中小企業白書にみる、知的資産経営の適用可能性(後半)

【今日のポイント】

前半、後半の2回にわたってお送りしている、中小企業白書からみる知的資産経営の適用可能性
後半の今回は、イノベーションやデジタル化の共通基盤構築から、2023年3月にVer2.0が公表された「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」も交えて、知的資産経営の中小企業への適用可能性についてお話したいと思います。

 

【目次】
.2023年版中小企業白書・小規模企業白書公表
2.私が関心を惹かれたポイント(後半)
 2-3.価格への転嫁とイノベーションの重要性
 2-4.中小企業・小規模事業者の共通基盤
3.本白書から考える知的資産経営の手法の活用の重要性

 

1.2023年版中小企業白書・小規模企業白書公表

前半の部( https://wp.me/p9D2bS-2k7 )でもお伝えしましたように、2023/4/28に、経済産業省、中小企業庁は、2023年版中小企業白書・小規模企業白書を公表しました。

https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230428003/20230428003.html
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

新型コロナや人手不足、デジタル化やGXへの取り組み要請などの事業環境の変化に対して、自社・事業の継続に加えて、地域や環境などの社会課題への貢献デジタル化やGXなどを進めるための共通基盤の構築支援などが本白書が重視している課題と考える次第です。

 

2023年版中小企業白書・小規模企業白書の概要はこちら
https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230428003/20230428003-1.pdf

2023年版中小企業白書の全文はこちら
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html

2023年版小規模企業白書の全文はこちら
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/PDF/shokibo.html

まずは、概要に目を通して、全体像を掴んでから、関心のある事項を読んでみるのではいかがかと思います。

 

2.私が関心を惹かれたポイント(後半)

前半に引き続き、私が特に知的資産経営との関連で関心を惹かれたポイントについてお話したいと思います。
(以下では、主に2023年度版中小企業白書を、必要に応じて「本白書」と略称します。)

2-3.価格への転嫁とイノベーションの重要性
(本白書「第1部 第4章 中小企業におけるイノベーション」「第2部 第1章 成長に向けた価値創出の実現」 など)

原料高や、人材への投資(賃金向上)などの原資を得るための、販売価格への転嫁は、依然として厳しい中イノベーションによる競合との差別化などが、価格転嫁や、生産性向上のためにも重要性を増していると本白書は語っています。

そのイノベーションにおいては、知的財産や人材も含めた知的資産の重要性もまた高まっていると言えるかと思います。

本白書の中でも上記の知的財産を始めとする無形資産の活用は重要であり、実際に活用している企業の成長率向上に寄与している事が記載されています。

この、知的財産や無形資産(知的資産を含む)による事業改革については、

『知財・無形資産ガバナンスガイドラインと知的資産経営の関係は?』 https://wp.me/p9D2bS-25F でも取り上げた『知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.1.0』が、2022/1/28に内閣府(首相官邸)から公表されていますが、
その後2023/3/27に、Ver2.0が公表されています。

『知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.2.0の策定』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/governance_guideline_v2.html
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

『本ガイドラインVer.1.0の公表以降、企業は知財・無形資産の投資・活用戦略やその開示、ガバナンスについての取組に前向きかつ真摯に取組み始めていますが、取組を進める中で試行錯誤する点、投資家・金融機関からの評価につながらない点など様々な意見が出ている状況となっています。

また、知財・無形資産の投資・活用戦略への理解を投資家・金融機関に促すうえでは課題も多く、日本企業は米国に次いで特許出願件数では世界3位であるにもかかわらず、従来から問題視されているPBR1倍割れの企業が多い状況が続いています。
さらに、「価値協創ガイダンス2.0」(経済産業省「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス2.0-サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)実現のための価値創造ストーリーの協創-」、2022年8月策定)などサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を加速化するためのガイダンス整備の実施、EUやIFRS財団での非財務情報開示についてのルール整備等の国際的な環境変化等も生じています。

