自社のブランドとイノベーションを知的資産で連携させる
【今日のポイント】
自社の社名に始まり、商品・サービス、環境等への取組の名称は、大変重要であり、神経を使うところですが、
ブランド(自社のアイデンティティ)とイノベーション(事業変革)の双方からみて整合性を持つブランド名を考える上で、知的資産(自社の強み)とそれを活用した自社の提供価値から考えていくことは有効な方法と検討をお勧めする次第です。
【目次】
1.ブランドやネーミングに関する最近の記事
2.「事業内容での信頼構築を軸に、企業の成長と社会環境の変化に応じた柔軟なブランド戦略の重要性が高まる」
3.ブランド構築とイノベーションの両立
● ブランドとイノベーションを通じて企業の産業競争力を向上させる経営手法「デザイン経営」の実践セミナーのアーカイブを配信を開始
ー中小企業の経営をデザインするー
2022/4/22に、兵庫県宝塚市で2012年からデザイン・コンサルティング事務所を経営している株式会SASIは表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000100352.html
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)
『この度、令和4年3月11日に企業経営者、ビジネスパーソンの方を対象に『関西デザ経 成果発表会2022』と題したイベントを開催いたしました。』
『「デザ経」とは、近畿経済産業局が主催する取り組みで、デザイン経営をこれから行いたい中小企業に対し、当社がハンズオンでのデザイン経営導入支援を行うものです。
イベント当日は、当社が伴走を行った関西企業8社がどのようにアイデンティティと向かい合い、デザイン経営の基盤を作ったかを紹介しました。
また、株式会社ジャクエツ代表取締役の徳本達郎氏、株式会社三井住友銀行理事の池田敏男氏をお招きし、デザイン経営の本質価値についてのクロストークを行いました。 』
⇒中小企業を中心に、デザイン経営を実践するための認知度、効果測定(費用対効果の評価)、人材確保などの課題は多く、またこれらの課題に対する支援ニーズも高いと感じます。
また、デザイン経営の2大要素であるブランドとイノベーションのうち、特にブランドは、自社にイノベーションはあまり縁がないのではないかと感じている企業にとっても、自分ごととして捉えやすいものと感じる次第です。
(なお、「イノベーション」は発明などの技術系だけでなく、事業の仕組み自体を変えることも含んでいますので、
こちらの方も、全ての企業にとって必要なものであるため、むしろブランド以上にその必要性の認識と対応は難しい課題ではないかと考えております。)
● ブランドのネーミングは言葉遊び? Is naming a brand a game of words?
2022/4/25の1日5分ビジネス英語に表記の記事が掲載されていました。
『かつてブランド名は、企業の活動内容に由来するものでした。その後、(「Uber」のような)変わった名前の流行がありました。逆に、ナイキ(達成感や勝利感を表現)やアマゾン(アマゾンの熱帯雨林にある無限の発見を表現)のように、ストーリー性のあるブランド名を選んだ企業もあります。
しかし、アメリカの企業やシリコンバレーの新興企業の間では、短く、耳障りが良く、フィンランド風の名前が新しいトレンドになっています。』
⇒ブランド名の付け方については、以下の記事にもありますように色々な方法があり、かつ、流行もあるようですが、
参考記事のブランド名の命名方法に関する解説などを見ても、
今後も、流行含めて多様なブランド名の命名方法が出てきて、わかり易いものから耳触りの良いもの、目立つものなど、様々なブランド名が出てくるものと改めて感じた次第です。
● ローカルビジネスにブランドデザインの発想で、「循環する地域経済」をつくる
沖縄開催の世界最大級サステナブルフェス「Earth Day」にブランディングジョインするアンド・フォースが「地域ブランディング支援」を開始。ホワイトペーパー「ローカルビジネスブランディング」限定公開
2022/4/15に、ブランドデザインでファンを生み出す、株式会社アンド・フォースは表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000053877.html
『全国のローカルビジネスにブランドデザインの発想を持ち込むことで「循環する地域経済圏」をつくり、ブランドデザインによる地域活性化を目指します。
また、自社ブランドである沖縄発の新ソウルフード「もとむのカレーパン」のブランドデザインやブランドストーリーの確立のノウハウ、さらに地域ブランディングの始め方を記したホワイトペーパー「ローカルビジネスブランディング」を限定公開します。( https://www.andforce.co.jp/ )』
⇒自社ブランド商品を持つことで、ブランディングについて実現性の高い知見を得るという点と、顧客のファン化という関係資産を起点に、ブランド、商品開発とその流通の仕組みなどの構造資産へと連動させる知的資産経営らの視点からも参考になると感じた次第です。
● 『調整さん』から生まれたビジネス版日程調整自動化ツール『TimeRex』 働き方の多様性に対応してフリープランの日程調整カレンダー作成数の制限を撤廃
2022/3/2に、国内最大級の日程調整ツール『調整さん』を運営するミクステンド株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
https://mixtend.com/news/unlimited-schedule-adjustment-calendar-creation/
『フリープランでも様々なシーンに合わせた日程調整カレンダーの使い分けが可能に
