DX支援ビジネスにおける自社と支援先の強み(知的資産)の明確化の重要性
【今日のポイント】
企業のデジタル化の関心が高まる中、その支援ビジネスも様々な方式で進められています。
DX推進を支援する側は自社の強みと顧客ニーズから適切な支援形態を選ぶとともに、DXを推進する側の強みと将来像を明確にする事自体を含めて支援するために、
支援を受ける側は適切なDXの目的設定と必要な支援の特定のために、知的資産経営のツールの活用も検討をお勧めする次第です。
【目次】
1.DX推進における事業連携の事例
2.DXを支援するビジネスにおける自社の強み(知的資産)の明確化
3.DX推進の支援する側、受ける側の対応
新型コロナ下でのリモートワークやオンライン化なども背中を押す形で、デジタル化(DX)を推進する動きが活発になってきていますね。
企業のDXを支援するビジネスに関する最近のニュースをいくつか見てみたいと思います。
2021/10/19に、クラウド型CRMサービス「Synergy!」を提供するシナジーマーケティング株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)
『中小企業のDX推進を支援する「Chatwork DX相談窓口」の提案サービスとして、新たに「Synergy!」の提供を開始したことをお知らせします。』
⇒Chatworkは、同社以外にもマネーフォワード、マツリカ、発注ナビ、PR TIMESなど多くのビジネスツールとの提携を進めていますが、コミュニケーションを核としたビジネスプラットフォームの構築を進めている様子が窺えると感じます。
● 商工中金、中小企業のDX推進を支援するため(株)ハンモックと業務提携
2021/10/19に法人向けソフトウェアパッケージ、クラウドサービスを提供する株式会社ハンモックは表記のプレスリリースを公表しました。
『この度、急速に推進が進む「DX」を中小企業においても積極的に推進したいという商工中金と、セールスDXの実現による企業支援を行うハンモックの意向が一致し業務提携を締結する運びとなりました。
商工中金ではすでに全行で営業支援SaaS「ホットプロファイル」を利活用しており、そのナレッジをビジネスマッチングに発揮していきます。』
⇒従来の中小企業支援の仕組みにDXを組み込む動きは、今後も広がるため、新規ビジネスの機会であるとともに、既存の制度や社内ルールなどの見直しの機会ともなると考える次第です。
● 工事現場のDXを支援する「フィールドコラボ」新バージョンの販売を開始~ 音声対話AIとIoTセンサで現場の安全活動を変革 ~
2021/10/19にエヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
『今回、現場管理者など利用者自身が自由に対話シナリオ作成できる音声チェックリストとともに、ウエアラブルマイク・スピーカーと連携した音声での報告・帳票作成をハンズフリーで実現することにより安全を確保しました。』
⇒2019年に以下のブログトピックスでも音声技術とAI・IoTの組み合わせの持つポテンシャルと今後の動向をウォッチすることの重要性についてお話しましたが、音声通話の分野で、AIにより新たな使用方法の創出が進んでいることが今回の事例からも窺えます。
『新規サービスと生産性向上を考えるヒント>「AI・IoT」×「音声・聴覚技術」』
また、「ウエアラブルIoTセンサによる作業者健康管理」「3Dモデルによる危険作業把握」「業務掲示板」などの機能も新たに提供開始するとのこと。
複合的な安全対策の必要性とその一括提供・管理の有効性も窺われると感じた次第です。
● オンライン商談自動化ツール「アンプトーク」Dialpad(IP電話)と連携
2021/10/19にamptalk(アンプトーク)株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
『連携することによって下記の機能を使えるようになります。
・アンプトーク上で全ての通話録音が確認出来るようになる
・通話した商談情報を話者毎に書き起こし自動でSalesforceに入力
・各営業担当(誰)が何をどれくらい話したのかを可視化し比較可能
・通話のお客様とのトーク比率やフィラーなどの数を可視化』
