市場を広げる視点「支援する人を支援する」

【今日のポイント】
「顧客の顧客を知れ」とはよく聞く言葉ですが、「顧客など自社の関係者を支援する人を知る」ことも、また自社の事業領域を広げる上で有効な視点となるかと思います。

その「支援する人」の見つけ方支援の仕方を考える際に、自社の知的資産を把握して、そこから辿っていく方法も検討をお勧めする次第です。

【目次】
1.「顧客の顧客」と「顧客(自社の関係者)を支援する人」
2.「支援する人」を探し、スキルアップ等を支援する
3.自社の知的資産を「支援する人を支援する」ために活用する

1.「顧客の顧客」と「顧客(自社の関係者)を支援する人」

マーケティングや自社事業の市場開拓などにおいて、「自社のお客様にとってのお客様は誰か、どんなニーズを持っているかを考える」との言葉を聞いたり、実際に検討を行う場面は多いかと思います。

このように、「自社に関係する相手を広げてみる」ことは、
例えばSDGs対応のように、自社で働く人々や取引先だけでなく、社会全体や自社がある地域など、さらにはサプライチェーンマネジメントのように国境も越えて関係者(ステークホルダー)を考え自社がどのような価値を提供できるか逆にどのような負荷をかけているかを考える必要性が高くなるに連れて、適宜行う項目となってきていると感じます。

この「関係する相手」を考えるうえで、上記の「自社の顧客の顧客」に加えて、「顧客など自社の関係者を支援する人」に目を向けてみることも、以下の記事などの事例にみるように、今後重要さを増す視点であり、かつ既に取り組まれている項目となるかと思います。

● KIRIHAREが産業医と提携開始 従業員50名以上の企業にメンタルヘルスケアを導入しやすくなりました

2022/5/2に、働く人々のメンタルヘルスをクラウドサービスで支援するKIRIHARE株式会社は表記のプレスリリースを公表しました(Dream Newsより)

https://www.dreamnews.jp/press/0000257145/
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)

『従業員50名以上の企業では、ストレスチェックの実施、ハラスメント相談窓口の設置、産業医の選任が法律で義務付けられています。
今回KIRIHAREでは、産業医との提携により、従来より提供してきたハラスメント相談窓口、ストレスチェックに加え、新たに産業医のサービスも提供可能になりました。』

オンラインでの法律相談や電子契約サービスにおける弁護士との連携などと同様に、専門家との連携による中小企業向けトータルソリューション提供の一例としても、参考になると感じた次第です。

 

● 【全国対応】産業医・保健師のお仕事マッチング&登録サイトを公開
【お仕事の合間に】【30分/回などの面談だけもOK】【月1回勤務などご希望の条件で】ご案内

2022/5/1に、産業保健サービス提供会社のウェルネスサポートは表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000087470.html

『4つのサポート
弊社との業務委託契約のため、企業との調整・相談などは担当のサポーターが行うため、煩雑な手続きや手間を出来る限り軽減します。

①企業との調整・相談を専門サポーターがフルサポート
②企業との契約・請求等を代行
③最新情報・資料等の提供
④初回訪問時に選任スタッフが同行(随時WEB等でも同席・フォロー)』

⇒以前のトピックス『RPA、介護ロボットにみる「支援する相手の周り」を考える重要性』でお伝えしたデジタルやロボットなどの技術の利用や、
『オンライン化に伴う社内外のコミュニケーション活性化と知的資産』でもご紹介した、オンライン化が進む中での、マッチングサービスの活用など、

「支援する人を支援する」ビジネスが、メンタルヘルスなど健康経営の分野でも様々な形で広がって来ていることが窺えます。

※>「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

https://kenkokeiei.co.jp/kenkokeiei_executiveoffice_info/

 

● 現場・技術系の仕事に特化した就職・転職支援サービス  5月6日“caree tech(キャリテック)”本格始動
~「電験三種」受講前Zoom相談会等 オンライン活用の新サービスを提供~

2022/4/27に、技術士、建築士などの現場・技術系の資格取得専門の通信教育を提供するSAT株式会社は表記のプレスリリースを公表しました(@Pressより)

https://www.atpress.ne.jp/news/308093

『これまでの通信教育に並ぶ新しい事業として、現場・技術系の仕事に特化した“就職・転職支援サービス”を5月6日より開始します。
資格を所持し、働く意欲のある人と人材を欲している企業をマッチングさせるWEBサイト「caree tech」を開設・運営し、資格取得から就職・支援までを一貫してサポートします。』

分野特化型の働き方支援は、その分野での働く側と雇用側双方のニーズなどの深掘りによる深い知見の獲得を通じて、他分野への展開の可能性も得られるのではないかと考える次第です。
また、このようなサービスは、専門家という「企業などを支援する人」育成と活動の機会の提供という点でも、DX促進におけるIT人材のように、今後も広がっていくものと考える次第です。

 

