太陽熱発電所の閉鎖にみる、技術とニーズの変化に応じた資金調達の重要性
【今日のポイント】
10億ドルかけた太陽光発電所が始動時に既に陳腐化してしまうという、技術の進展にプロジェクトが追いつかない事例。
5Gなどの通信分野も含めて、技術とニーズの変化のスピードに応じた資金調達もプロジェクトマネジメントにおいて重要性が増すことが窺えます。
少し前になりますが、2020/1/23の1日5分ビジネス英語に表記のトピックスが掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『この工場は、集中型太陽光発電(CSP)および太陽光発電(PV)技術に基づいていが、これらの技術は古く、維持するには高価すぎた。クレセントデューンの電力コストは1 MWhあたり135ドルだったが、ネバダ州の新しいソーラーファームでは1 MWhあたりわずか30ドルだった。
その結果、プロジェクトへ10億ドル以上を投資した後、2019年にクレセントデューン工場が閉鎖された。』
中長期のインフラ事業でも、技術の陳腐化のリスクが高いことを改めて感じた次第です。
●技術革新のスピードに応じた資金調達の方法の選択の重要性
上記の記事からは、今後、「技術革新のスピードに応じた資金調達の方法の選択の重要性が高まる」事が窺えるかと思います。
なお、集熱型の太陽熱発電は、日本でもサンシャイン計画などで開発が進められていましたが、一方で、以下のMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究開発記事にみるように、太陽熱の蓄熱材のなどの蓄熱分野では技術革新が続いています。
『太陽光エネルギーの長期保存が可能に、化学反応で「熱」として貯蔵[三島一孝,スマートジャパン]』
2016/1/20スマートジャパンの記事。
『マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、太陽光エネルギーを蓄積し、後で必要な時に熱エネルギーとして放出できる新しい素材を開発したと発表した。
この透明高分子素材は、窓や衣服などさまざまな用途で活用できるという。』
『MIT、透明エアロゲルを開発??太陽光から200℃以上の熱を取り出すことに成功』
2019/8/8のfabcrossの記事。
『マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、太陽熱利用システムの集熱器として利用可能な透過性と断熱性を兼ね備えたエアロゲルを開発した。
シンプルで低コストの集熱器として、従来の集熱器と置き換えが可能で、家庭用の空調から工業用の食品加工や製造工程まで、幅広い分野に向けて熱を供給することができる。』
太陽熱発発電も、日本では以下の解説記事にも記載されているように、以前から技術開発に取り組んできていますが、今回の様な新材料により、課題の一つである蓄熱の問題が大きく改善される可能性があるかと思います。
『電力の効率化をはかる「太陽熱発電の仕組み」とメリット・デメリット』
2018/5/15株式会社 Qvou(キューボー) 太陽光発電ラボの記事。
『NEDO 再生可能エネルギー技術白書 第 5 章 太陽熱発電・太陽熱利用』
今後、この様な新材料に加えて、AI・IoTを利用したシステムのマネジメント技術や気象予測技術により、太陽光と同様に太陽熱の利用も拡大して行く事を予想した次第です。
●技術の陳腐化のスピードに応じた資金調達戦略の重要性
今回、発電所が稼働した時点で、既にPVと比較して競争力を失っていたと記載されていましたが、おそらく稼働開始のだいぶ前から、事業競争力が無いことは判明していたかと思います。
それでも運転を続けた背景には、政府の補助金を受けていたことも大きな要因と想像できます。
技術革新と、社会・市場のニーズ変化スピードに応じて、例えばソニーがREONPOCKET(個人用携帯型空調装置)の開発(https://first-flight.sony.com/pj/reonpocket)で利用した様に、
大手企業でもクラウドファンディングを利用するなど、技術とニーズの変化に応じた資金調達方法の選択や組み合わせがより重要となっていることが窺えると考える次第です。
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