正倉院展に考える、企業の技能伝承のヒント

【今日のポイント】

東京国立博物館で開催の正倉院展。

1000年以上の文化財の保護と伝承に払われている努力に敬意の念を禁じえないと共に、

企業の技能伝承や、契約管理などへのヒント・示唆も多く得られるものと思います。

 

正倉院展@東京国立博物館

先日、上野の東京国立博物館で開催されている「正倉院展」に行ってきました。

元々、美術展に出かけるのは趣味なのですが、今回は、

・日本の飛鳥時代から奈良時代の国際文化交流の様子を知る

・文化財の保護と研究の実態を知り、企業の技能伝承や事業承継のヒントを得る
ということを目的として見てきました。

正倉院国宝に指定されたのは1997年意外と最近です。
ユネスコの世界文化遺産に登録されたのは1998年翌年でした。

かなり混雑していましたが、大変充実した内容で、多くの気づきを得ることが出来ました。

そのいくつかをご紹介したいと思います。

 

文化財とその情報の保護

・正倉院の立地: 延焼のリスクを避け、湿気を避ける立地で長期保護を長期保護を図った設計とされています。木造建築にもかかわらず、ここまで文化財を保護できたことは、立地も含めた当初の設計の重要性を示唆しているかと感じます。

・国家珍宝帳と法隆寺献物帳 : 正倉院目録はすでに管理リストとして非常に完成された形となっています。さらに、後で修正されないように全面に玉璽天皇御璽の印鑑を押しているなど、改ざん防止策まで図られていることに驚きました。

・リストと合わせて実物を保管:上記の管理リストと個々の文化財を紐付けることで、その結由来などの情報も含めて保管され、現代まで伝わっています。

これは、契約とその契約に基づき交換される秘密情報の管理や、共同開発における成果の管理などにも参考になるかと思います。

・蘭奢侍 : 正倉院に蔵められている香木の中でも有名な一品。織田信長や足利義政が切り取った跡や明治天皇が明治10年にお使いになったあとなども付箋付きで展示されていましたが、文化や文化財と権力者の関係を表すものの1つと感じると同時に、個々にも実物と由来の双方を紐付けて管理している様子が窺えます。

・塵芥の保存と整理 : チリ1つも捨てず、そこから当時の製作方法などを探究する作業に、宝物と文化を伝える志とそれを継続するための皇室などの制度、仕組みの必要性を改めて感じます。

 

文化財の復元・再現にみる情報管理の重要性

・五絃琵琶の演奏:実物と機能の復元よりも音楽、使い方の復元は困難な様です。

使い方こそ重要かつ記録・伝承が難しいノウハウであり、ここにもデジタル化のニーズを感じます。

・雅楽面の復元: 当時の人々の海外に持つイメージを知る手掛かりともなるもの。実物の解析と当時に関する情報から、実際に使われていた際の姿を復元することが、当時の人々の持つイメージの解明に貢献しているところに、

ユーザーの持つイメージ・ニーズなどを想定する時のヒントがあると感じた次第です。

・展示室の最後のバーチャルリアリティーによる明治時代初期の正倉院内部の再現映像に、今後のデジタルアーカイブと実物そのものあるいは復元物を連携させた、文化財と文化そのものの保管や管理・伝承の将来へのヒントを見た気がしました。

・併設されていた本館の「文化財よ、永遠に」では、仏像を修復したものを、その修復の仕方と一緒に展示しています。

こちらの方では、最後に分解修理の報告書を詳細に画像等と一緒に記録して保管するという分解修理の作業フローの説明に、

契約におけるひな形等の更新の目的や内容などの履歴もきちんと残さなければいけないと言うことを改めて感じました。

 

技能伝承と更新

上記のように、1000年以上に渡り、文化財とその情報を保護できたのは、

制度面では、「皇室」の存在はやはり大きなものがあると感じます。
一貫した制度があること、その制度が柔軟に姿を変えつつも存続することの重要性を、今回の展示会は示唆しているかと思います。

ツール・利用技術面:管理・保管のためにも、当時の姿や使い方を再現するためにも、実物と一緒にその実物に関する由来、経緯、使い方なども一緒に管理・保管することの重要性を示しています。

また、そのために利用されている技術も時代を経ながら改善されていくとともに、各時点での技術の内容を記録しておくことが、管理技術の改良や更新時に必要となることも示されています。

この点は、現在のビジネスでは、データベースシステムなどについて、更新も視野に入れたシステム管理の重要性を示唆しているかと思います。

管理・意識面:制度面とも共通しますが、「皇室、日本の伝統文化を守る」という意識、そのために遠い将来まで見越してノウハウも含めて記録し保管するという管理システムを目の当たりにして、私達の仕事においても同じような意識付けと将来まで視野に入れた、マネジメントシステムの構想・構築が必要なことを改めて感じました。

 

東西の文化交流の視点

正倉院は海と陸の2つのシルクロードの終着点とも呼ばれているそうで、当時の国際的な文化交流という点でも参考になるものがありました。

・墨書仏像: 冠にササン朝ペルシャの影響があるそうです。全体に非常に鮮やかな角家でまた正方形なのはその頃の前で収められた布を使っているだろうと言うことです。

・上敷き: ライオンと猛獣使いの会はササン朝ペルシャの特徴ナツメヤシもそう。一方で左右対象の描写は中国の影響複数の国の文化の影響が混じりあったコスモポリタンな造形を表しています。

・花氈: 羊毛のフエルト生地。中央にはポロのような遊戯をしている子供の絵が羊毛で描かれています。

・熱帯地域の産物である香木は仏教とともに日本に伝わったとの説明に。文化の移動はいろいろなものが複数並行して或いは複合して伝わることが窺われます。

・浄水用水瓶: 原産地とは使い方が異なり、宗教用具に変化してきたという説明に、「所変われば品変わる」ならぬ、「所変われば使い方変わる」という点で、マーケティングのヒントにもなるかと感じました。

11月24日まで開催されている本展。お時間があれば、ご覧になられてはいかがでしょうか?

 

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