日本技術士会の技術士制度改革提案

● 日本技術士会が技術士制度改革の提言について中間報告を公表

日本技術士会は、平成27年5月に「技術士制度検討委員会」を設置し、技術士制度に関わる様々な論点について検討を進めてきましたが、
文部科学省科学技術・学術審議会技術士分科会において「今後の技術士制度の在り方について」の報告書が取りまとめられたことを受け、今後の技術士分科会等での審議に資するため、「技術士制度改革について(提言)-中間報告-」を取りまとめ、公表しました。
今後、技術士分科会における審議等を踏まえ、更に検討を行い、最終報告を取りまとめる予定とのことです。

https://www.engineer.or.jp/c_topics/005/005099.html

今回の提言の主な項目は以下のとおりです。

1.一定の研鑚と登録事項の確認を目的とした更新制度の導入
①更新対象者:全ての技術士を対象
・複数部門登録者は1回の更新で複数部門の更新を可能
・廃業後も技術士として社会貢献等を行っている高齢者が存在することから、
業務実態や更新の負担等を勘案し、その取扱いの検討が必要
②更新期間:他の資格制度の更新期間を参考に5年程度が適当(本文別添1)
③更新条件:
「更新講習」の受講を条件
。講習は技術者倫理など部門横断的内容

2.技術士補の在り方と初期能力開発(IPD)支援方策
○技術士補登録の意義は薄れ、技術士補の廃止を検討すべき
○若手の技術士参入促進のため、4年ルートは存続すべき
その際、現在の指導技術士の部門限定を撤廃

3.技術士資格の国際的通用性
・国際エンジニア連合(IEA)では各国技術者資格のカテゴリー化を検討:追加審査の不要なカテゴリーⅠと追加審査必要なカテゴリーⅡ
・現在の日本の技術士制度では、カテゴリーIIに分類されると予想
・第二次試験の見直しでIEAの要件が満たされている旨、
今後、IEAに働きかけ

4.他の国家資格との相互活用
技術士資格活用の更なる拡大に向け、以下の資格等での活用を要望

医薬品等総括製造販売責任者等、水質検査実施者、作業環境測定士、
公害防止管理者等、鉄道車両等の設計照査、高圧ガス製造保安責任者、
計量士、エレベーター等の型式適合認定員、機械器具設置設計照査、
廃棄物処理施設技術管理者、生産業務等安全主任者

 

● 更新制度と技術士としての自己研鑽

上記の提言の中で、全ての技術士に影響が及ぶのは
1.の更新制度だと思います。

今回の提言では、技術士の実態把握と、技術士の自己研鑽の促進の
双方を目的として更新制度の導入を挙げていますが、
自己研鑽(能力の維持向上)の面で見ると、

中小企業診断士と比較すると、中小企業診断士では、
コンサルタントの実務が更新の要件に入っていることが大きな違いとなります。(毎年1回、更新間隔の5年間に計5回の座学研修が
義務付けられていることは、今回の提言内容と同様です)

行政書士と比較すると、
行政書士は行政書士会に登録して、会費を払っていることが、
行政書士として仕事をする主な要件となっていますが、
これは、行政書士としての実務でお金を取れていなければ
会費も払えず、登録を続けられないことが、事実上の資格維持の
条件(実務能力の有無の証明)になっているとも考えられます。

 

● 技術士の「実務」とは何か?どう評価するのか?

今回の更新制度の提言では、講習の受講を要件とすることを提案していますが、
中企業診断士のように、実務能力も更新制度の中で担保しようと今後
考えていくとすれば、
技術士としての実務をどう定義し、それをどのように評価するかが
今後の課題になると思います。

企業内で、技術士としてその技術的知見を活かすのも、立派な技術士
としての実務であり、独立したコンサルタント以外の技術士の実務
をどのように評価していくのかは、技術士という資格のアイデンティ
ティにも関係する大変重要な問題と、注目している次第です。

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