経営デザインシートにおける将来の外部環境予測の情報源と使い方
【今日のポイント】
経営デザインシートは、将来の自社のありたい姿からバックキャストで現在の課題と今後の戦略を検討する便利なフレームワークですが、将来の外部環境の予測も重要な項目となります。
その予測に用いる情報源やそこから取得する情報の整理や使い方についても、複数のフレームワークの組み合わせが有効かと検討をお勧めする次第です。
【目次】
1.経営デザインシートの「これからの外部環境」を記載するための情報源
経営デザインシートは、自社の将来のありたい姿からバックキャストして、現在の課題を設定するという手法で自社の経営戦略を立てるためのツールという特長を持っていますが、
その特長を活かすためにも、将来の外部環境をなるべく視野を広げて具体的に想定することは非常に重要となります。
将来の外部環境は、経営デザインシート左下の「これからの外部環境」に記載欄がありますが、
まずは、多くの情報とその分析を行った上で、その集約した結果をこの欄に記載し、
次にシート右上の自社の経営方針から出てくる、将来自社が提供したい価値と突き合わせて、その価値の提供に必要なビジネスモデルや経営資源を検討するという流れになるかと思います。
(『「経営デザインシート」について(新デザイン版)』P24 知的財産戦略本部「経営をデザインする」サイトより)
今までにも、『私の情報収集方法(情報源)のご紹介』などで、外部環境の把握に必要な情報源や情報収集の方法などをご紹介してきましたが、
特に中長期の外部環境を考える上で、以下の2つの情報源は、多くの分野の方のお役に立つかと思います。
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
・野村総合研究所(NRI)のNRI未来年表 2021-2100
不定期の発行ですが、本トピックス執筆時点での最新版は、2020年11月に発行されています。
『NRI未来年表は、今後予定されている出来事を「政治・社会」「経済・産業」「国際」の軸で整理し、さらに、NRIが書籍やセミナーなどで発表している様々な予測を「NRI予測」として掲載している年表です。
将来の社会の大きな動きが一覧できます。年表には、2021年~2100年までの未来予測を盛り込んでいます。また、「交通・運輸」「働き方」「デジタル経済」「バイオ・医療」の4テーマを取り上げ、NRIの予測をコラムとしてまとめています。』
⇒新型コロナの影響は、特に働き方の分野でテレワークや副業・マルチジョブ化等が採り上げられています。
また、自動化やデジタル化の進展はやはり大きく、そのメリットに加えてセキュリティやモラルなどの課題も新しいニーズとして採り上げています。
なお、経済・産業分野では、2050年のカーボンネットゼロに向けた動きも進んでいくことが窺えます。
・博報堂生活総合研究所の未来年表
本プログ執筆時点では、2021/10/20にデータベースが更新されています。
「あなたの未来をみる」自分の年齢を入れてみると、「あなたの未来年表」が出てきます。
私の年齢を入れてみたところ、近いところでは、
『燃料電池で走るハイブリッド鉄道車両の実証実験が、国内ではじまる(2021年度末)』、
2030年には『フロー電池のコストが最大で67%低下する』
2050年の長期では、『世界の市長らが訴えるポスト京都議定書の目標(京都気候変動防止宣言)が実をむすび、温室効果ガス排出量の80%削減が実現する(1990年比)』
などの予測が出てきました。
やはりSDGsなど、環境を始めとする社会課題の影響の大きさとその対応が進むことが窺えます。
また、「情報源自体の探し方」としては、グーグルアラートに「未来予測」等のキーワードを入れて探してみると、業界の短期から長期の市場予測や事業環境の予測に関するレポートの紹介、未来予測に関するセミナー等の記事を入手できますので、そこから自分にとって有用と思われるレポート等の情報を発信しているコンサルティングファームや調査会社などのHPのURLを収集しておくことも、未来予測に関する情報源と情報の双方を効率よく得られる方法としてお勧めする次第です。
上記のような、情報源に加えて、どんな情報を集めたいかを決め、また集めた情報を整理するためのフレームワークも重要となりますね。
『「インプット大全」を読んでーアウトプット前提のインプットの効率化』でご紹介した、『インプット大全 (樺沢紫苑著)』 では、情報収集のテーマ(分野)管理として、マンダラチャート(マンダラート)の利用を勧めており、私も活用しています。
(マンダラチャートは、米国大リーグで活躍している大谷翔平選手が高校時代に利用していたということで有名になった、3×3マスの9マスを9並べて書き込むフォーマットです。)
そして、このマスに入れるテーマ(分野)も、フレームワークを利用すると抜け漏れがなく、効率的になりますね。
そのフレームワークとしては、外部環境関連でよく見るものとしては、
PESTや5F、SEPTEmber等があるかと思います。
・PESTは、「Politicvs(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology技術)」の4つの分野に分けてそれぞれの動向を把握する環境分析手法であり、
・5F(5Forces=5つの力)は、業界構造の把握のために用いられる手法で、「売り手の交渉力、買い手の交渉力、業界内の競合関係、新規参入の脅威、代替品の脅威」の各分野の動向を見ながら、自社事業の環境とその変化を分析する手法となります。
特に、新規参入の脅威と代替品の脅威は、今回の将来の事業環境の変化に関しては重要なポイントとなるものかと思います。
・SEPTEmberは、5Fよりも更に業界外部の状況をカバーするマクロ環境分析のフレームワークで、社 会(Societal)、 経 済(Economic)、政治(Political)、技術(Technological)、地球環境(Ecological)の5つの分野に分けて外部環境の把握を行う手法です。
なお、5FとSEPTEmberの関係と使い方については、以下の文献も参考になるかと思います。
『シナリオ・プランニング』(西村 行功氏、Journal of Life Cycle Assessment, Japan Vol.10 No.3 July 2014』
上記のフレームワークをそのまま、あるいは自社が利用しやすいようにカスタマイズして、分野(テーマ)毎に情報を収集・分析し、その内容を経営デザインシートの「これからの外部環境」に落とし込んで、自社のビジョンや提供価値と突き合わせる際には、
『経営デザインシートに考える、今と未来のSWOTの使い分け』でご提案しているように、
現在のSWOTとは別に、自社が設定している将来の時点でのSWOTを作成し、その外部環境項目である機会(Opportunities)と脅威(Threats)に上記の外部環境を入れて、自社の提供価値やビジネスモデルを考えてはいかがかと思います。
(『経営デザインシート作成補助シート3(SWOT分析)』知的財産戦略本部「経営をデザインする」サイトより)
そして、考えたビジネスモデルに必要な資源について、未来のSWOTの強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)に当てはめながら自社の現在の強みや弱みと比較し、また自社のビジネスモデルや提供価値を見直すというサイクルを繰り返すことで、
将来予測からのバックキャストによる自社の現在の課題が見えてくるものと、検討をお勧めする次第です。
なお、経営デザインシートの詳細については、『経営をデザインする』 (知的財産戦略本部サイト)をご参照いただければ、大変幸いに存じます。
また、未来予測とその活用方法の一例として、
『「SF思考」ー物語で見せる未来予測』全3回 (第1回はこちら )でご紹介した、
『SF思考――ビジネスと自分の未来を考えるスキル Kindle版藤本 敦也 (著), 宮本 道人 (著), 関根 秀真 (著) 』も参考になるものと一読をお勧めする次第です。
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