経営デザインシート作成テキストから考える、「キーワードの選び方と組み合わせ方」
【今日のポイント】
経営デザインシートは、VUCAの時代において、自社の将来像からバックキャストで現在の課題を検討する上で便利なツールですが、
作成・利用する上で、「キーワードの選択とその組み合わせ」と言う視点は有益な手段になるものと、検討をお勧めする次第です。
【目次】
1.知的財産戦略本部の「経営デザインシート作成テキスト」
2.経営デザインシートとは(必要性・目的)
3.経営デザインシートでの各検討項目におけるキーワードとその使い方(組み合わせ方)
本ブログでも、知的資産経営のツールの一つである経営デザインシートは、トピックスの中で何度も採り上げていますが、
そのトピックス内で紹介している、知的財産戦略本部の以下のサイトには、雛形や解説書、作成事例などが掲載されています。
『経営をデザインする(知財のビジネス価値評価)ー首相官邸サイトー知的財産戦略本部』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/
上記のサイトの構成は以下のとおりです。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)
『目次
経営デザインシートの雛型、テキスト、説明資料、動画
経営デザインシートの活用例
(1)企業
(2)企業支援者
(3)アワード
(4)アナリスト
(5)団体
(6)事例分析ツールとしての活用
(7)経営デザインシートの活用事例発表会
経営デザインシートのメディアのおける紹介例
経営デザインシートのロゴマーク
知財のビジネス価値評価検討タスクフォース
リンク
お問合せ先』
かなり多くの資料が掲載されていますが、この中で、まずは、以下の4つの資料を読んで見ると、経営デザインシートの概要や全体像をつかみやすいのではないかと思います。
● 経営デザインシートの概要説明
『「経営デザインシート」について(新デザイン版)』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou01.pdf
『「経営デザインシート」について(初期デザイン版)』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/pdf/siryou01_shoki_design.pdf
● 経営デザインシート作成テキスト
(2019年3月版。上記の「初期デザイン」の経営デザインシートフォーマットに基づき説明しています)
『入門編』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/designsheet_text_01.pdf
『応用編』
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/designsheet_text_02.pdf
本トピックスでは、上記の経営デザインシート作成テキストについて、主に入門編を例に、
その中の検討項目におけるキーワードの使い方についてお話したいと思います。
(本トピックス内では、特に断りのない場合、「シート」は「経営デザインシート」、「テキスト」は上記の『経営デザインシート作成テキスト』入門編、「概要説明」は『「経営デザインシート」について(初期デザイン版)』を指して使用しています)
まずは、「経営デザインシート」の定義をもう一度見ておくことは、「シート」の使い方や「テキスト」にも記載のように、「なぜ経営シートは必要なのか」(何に役立つのか)を、特に【自社にとっての課題(自分ごと)】として社内外と共有するためにも意味があるかと思います。
「概要説明」では、以下のように定義しています(「テキスト」(入門編)P3)。
『経営デザインシートとは
ひとことでいうと
将来を構想するための思考補助ツール (フレームワーク)100文字でいうと
環境変化に耐え抜き持続的成長をするために、自社や事業の
(A) 存在意義を意識した上で、
(B) 「これまで」を把握し、
(C) 長期的な視点で「これから」の在りたい姿を構想する。
(D) それに向けて今から何をすべきか戦略を策定する。 』
と定義し、さらに、上記の『将来を構想する』目的について、
『目的 環境変化に耐え抜くためには長期ビジョンが重要
⇒ 環境変化を見据え、自社や事業の「これまで」の理解に基づき
「これから」を構想 』
と記載しています。
上記のように、経営デザインシートは企業経営における思考のためのツール(フレームワーク)であり、従って経営や事業、マーケティング関連で使われる3C、4P(4C)、5F、PEST分析などの、他のフレームワークとも関連するとともに、連携して使うことが可能(あるいは必要)となってきます。
また、「テキスト」の、P5『Introduction 「なぜ、経営デザインシートが必要なのか?」の構成 』にも経営デザインシートはどのような目的で利用するツールかが記載されていますので、上記の定義と合わせてご覧になっておくと、よりこの「シート」を自社ではどのような目的で作成して使用するかを考え易くなるかと思います。
その中では、経営デザインシートは、『価値を生み出す仕組み(価値創造メカニズム)を描くツール』として記載されていますので、この『価値を生み出す仕組み(価値創造メカニズム)』という用語も重要なキーワードであることが分かります。
3.経営デザインシートでの各検討項目におけるキーワードとその使い方(組み合わせ)
「テキスト」(入門編)P9では、この「価値を生み出す仕組み」の描き方について、