フリープランの日程調整カレンダー作成数の制限撤廃により、
・オンラインミーティング用
・対面での打ち合わせ用
・副業の会社用
等、様々なシーンに合わせた日程調整カレンダーの使い分けが可能になりました。』
⇒テレワークなどの事業環境(市場ニーズ)の変化への対応としても、B2C中心の商品サービス事業からB2Bへの市場拡大における、既存のブランド活用や、商品のブラッシュアップ・機能改良の事例としても関心を惹かれる次第です。
● 月額制のタレントシェアリングサービス「TALENTBANK」をローンチ
サブスクリプション形式でタレントの肖像素材が活用可能に。タレント起用のハードルを下げ、企業のブランディングや認知度向上に貢献
2022/4/5に、株式会社Starbankは表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000012055.html
『これまでタレントとの契約は1社限定の年間出演契約形式が基本であり、大きなコストがかかるため、特に中小企業・スタートアップ企業にとっては、起用のハードルが高い現状がありました。
そこでこの度Starbankでは、これまでのプロダクションとの実績を活かし、これまでタレント契約形式の基本であった、1社限定の年間出演契約ではなく、競合排除なしで、かつ肖像の月額利用契約サービス「TALENT BANK」の提供を開始することとなりました。これにより、企業側のタレント起用の障壁を下げ、またタレント側の広告出演契約の機会創出に繋げます。』
⇒「TALENTBANK」の詳細はこちら。
https://talentbank.jp/
この様なサービスの背景には、中小企業やスタートアップにおいてもブランド戦略が重視されてくる傾向に加えて、マスメディア以外のプロモーションや受け手の反応を得る手段となるSNS普及の影響力も窺えると感じる次第です。
2.「事業内容での信頼構築を軸に、企業の成長と社会環境の変化に応じた柔軟なブランド戦略の重要性が高まる」
上記の記事や、Facebookのメタへの社名変更や、コカ・コーラの命名の由来等の事例を見ていると、
「事業内容での信頼構築を軸に、企業の成長と社会環境の変化に応じた柔軟なブランド戦略の重要性が高まる」事が予想出来るかと思います。
スタートアップの様に実績がまだ付いていない企業では、認知度を上げるうえで、目立ち易く、耳慣れない言葉は効果があるかと思いますが、
多くの企業が同じ様な方法で社名やブランド名を付ければ、差別化は難しくなって来るものと思います。
また、企業が成長し、事業内容が多角化なども含めて変化していくと、目新しさだけで付けた名前では企業イメージに合わなくなる可能性も考えられます。
市場や社会や社内向けに自社のビジョンや提供価値を訴求し、事業自身での信頼を得る事をベースにしつつ、創業期の認知度向上と、その後の自社の将来像の双方を見据えたネーミングなどのブランド戦略が、今後とも重要であり続けるものと感じる次第です。
ブランド名は大変重要ですが、前述のように、それを裏付ける自社独自の強みや提供価値、ビジョン(志し)がある(あるいはこれから構築していく)事がブランド名を考えるうえでの前提にあることは言うまでもないことかと思います。
『エアロネクストの知財戦略にみる一貫したブランド構築戦略の作り方のヒント』などで何度かでご紹介している、株式会社エアロネクストのような、自社のドローン技術を特許や商標などの知的財産の形で活用した事業展開とブランド構築の推進など、
イノベーションを継続的に進めつつ、その成果である知的資産を軸に、事業提携と自社のブランドの確立を進めていくことがブランド戦略でも必要かと思います。
そのために、ブランドとイノベーションをそれぞれ個別に進めるのではなく、連携させながら構築するためには、
この2つの上位にある、「自社事業が市場や社会に提供する価値」、更に「自社の存在価値(社内、社外に提供する価値)」を把握し、共有することが重要となります。
また、現在の自社の存在価値だけでなく、企業が存続するために将来に渡って価値を提供し続けるためには、
自社の将来像を明確にすることが必要であり、その際に自社が将来社会に提供する価値とそれをどのようにして「創造」し、かつ「届ける」かを考えるうえで、
自社の現在の商品やサービス起点ではなく、更に上位概念で自社の提供価値を考え、それを将来はどのように変えたいかを、
自社の社内外の環境変化を考慮しつつ検討する上で、
経営デザインシートなどの知的資産経営のツールを用いて、
「知的資産」という視点から、自社の現在持つ強みを棚卸しし、かつ将来持つべき強みもこの「知的資産」という視点から検討することで、
自社の提供価値を実現するうえで必要なものを明確にすることを通じて、実現性や共感性の高い、ブランド戦略とイノベーション戦略の統合を図ることに繋がることが期待できるかと思います。
上記の取り組みの上で必要なオープンイノベーションなどの事業提携を支援する行政や民間の動きも活発化してきていますので、これらの支援も活用しつつ、自社の知的資産の棚卸しと、ブランドとイノベーションの連携への活用の検討を進めてはいかがかと考える次第です。
特許庁の「オープンイノベーションポータルサイト」(モデル契約書などを掲載)はこちら
https://www.jpo.go.jp/support/general/open-innovation-portal/index.html
★ 以下のランキングに参加しております。ぜひ、クリックよろしくお願い申し上げます(^^)。
※>本ブログのトピックスの中で紹介している事例の中で取り上げているサービスや商品等は、解説のための参考として挙げたもので、
当研究所として推薦するものではありませんので、他の選択肢や導入の要否含めて、自社の状況に応じてご検討いただければ、大変幸いに存じます。