⇒音声の文字起こしは、アップルのiOS 15でも搭載されたようですが、OCRと並んで音声や画像情報のテキスト化は、DXの中でもAIなどによる分析対象を拡大する上で重要な位置を占めていくと感じた次第です。
● HENNGE Oneの連携ソリューションに契約書の管理・共有をスマートにする「Hubble」を追加
2021/10/20にHENNGE株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
『「HENNGE One」と「Hubble」が連携することにより、企業は煩わしい複数ID、パスワードの管理から解放され、的確なアクセス制限が可能になります。
HENNGEでは今後もSaaS認証基盤(IDaaS)の「HENNGE One」と連携するSaaSを増やし、企業の利便性と安全性の両立したSaaS導入を支援してまいります。』
⇒同社は、2021/10/21には、経理や人事労務関連のクラウドサービス「マネーフォワード クラウド」との連携についてもプレスリリース( https://hennge.com/jp/info/news/20211021_moneyforward.html )を公表していますが、
セキュリティ、契約などの取引書類、コミュニケーションなどのビジネスに必須の要素同士の連携が進んでいる事が窺えます。
上記のように、分野を問わず、コミュニケーションや契約、会計など商取引の必須要素や生産管理、顧客管理などにおいて、
自社自身のDX推進で蓄積した知見と技術の活用や、事業提携を通じて他社のDXを支援する動きが加速していると改めて感じる次第です。
2.DXを支援するビジネスにおける自社の強み(知的資産)の明確化
DXを支援するビジネスにおいては、上記のように事業提携も含めてワンストップで包括的な支援を提供する場合と、ある分野や事業プロセスに特化して支援する場合の双方のビジネスモデルが考えられますが、
自社がどちらのビジネスモデルで事業を展開するかを検討する上で、ターゲットとする顧客のニーズとともに、自社の強みも明確にし、かつ強みの使い方も幅広く考えておくことが、自社の選択肢を広げる上でも、自社のポジションを決める上でも必要かと思います。
以下の事例でも、自社の強み(知的資産)を他者の強みと組み合わせる、あるいは標準化するなど、自社の強みを明確したうえで、様々な方法で強みの活用を進めている様子が窺えるかと思います。
● 調理ロボットのTechMagicとCRISPがサラダ調理ロボットの共同開発を開始~「作業」と「接客」の分離で、より高い顧客体験を実現~
2021/10/4にテクノロジーによる持続可能な食インフラの創造に取り組むTechMagic株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
『株式会社CRISP(本社:東京都港区、代表取締役:宮野 浩史、以下「CRISP」)が目指す「テクノロジーで外食の顧客体験を再定義する」世界の実現に向けCRISPが運営するカスタムサラダレストランCRISP SALAD WORKSのモバイルオーダーアプリや店頭KIOSKと連動して最大287万通りのカスタムサラダを自動で供給するサラダ調理ロボットの開発・実装を目指し開発契約を締結しました。』
⇒モバイルオーダーとの連携や、品質の安定化と提供スピードの高速化、「人」が接客に集中することによる創造性の向上などを図るとのこと。
ロボット導入を機会とした業務標準化の促進という点で、他のDX導入時の目的や課題とも共通するものを感じる次第です。
また、必要に応じて他者の強みを取り込むことも重要ですが、その際にも自社の強みと顧客のニーズが明確になってこそ、そこに不足している技術などの知的資産、設備などの有形資産が明確になり、有効な事業提携などを行うための準備になるかと、以下の事例などからも感じるところです。
● ひび割れ点検支援システム「VIS&TFC」を開発、販売開始~画像処理により、ひび割れ検査作業の効率化と精度向上を実現~
2021/9/30にNSW(日本システムウエア株式会社)は表記のプレスリリースを公表しました。
『東京理科大学小島研究室(理工学部土木工学科 地球環境工学研究室)の特許を利用し、ひび割れ点検支援システム「VIS&TFC(ビスアンドティーエフシー)」を開発しました。』
