腸呼吸による呼吸不全治療の研究等にみる、「温故知新×空想をニーズとシーズ双方に適用するイノベーション」の進展

【今日のポイント】

腸から酸素を送り込む呼吸不全の新しい治療法の開発が進んでおり、新型コロナへの適用も期待されています。

この開発がドジョウの腸呼吸からヒントを得ているように、新規研究開発において、ニーズとシーズの双方に、異分野を含む過去の知見を空想力を活かして取り込むことは、重要かつ有効な方法となるものと考える次第です。

 

【目次】

1.腸呼吸による呼吸不全治療法開発にみる「温故知新×空想力」の効果
2.蜘蛛の糸の研究からみる、人の試みの温故知新の重要性
3.自社の事業のイノベーションをシーズとニーズそれぞれに「温故知新と空想力」をかけ合わせて組み合わせる

 

 

1.腸呼吸による呼吸不全治療法開発にみる「温故知新×空想力」の効果

 

・「 腸呼吸の応用により、呼吸不全の治療に成功! 」腸換気技術を用いた新たな呼吸管理法の開発へ光

2021/5/15に東京医科歯科大学(https://www.tmd.ac.jp/)は表記のプレスリリース( https://www.tmd.ac.jp/topics_detail/id=20210515-1 )を公表しました。

(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

『ポイント
・腸に酸素を供給するというアプローチにより、全身の酸素化を可能とする腸換気(Enteral Ventilation EVA)法を開発しました。
EVA法は、呼吸不全モデル動物の生命予後を改善できることを明らかにしました。
EVA法は、モデル動物の検討において明らかな有害事象は認められないことを示しました。
・上記の成果は、呼吸不全に対する新しい呼吸管理法の開発に貢献すると考えられます。』

新型コロナの治療への適用も検討されているとのこと。この治療法が実用化されれば新型コロナ対策の選択肢が広がりますので、期待も膨らみます。

本トピックス掲載時点で、研究推進のためにクラウドファンディングも利用されているそうなので、幅広い支援が集まることを期待する次第です。

クラウドファンディングのサイトはこちらプロジェクトページURL
( https://readyfor.jp/projects/takebelab )

クラウドファンディングに関するプレスリリースはこちら
『「東京医科歯科大学 × READYFOR」提携第一号プロジェクトを開始、寄附金を募集』

 

『 クラウドファンディングプロジェクト概要

・プロジェクトタイトル「世界初の腸呼吸で、呼吸に苦しむ患者さんを助けたい」
・ページURLhttps://readyfor.jp/projects/takebelab
・実行者 武部貴則/ 岡部亮/ 大内梨江(武部研究室)
・目標金額1,000万円
・形式 寄付金控除型/All or NothingAll or Nothing形式は、期間内に集まった寄付総額が目標金額に到達した場合にのみ、実行者が寄付金を受け取れる仕組みです。
・公開期間?2021515日(土)?630日(水)23
・資金使途?呼吸補助治療法を目指す腸換気法の研究
・概要?新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者さんなど、肺機能を大きく損なう患者さんの救済を目指し、補助的に循環・呼吸を助ける安全な新規循環呼吸補助法「腸換気法(※1)」の開発費を募ります。』

 

 

 

2.蜘蛛の糸の研究からみる、人の試みの温故知新の重要性

 

音楽を通して蜘蛛の巣の謎を解き明かす Unravelling mysteries of the spider’s web through music

2021/05/07の1日5分ビジネス英語に表記のトピックスが掲載されていました。

⇒蜘蛛が巣を織る際に発する振動から音楽を作成するというもの。音楽と蜘蛛の巣の組み合わせに、科学とアートのコラボの可能性や効果の大きさを感じた次第です。

 

また、上記の記事からは、「人の試みの温故知新の重要性が高まる」ことが予想出来るかと思います。

今回の記事を読んで、私が最初に感じたのは「蜘蛛の糸の研究は昔からあったのでは?」と言う既視感でした。

 

以下の記事は比較的最近ですが、蜘蛛の糸の強靭性や、高タンパク質性と言う特徴を、繊維や食料に活用しようと言う試みは以前からも時々目にしていた様に思います。

『大学発ベンチャー表彰特別賞を受賞しました』

2014/9/2Spiber株式会社のプレスリリース。

『独立行政法人科学技術振興機構主催の大学発ベンチャー表彰にて当社が特別賞を受賞しました。

世界で初めて超高タフネスを誇るクモ糸の人工合成に成功し、応用範囲の広い素材技術であり、今後大きく飛躍するポテンシャルを持っていること。「タンパク質を素材として使いこなす時代の開拓」というグランドデザインもすばらしく、今後のさらなる成長への期待、が受賞の理由です。』

先人が自然から学ぼうとしたこと、また反面教師としては、いかにして(どのような状況と事情で)自然を破壊してきたかを学ぶことが、自然から学ぶ際の必須事項となっていると感じます。

そして、技術や事業面での温故知新に用いることのできる情報源としては、特許などの知的財産に関する情報(特許庁の無料データベースJ-PlatPat等)もその一つと考える次第です。

 

 

3.自社の事業のイノベーションをシーズとニーズそれぞれに「温故知新と空想力」をかけ合わせて組み合わせる

蜘蛛の糸の研究について記載しましたように、上記の2つの記事からは、「(ニーズ×(温故知新+空想))×(シーズ×(温故知新+空想))の組み合わせが社会課題を解決する」様子が窺えるかと思います。

上記の腸呼吸に関する記事では、ドジョウの腸呼吸にヒントを得たそうですが、ドジョウの腸呼吸については、私もかなり以前に(子供向けだったと思いますが)科学記事か何かで読んだ記憶が残っています。

 

このように、
ニーズ側では、今まで過去に、あるいは異業種で同様の課題に向き合っていないか、

シーズ側では、上記のドジョウの例やSFなどに出てくる架空の技術などのように、過去または異分野のシーズやその取り組みを、
ニーズ、シーズそれぞれにおいて空想力を活かして取り込んで

更にそれらのニーズとシーズを組み合わせることで、現在の社会課題を解決する技術開発が進められる事を改めて感じた次第です。

なお、腸呼吸による呼吸不全の治療法につけられた「エヴァ法」という名称は、換気などを意味する英単語の頭文字の他に、液体を使った呼吸が登場するアニメ「エヴァンゲリオン」からも影響を受けたと記載されている記事がありましたが、ここにも「温故知新+空想」の有効性を感じます。

『尻から酸素、呼吸不全を改善 コロナ治療に応用も』
2021/5/15の東京新聞TOKYO Webの記事。

 

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