正取引委員会は,令和元年11月に開始した「スタートアップの取引慣行に関する実態調査」の一環として,スタートアップを対象としたアンケート調査を実施し,その結果等について,別添のとおり,中間報告を取りまとめました。
今後,スタートアップの取引慣行に関する実態の更なる把握を行い,独占禁止法上の評価等を整理した実態調査報告書を取りまとめていきます。』
中間報告概要はこちら
『他社(大企業等)から納得できない行為を受けた経験があるスタートアップのうち,約75%が納得できない行為を受け入れている。』
秘密保持契約や、PoC契約、共同研究契約、ライセンス契約など各種契約において、スタートアップが納得できないと感じた事例も掲載されています。
中間報告本文はこちら
なお、経済産業省・特許庁との取り組みの関係についても、同リリースの以下の資料にまとめられています。
『(印刷用)(参考)スタートアップと大企業の連携における公正取引委員会・経済産業省・特許庁の取組』
オープンイノベーションモデル契約の公表など、大手企業側にも対応が求められている事、またスタートアップ側も上記の事例などを参考に自衛策を取る必要性を感じる次第です。
● 「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」を取りまとめました (METI/経済産業省)
上記の、特許庁の取り組みに記載されているモデル契約については、
同じ2020/6/30に特許庁が表記のリリースを公表しています。
『本モデル契約書は、公正取引委員会による「スタートアップの取引慣行に関する実態調査」の中間報告で明らかになった問題事例に対する具体的な対応策を示しており、契約交渉で論点となるポイントについても明確にしています。
本モデル契約書が、企業とスタートアップとの円滑なコミュニケーションの一助となることで、オープンイノベーションが成功し、創出された事業価値が最大化することを期待します。
本モデル契約書の主な特徴は次の3点です。
1.共同研究開発の連携プロセスの時系列に沿って必要となる、秘密保持契約、PoC(技術検証)契約、共同研究開発契約、ライセンス契約に関するモデル契約書を提示しています。
2.仮想の取引事例を設定して、契約書の取り決め内容を具体化することで、交渉の勘所を学ぶことができます。
3.契約書の文言の意味を逐条解説で補足することで、当該記載を欠いた場合の法的リスクなど、契約に潜むビジネスリスクへの理解を深めることができます。』
大手とスタートアップのwin-winの関係構築にどこまで使えるか、内容だけでなく、今後の企業間契約のニュースなどから本モデル契約の影響も含めて観ていきたいと思います。
● 電子契約へのオープンイノベーション促進の期待
これまでにも何度か、電子契約やリーガルテックの話題を取り上げてきましたが、
以下の記事にも見るように、これらの技術とサービスは、企業の生産性向上や働き方改革だけでなく、企業間の関係性にも影響を与える可能性を持っていると感じています。
『スタートアッフ゜投資か゛活性化!オープンイノベーション促進税制とは』
電子署名サービス企業ドキュサインのブログ記事。
『投資を受けるにあたり、あらかじめ投資契約書を作成しておくことは、オープンイノベーション促進税制などの公的な補助・助成・優遇措置を受ける場合はもちろんのこと、ほかにも様々なメリットがあります。』
取引のオンライン化は、地域など距離の制約を低減する効果がある事は既に明らかですし、
また、自社に必要な提携先を見つけることも、従来より容易になってきているかと思います。
今でも対面によるコミュニケーションは重要ですが、オンラインでも可能なケースは増えていますし、少なくとも対面とオンラインの併用は有効な手段とになって来ています。
(自分の仕事含めて、周りの会議や士業の研究会でも、リアルとWeb会議の併設はかなり利用されています。)
さらに電子契約や契約書レビュー、ネット上で利用可能なモデル契約などのリーガルテックは、スタートアップの知財保護だけでなく、長い目で見れば大手企業側にもどんな条件で付き合えば良いかという指針になるため、オープンイノベーション促進につながる可能性があります。
無用な逡巡や交渉での軋轢などを避けてWIN-WINの関係を築くうえで、電子契約などリーガルテックの果たす役割は大きいものと期待も込めて予想するとともに、
これらリーガルテックの動向は、ユーザー側としても、行政が提供しているモデル契約等とともにアンテナを張っておく必要性が増していると考えています。
これらの情報の収集方法としては、グーグルアラートで、「電子契約」、「電子署名」などのキーワードを入れて情報収集することが効率的かと思いますので、まずはお試しになることをお勧めする次第です。
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