『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』を読んで-
【今日のポイント】
既にベストセラーとして知られている山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』。
遅ればせながら今回読んでみて、美意識の重要性だけでなく、正解のコモディティ化現象や、アートとサイエンスとクラフトのバランスなど、多くの気付きを得た次第です。
● 「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」
先日、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 山口 周著(光文社新書) 新書 』
を読みました。
2年前に出版されたベストセラーで、私も名前だけは耳にしていましたが、最近になって読んでみたところ、もっと早く読んでおけばよかったと思うとともに、多くの気付きや納得感を得られた次第です。
本書の構成は以下のとおりです。
忙しい読者のために
本書における「経営の美意識」の適用範囲
第1章 論理的・理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求の市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる世界
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意響
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか?
● 本書からの気づき
本書から得た気付きのと感想のいくつかを以下にご紹介いたします。
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
『数学の世界ではすでに19世紀末に、三体以上の相互に影響し合う系を解析的 に厳密に解くことはできない、という多体問題がアンリ・ポアンカレによって証明されていますが、同じような問題が ビジネスの世界でも明らかになってきているわけです。』
⇒同氏は、上記のような複雑な問題において、論理的かつ理性的に答えを出そうとすると、「経営における意思決定の膠着と、その結果としてのビジネスの停滞」が起きると指摘しています。
このような課題に直面することは確かに増えていると感じるとともに、今までの情報収集以外に、感性や直感を磨くための日頃からの準備も組織的に必要となってきているかと感じた次第です。
『多くの人が分析的・論理的な情報処理のスキルを身につけた結果、世界中の市場で発生している「正解のコモディティ化」という問題です。』
⇒他人と同じ正解に至るということが、差別化の消失につながっているという氏の指摘。「コモディティ化」という視点の汎用性と重要性が窺えるかと思います。
『システムが急激に変化する社会においては、明文化さらたルールだけを拠り所にする実定法主義は危険であり、内在化された倫理や美意識を持つことが重要である』
⇒エリートに限らず、コンサルタントなど専門家として他者に影響を及ぼす立場にあるにとっても肝に銘ずべき言葉かと思います。
『意思決定において情動が発するソマティック・マーカーが非常に重要だということにあると、これをどのように扱えるかで意思決定の品質、ひいては「人生の品質」が変わることになります。』
⇒脳科学者アントニオ・ダマシオの体が発する信号であるソマティック・マーカーが意思決定のオプションの絞り込みにおいて重要な役割を果たしているという説を紹介しながら、感情と論理の双方が意思決定に必要なことを説いています。
そして、ソマティック・マーカーをうまく扱うための技術としてマインドフルネスを紹介しています。
人は、扁桃体で快か不快かを一瞬で判断しているということを樺澤氏の著書でも読みましたが、脳科学からも情動や感情が、意思決定に大きな影響を及ぼしていること、したがって感情や感性の扱い方も、メンタルヘルス面だけでなく、ビジネスでの意思決定においても重要であることを示唆しています。
『エリートとして適切な意思決定を行っていくためには、自分なりの「真・善・美」に関する基準、つまり本書で定義するところの「美意識」を高める必要がある』
⇒同氏は、これはリーダーシップの問題であり、主観的な内部のモノサシにしたがって意思決定することが必要と説いています。
このようなモノサシを鍛える方法も同書では解説されていますが、マインドフルネスを含めて、感性や誠実さ、自己認識力などを向上させる意識が個人としても組織としても必要であることを改めて感じる次第です。
● 「美意識」の鍛え方
『昨今 、多くのグロ ーバル企業やア ートスク ールにおいて 、 「見る力 」を鍛えるために 、さかんに実施されているのが V T S ( = V i s u a l T h i n k i n g S t r a t e g y )です 。
(中略)
ビジュアルア ートを用いたワ ークショップによる鑑賞力教育 、ということになります 。』
⇒アートとコミュニケーションを併用したワークショップ、是非使ってみたいと思います。
美術館のガイドイベントなども活用できるかも知れませんね。
『「見る力 」を鍛えるとパタ ーン認識から自由になれる』
⇒これは正直なところ盲点でした。確かにパターン認識はAIの十八番であり、それ以外のフィールドで我々は勝負する必要がありますね。
『ここが非常に重要な点なのですが 、現代社会を生きるエリ ートが 、哲学を
学ぶことの意味合いのほとんどが 、実は過去の哲学者たちの 「 1 .コンテンツ 」ではなく 、むしろ 「 2 .プロセス 」や 「 3 .モ ード 」にあるということです 。』
⇒常識を疑う、とことん自分が納得するまで考えてみるという姿勢。モノゴトをニュートラルに受け止めつつ、自分で納得出来るか意識して行きたいと思いました。
● こんな方にお薦め
本書の題名には「エリート」とありますが、エリートに限らず、個人・組織を問わず、現在の仕事のやり方や考え方に行き詰まりや違和感、不安を感じている方、
美術に興味あったり、ご自分の趣味としていても、リフレッシュは別として仕事と関係があるとは意識していなかった方、
また、以下のような本書の中の言葉に興味を惹かれた方にお薦めの一冊です。
・経営の複雑さとスピードへの対応、
・正解のコモディティ化、
・サイエンス・クラフト・アートのアカウンタビリティー格差
・アカウンタビリティーは、無責任の無限連鎖、リーダーシップの放棄
・サイエンス、クラフト、アートのバランス
・経営トップがアートの担い手
・千利休は最初のCCO、秀吉はCEO
・ユニクロ、無印良品の経営バランス
・優れた意思決定は優れた選択よりも優れた捨象(捨てる事)
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