『・どんな方法でも構わないので、「価値を生み出す仕組み」を描いてみましょう』
と、一人で考えるイラストと、複数で議論するイラストを掲載していますが、これだけでは、
「どうやって考えればいいんだ?」との疑問が湧いてきますね。
「テキスト」(入門編)P12からの『Work 「価値を生み出す仕組み」を描いてみる』では、その方法が記載されていますので、
その部分を見てみますと、
P13に、「これまで」と「これから」の双方の「価値を生み出す仕組み」を書き出す(考える)ように記載しています。
その中の
「これまでの価値を生み出す仕組み」で書き出すものとして、『資源、ビジネスモデル、価値』
「これからの価値を生み出す仕組み」では上記に、『社会の変化、顧客の変化』を加えて、それら外部状況の変化を踏まえて、自社の『価値、ビジネスモデル、資源』を挙げています。
なお、同ページにもあるように、これまでと、これからでは、自社の資源、ビジネスモデル、価値の検討の順番が逆になっていますね。
これが、経営デザインシートの特徴の一つである、「自社の将来像からバックキャストでこれから取り組むべき課題を考える」を表しています。
では、「これまで」と「これから」の価値を生み出す仕組みを考える(あるいは自覚して明確化するフロー)を、
本トピックスの「キーワード使い方」の視点から見てみると、
● まず、使うべきキーワードは、既に「テキスト」や「概要説明」の中に散りばめられていることが分かります。
具体的には、書き出すポイント(考え・検討する項目)である、
資源、ビジネスモデル、価値(市場や社会への提供価値)、外部環境変化(社会や顧客の変化)となりますが、
さらに自社にとって関連する項目にブレークダウンしていくことで、より具体的な検討が可能になります。
(例えば、P15の『価値のキーワードの例』などを見ながら、自社の場合に当てはめて行くと、どのようなキーワードを「シート作成」時に使うと良いかのイメージをつかめます。)
また、これらのキーワードは、先に述べた他のフレームワークの項目を利用することも効果的です。
(例えば、外部環境の項目では、PEST分析の(政治、経済、社会、技術)を利用する事は多いかと思います)
なお、上記のように、テキストなどに記載のキーワード(項目)や他のフレームワークの項目を参考にする際には、
ぜひ、今までの自社の経営戦略や事業戦略の策定や、商品開発の中で使ってきた、検討項目やその結果と突き合わせ、あるいは組み合わせてみることで、
より自社にとって適切なキーワードを見つけ出し易くなります。
ただ、自社の既存のキーワードだけですと、現在の事業の延長線上で将来像などを描く可能性も高くなりますので、その点は注意が必要かと思います。
その際には、本トピックス文末の、本ブログの参考トピックスにも記載していますように、【自社にとって】極端な環境や状況を想定してみる事が効果的であり、その際の思考法として、参考トピックス内で紹介している、『SF思考(SFプロトタイピング)』や『進化思考』などのフレームワークを利用してみてはいかがかと考える次第です。
また、異分野・異なる業界の事例を見てみることも、思考の枠を広げる上では有効ですので、普段から、少し自社に関係のある事象の上位概念(現在ならば、「DX」や「SDGs」、「パンデミック対応」、「ペーパーレス化」など)をキーワードにして、アンテナを張って情報収集しておくことが有効かと思います。
● 次に選びだしたキーワードの使い方ですが、
本ブログのトピックスでも、例えば参考トピックスに挙げたように、
「環境×顧客のTPO」や「スマートデバイス×五感」、「検索機能×顧客接点」、「温故知新×空想」などのキーワードの組わせによる外部環境の変化と自社への影響を検討するためのキーワードの組わせを、事例とともに紹介していますが、
・基本的には、同じ種類のキーワードをグルーピングした上で、異なるグループのキーワードと組み合わせる方法と、
・同じグループ内のキーワード同士を組み合わせる方法の
双方を利用することで、幅広い視野で、抜けもれなく検討出来ることが期待できます。
また、このようなキーワードの組み合わせで得られた検討項目や検討結果をもとにビジネスモデルなどの「価値を生み出す仕組み」を検討する際には、
現在のSWOTに加えて、将来のSWOT(将来持つべき強み、その際に持っているかもしれない弱み、将来の外部環境)を作成してみることも、フレームワークの利用例の一つとして検討をお勧めする次第です。
● 本ブログの参考ピックス
『経営デザインシートにおける将来の外部環境予測の情報源と使い方』
『空飛ぶクルマの開発にみる、自社事業の将来像の策定に「極端な環境」を利用するヒント』
『味を伝えるTVや体温測定できるスマートウォッチ技術にみる「五感」利用の広がり』
『欧州のベジタリアンバーガーの改名規制にみる自社提供価値の定義付のヒント>上位概念で価値を再定義する』
『飛行船の復活にみる、「環境×顧客のTPO」による新規ビジネスのヒント探し』
『電子契約のインターフェースにみる、検索機能による顧客接点の確保と知的資産経営ツールの活用可能性』
『腸呼吸による呼吸不全治療の研究等にみる、「温故知新×空想をニーズとシーズ双方に適用するイノベーション」の進展』
『新規サービスと生産性向上を考えるヒント>「AI・IoT」×「音声・聴覚技術」』
『AI・IoT活用のヒントとなる切口〉AI・IoT×混雑解消』
『経営デザインシートに考える、今と未来のSWOTの使い分け』
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