 本ガイドラインVer.2.0は、Ver.1.0で提示した5つの原則、7つのアクションは堅持しつつも、これらの状況を踏まえ、主に企業と投資家・金融機関の思考構造のギャップを埋め、投資家に期待される役割を整理することを通じ、企業による知財・無形資産にかかる取組・開示が、企業価値として顕在化する環境整備を目指し策定されたもので、企業と投資家との間の対話や情報開示の質を高めるためのコミュニケーション・フレームワークを提示しています。』

本ガイドラインVer2.0の概要版はこちら
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/pdf/v2_shiryo2.pdf

本ガイドラインVer2.0の全文はこちら
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/pdf/v2_shiryo1.pdf

上記の記載のように、Ver2.0では、企業と投資家・金融機関の思考構造のギャップ(概要版のP9、全文のP22以降)をVer1.0以降に見えてきた課題として取り上げ、

この課題を解消して情報共有と連携を強化するために、共通の枠組みとなる「コミュニケーション・フレームワーク」を提示しています(概要版のP10、全文のP25以降)

本ガイドラインに記載されている「コミュニケーション・フレームワーク」は、企業の現状から目指すべき将来像への移行において、
知財・無形資産投資戦略を改革すべきかという「ストーリー」に着目し、そのストーリーの実現方法の明確化として、『企画する因果パス』(知財・無形資産投資が将来目指すビジネスモデル・事業ポートフォリオにつながるパスと、そのビジネスモデル・事業ポートフォリオが利益の創造・企業価値向上につながるパス)と、
『投資・活用をコーポレートレベルの経営指標と紐付けて可視化』するためのツール(ROIC逆ツリー等)を提示しています。

また、目指すべき将来像からのバックキャストにより、自社の現在の課題を設定して改革していくことも記載されており、これは、本ブログトピックスでも取り上げてきた経営デザインシートのコンセプトでもあるため、今後、知的資産経営のツールの活用にもつながるものと感じます。

 

2-4.中小企業・小規模事業者の共通基盤(デジタル化の取り組み支援と人材確保の重要性)
(本白書「第2部  変革の好機を捉えて成長を遂げる中小企業 第3章 中小企業・小規模事業者の共通基盤」など)

デジタル化が中小企業においても生産性向上に効果があることを事例などで紹介する一方で、
デジタル化の導入から運用まで、デジタル化を進め、かつ効果をあげるうえで、人材の確保や運用面の課題への対応などについて、支援機関同士の連携や伴走支援の強化も課題として挙げられています。

これらは、知的資産経営の関係資産(取引先や支援先との関係構築)を通じた、人材(人的資産)の強化による企業のデジタル化(構造資産)の改革としても捉えることができ、従って、経営デザインシートなどの知的資産経営のツールの活用も期待できる分野と考える次第です。

 

3.本白書から考える知的資産経営の手法の活用の重要性

前半、後半を通じて見てきました様に、 2023年版の中小企業白書では、
新型コロナはもちろんのこと、ウクライナ危機を契機とした天然資源をはじめとする物資の価格高騰やサプライチェーンの安定性カーボンニュートラル(GX)推進などの国際的な課題から、人手不足対応、地域振興などの国内の課題まで、今年度も多くの社会・業界・企業の課題とその対応策が取り上げられています。

それらを知的資産経営の視点から見ると、問題と対策の双方において、人材確保やデジタル化、サプライチェーンマネジメント、外部支援の活用など、人的資産、構造資産、関係資産の各知的資産を総合的に取り扱う事と、リスクマネジメントの面と今後の成長の面の双方で、自社の将来像からバックキャストで現在の課題を設定する必要性が高まっていると改めて感じます。

 上記の様な対応において、経営デザインシートの様な、現在と将来の知的資産やビジネスモデルを俯瞰できるツールは、自社を取り巻く環境の全体像と、自社の課題を連動させて、事業戦略を立てる上でも、有効性を増すものと、利用の検討をお勧めする次第です。

なお、経営デザインシートについては、以下のサイトもご覧いただければ、大変幸いに存じます。
『経営をデザインする(知財のビジネス価値評価)ー首相官邸サイトー知的財産戦略本部』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/

 

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