⇒社会インフラの老朽化にともない、インフラ保守メンテの効率化と言う課題の緊急性も高まっており、またこの課題に対して画像処理技術や音響技術を利用する例も増えていますが、自社独自でこれらの技術を開発するだけでなく、大学等の特許技術を活用するということも、自社商品・サービスの開発と市場投入の迅速化という点で重要かと思います。
その際には、技術の提供側とWin-Winの関係になれるために、自社も何らかの強みを提供できる事が大切であり、
そのためにも普段から自社の強みを明確にし、その強みを自社の現在の事業以外にも活用できないかという検討も併せて行う知的資産経営のスキームの重要性も高まっていると考える次第です。
以上は、DX推進を支援する側の動向に関するものでしたが、円滑なDX推進では、支援を受ける側の準備や対応も重要なことは言うまでもないかと思います。
● アポ獲得からクロージング営業までオンライン化
リモートワーカー活用支援「かぞくとキャリアforBiz」の提供開始ー働きたいママの就労機会の創出を促進ー
2021/10/4に、株式会社カラダノートは表記のプレスリリースを公表しました。
『リモートワークを希望する子育て世代が多い一方で、リモートワーカーといった外部労働力を活用できていない企業が多いという実態を把握し、リモートワーカー活用の支援が必要であるとの見解に至り、この度、アイドマ社との代理店契約を締結し、SaaS型営業支援ツールの提案を通じたリモートワーカー活用支援を開始する運びとなりました。』
⇒働き方の多様化や就労機会の拡大につながるとともに、使用者と働き手のマッチングの新たな課題は、昨今のギグワーカーの課題と同様に、どのようなものとなり、更に今後どう変化していくかにも要注目と考える次第です。
2021/10/11に、融資・補助金での資金調達支援を行うSaaS「Scheeme(スキーム)」を提供するScheeme株式会社は表記のリリースを公表しました。
『2020年4月のScheemeのβ版ローンチから、2021年9月時点で利用社数は200社を超えており、売上も順調に推移しています。
この成長を一層加速させるべく今回の資金調達を実施いたしました。
調達した資金は、マーケティング施策と人材採用・組織体制構築の強化に充てる予定です。』
⇒「支援する人や仕組み」自体やそのユーザーを支援するという視点は、自社内の業務改革、新規サービスの開発の双方で有効な視点となりえます。
また、以下のブログトピックスでもお伝えしているように、
事業におけるバリューチェーン全体をみることは、介護ロボットの導入や、RPAのような生産性向上を支援する際にも重要な視点であり、そこから自社の新たな関係資産の構築を図ることも、将来への投資という点から価値があるのではないかと考える次第です。
『RPA、介護ロボットにみる「支援する相手の周り」を考える重要性』
なお、新型コロナ対応支援施策の整備が進むにつれて、支援策を利用するための、相談などの支援のニーズも高まっています。
相談する側される側の相互理解の重要性は委託契約などのおいても同様であり、そこにも支援のニーズと機会があるものと考える次第です。
『新型コロナ対応支援サービスにみる、「委託と受託」双方の立場の理解の必要性』
上記の事例のように、支援を受ける側が自社のビジョンや将来像からDXの目的を設定し、現状とのギャップから推進上の課題を考えるなどの努力や工夫を行うことに加えて、支援する人へのニーズの明確化や、「支援する人を支援する」視点など、支援をする側、受ける側の相互理解を進めることが重要であり、
例えば、知的資産経営のツールである経営デザインシートを利用する場合でも、DX推進ビジネスを行う側として、自社の強みの明確化に経営デザインシートを用いるだけでなく、
支援を受ける側(顧客)との相互理解を進めるツールとして、支援を受ける側の経営デザインシートの将来備えるべき知的資産に、
・DX推進支援を受けるために必要なDXに関する知識や社内調整力を持った人材(人的資産)、
・DX推進体制や各種マニュアル、推進スケジュールと進捗管理の仕組み(構造資産)、
・DX推進支援者や、共にDXを導入すべき取引先など(関係資産)
の様にDXの視点を加えて自社と顧客の将来像とDXの関係、DX推進の課題を可視化することも有効な方法ではないかと、検討をお勧めする次第です。
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