2.「支援する人」を探し、スキルアップ等を支援する

上記のような「自社の関係者を支援する人」を探す、または、その人達(支援者)の育成やスキルアップ等を支援する上で、
例えば介護事業のように、被介護者と介護者のような関係が比較的わかり易い分野だけでなく、自社からは自社の関係者をどんな人が支援しているかやその支援者が持っているニーズ(悩み事など)が見えにくいという分野もあるかと思います。

「支援する人」が見えにくい場合に、一つの方法としては、前述の医師、弁護士や、中小企業診断士などの「支援をする専門家」どのような顧客を持っているのか、あるいは連携しているのかという方向と、

逆に自社の顧客などの関係者が、このような専門家をどのように利用しているか、あるいはその点でどんな悩み(誰に相談すべきかや相談の仕方が分からないなど)を持っているかという方向から検討することがあるかと思います(これは、自社も専門家に相談などをしている場合には、その関係資産の活用ということになります)。

以下の記事は弁理士という専門家自身がスタータアップを支援する事業を行っている例ですが、この専門家が支援を行うためのツールを開発し、提供するというのも、「専門家を見つけ、そのスキルアップ(顧客への提供価値の向上)を支援する」ことに繋がるものと考える次第です。

 

● PATRADE株式会社が愛知県のスタートアップ支援事業「PRE-STATION Ai」で採択されました

2022/4/12に、PATRADE株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。

https://patrade.jp/information/822/

『知的財産権の専門家である弁理士が設立したPATRADE株式会社は「アイデアのシェアリングエコノミーの実現」をテーマに、知財マッチングサービスや、手軽な知的財産権の管理ツールの普及目指しています。』

愛知県のスタートアップ支援拠点「PRE-STATION Ai」についてのサイトはこちら
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/startup/prestationai.html

同社は、株式会社愛知銀行との開放特許活用に関する事業提携についても公表していますが、中小企業の自社・他社の知財活用は、新たな提携先の発見という関係資産の構築やリスク管理としても重要と考える次第です。

『株式会社愛知銀行との開放特許活用に関する ビジネスマッチング契約の締結について』
2022/4/14の同社のプレスリリース(@Pressより)
https://www.atpress.ne.jp/news/305784

また、以下は行政の取り組み事例ですが、民間企業においてもホワイトペーパーの提供など、同様の支援活動を自社の直接の顧客だけでなく、その顧客を支援している人向けに行うことも、新規事業を考える上では参考になるかと思います。

● 中小企業のDXに役立つ「手引き」と「AI導入ガイドブック」を取りまとめました

2022/4/8に経済産業省は表記のプレスリリースを公表しました。

https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220408001/20220408001.html

『経済産業省では、中堅・中小企業等のDX推進を後押しするべく、DXの推進に取り組む中堅・中小企業等の経営者や、これらの企業を支援する機関が活用することを想定したDXの推進のための「手引き」を作成するとともに、
中小企業が自らAIを導入する場合において、中小企業自身が自社の状況を踏まえて適切な導入方法を判断し、自社主導でAI導入を進められる状態を目指せるよう参考となるガイドブックを取りまとめました。』

⇒行政のこのような取り組みは、オープンイノベーション支援サイバーセキュリティ対策支援も含めて複数の組織にまたがるため、それらを組み合わせるための支援も重要性を増していると感じる次第です。

 

3.自社の知的資産を「支援する人を支援する」ために活用する

上記のような、取り組みを行う際には、自社の持つ知的資産などの経営資源を活用することが、実効性、実現性を高める上で、非常に重要となります。

『日立建機の教習センタ共同設立にみる人材育成を軸にした事業展開』でご紹介した、生産性向上と人材育成のような、現在の少子高齢化、AI・IoTなどの新技術の普及においてほぼ全ての業界における課題に対して、自社の困りごとの解決策やその土台となる知的資産(人的資産や構造資産を、人材育成や省力化といった形で他者に提供する方法や、

『コニカミノルタの介護データ活用サービスにみる、現場と新技術の仲介者の重要性』でご紹介した仲介者の役割を自社の関係者同士(関係資産)を繋げるところから始めてみる方法、

『塗装職人育成企業とSNS動画配信のコラボにみる、技能のマルチメディア化とフィードバックの機会』でご紹介した、技能伝承などを自社が持つ知的資産(動画配信技術やAI技術など)で支援する方法、

『ITスキルアセスメントツールGAITにみる「検定」の活用』でお伝えした、自社の暗黙知を含む知見や顧客データ「検定」や「資格」の形で活用する方法など、
複数の選択肢を検討することで、「支援する人を支援する」ために自社が出来ることを見出し、自社事業を広げる事が期待できます。
(最後の検定の事例は、「検定試験」などの受験者自身が「支援する人」の候補者であり、2.で記載した「支援する人を探す」ことにも繋がるかと思います)

上記のように、自社の知見やコネクションなどの知的資産「支援する人を支援する」という視点から眺め直して、その活用先を広げることも、新規市場開拓や既存顧客への提供価値の向上策の一つとして、検討をお勧めする次第です。

 

 

 

 

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