ファーウェイの苦境にみる自国の評価というリスクと気づかないリスクの見つけ方

【今日のポイント】

自社や業界だけでなく、自国の海外からの評価までリスク要因になるというのは、中国の特殊事情とは言い切れないかと思います。

日本の少子高齢化、地震などの天災なども含めて、他者からの評価という視点からのリスクマネジメントも今後大きな課題になってくるものと考える次第です。

難局に見舞われたファーウェイ、信頼回復までの長い道のり

2019/1/26 WIRED に表記の記事が掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

『中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)を巡る不穏なニュースが、あとを絶たない。111日にはポーランドで社員がスパイ容疑で逮捕されるという事件があった。その数日後には、台湾がスマートフォンやネットワーク機器を含む同社の製品に規制をかけるとの報道が出ている。ファーウェイが中国政府のスパイ活動に協力している可能性があるため、政府機関での使用を禁止するというのだ。
さらに『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、米国の検察当局が同社の刑事捜査に乗り出したと伝えた。Tモバイルなど提携先企業の特許技術を盗んだ容疑がかけられているとされる。
排除といえば、オーストラリア政府は昨年8月、第5世代移動通信(5G)のインフラ構築において、ファーウェイやZTE(中興通訊)などの中国企業からの機器調達を認めない方針を明らかにした。これは米政府の措置にならった動きで、ほかにも英国、カナダ、チェコ、ノルウェー、日本などが、ファーウェイとの関係を見直す方針であるようだ。』

中国のファーウェイ外しの動きは、防衛産業をはじめとして、通信などの社会インフラ、米国から豪州へと分野も対象国も広がっている事が窺えます。

自国の評価というカントリーリスク

同記事では、今回の動きの原因は何年も前から存在しており、米中貿易戦争を機に顕在化したものであり、事態は今後も悪化するとの見通しを語っています。

『一連のトラブルは、貿易摩擦や技術盗用の問題、地政学的な緊張の高まりを受けて米中関係が急速に悪化するなかで起きた。ファーウェイを巡っては以前から共産党政府とのつながりが指摘されてきたが、逮捕劇や製品締め出しといったことはごく最近の流れだ。

業界アナリストのジェフ・ケーガンは、「ファーウェイ問題は過去何年もくすぶっていました」と説明する。「ここに来て急に沸騰したわけで、その事実を隠すことはできません。事態は今後も悪化するでしょう」』

海外進出時の相手国のカントリーリスクだけでなく、自国が受ける評価リスクも深刻になって来ていることを改めて感じる次第です。

リスクを先ずは幅広に捉え、今は自社で扱えないリスクを洗い出し今後の方針を立てる

法規制のリスク、自社や業界自体のレピュテーションリスクなどについては、今までにも

Airbnbの予約キャンセルにみる法規制リスクとその対応の重要性

「日本に仲裁機関設立へ」に考える海外紛争解決が自社に及ぼす影響

米アマゾンやトヨタの知的財産に対する課税にみるリスクマネジメントの難しさ

などでお話してきましたが、

自国のカントリーリスクへの対応というのは、一企業の手には余るものかとは思います。

また、対応以前に、中小企業が自社に影響を及ぼす法規制などを全て把握して手を打つことは至難の技ですね。

従って、税理士、会計士、行政書士、弁理士、中小企業診断士などの適切な専門家や行政の支援を仰ぐことは、今後ますます必要性が増してくるかと思います。

そして、適切なタイミングで専門家に相談できるようにしておくためには、行政や業界団体の支援も含めて日頃から関係を構築しておくことが必要であり、このような支援者・アドバイザーを重要な関係資産として、知的資産経営の中に位置づけておくことをおすすめする次第です。

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Airbnbの予約キャンセルにみる法規制リスクとその対応の重要性」

新しい事業、新しいサービスなどを展開する際の法規制などのリスクを想定する際に、想像力を働かせること、現在の法規制で守られている側(今回の例ではJTB)などともいざというときに連携を取れるようなつながりを持っておくことなど、周到な用意が必要だですね。

・「「日本に仲裁機関設立へ」に考える海外紛争解決が自社に及ぼす影響
各国の独禁法、貿易管理に関する法規制、知的財産や労働者に関する法規制など、紛争にかかわる規制や制度の変更も、思わぬところに波及する可能性が高いので注意が必要です。

取引先を含めてバリューチェーン全体で紛争に巻き込まれるリスクを考える必要がありますね。

強行法規など、契約に優先するものもありますが、リスク管理の一つとしての契約の重要性はやはり大きいものがあります。

・「米アマゾンやトヨタの知的財産に対する課税にみるリスクマネジメントの難しさ
アマゾンやトヨタでさえ難しい法的リスクの予測と対応。私達はやはり専門家の支援を前提にリスクマネジメントを考える必要がありますね。

・「混合介護の議論に見るIoTと社会・制度双方の理解の重要性
今後、AIやIoTを使って、異業種間のコラボや競合が進んで行く中で、技術と社会制度の変化について、アンテナを広く張っておく必要性はますます高まっています。

そのために、ネットの活用なども重要ですが、自社と異業種のそれぞれに知見を持つ専門家の力も、知的資産の中の関係資産として整備していくことが重要です。

・「ネットショッピングと省エネの関係にみる事業環境予測の視点とは?
ネットショッピング事業者にも省エネ法の網がかかりましたが、新しいサービスやビジネスと、現在の社会的、普遍的な課題(地球温暖化対策、少子高齢化対策など)がリンクすると、そこでビジネス環境の変化が訪れ、企業は対応を迫られます。

新しいビジネスや技術の動向を見る際に、社会の普遍的な課題にどんな影響が出るか、またそれらの課題からどんな影響を受けるかという視点を持つ事が必要ですね。

・「「空のタクシー」政策にみるエネルギー自由化との共通点
法規制の影響を予測する際に、
自社の業界より先に規制緩和が行われた(エネルギー業界など)り、厳しい環境規制を掛けられたりした業界(自動車業界など)の動向は参考になるものと思います。

 

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