アマゾンの「メカニカルターク」にみる、自社の知的資産のレバレッジの効かせ方

●　アマゾンの「メカニカルターク」が提供する「マイクロワーク」という働き方

先日のブログ「公正取引委員会のフリーランスに関する検討にみる、人材確保の視点」
http://wp.me/p8EI7Z-hF
で言及した、アマゾンのメカニカルタークについて、アマゾンの紹介ページには以下のような記載があります。
https://aws.amazon.com/jp/mturk/

（引用は「」でくくります。　改行は筆者挿入、以下同様）
「Amazon Mechanical Turk は、有能な人材を必要とする仕事のためのクラウドソーシングマーケットプレイスです。Mechanical Turk は、クラウド内での柔軟なオンデマンドの労働力を提供します。依頼者は、ウェブユーザーインターフェイス、コマンドラインツール、またはウェブサービスからこれを利用できます。開発者はこのサービスを使って、直接、自分のアプリケーションに人知を組み込むことができます。」

ＡＩ等の機械と人の感性・経験を組み合わせるという視点、
プロジェクトを複数のタスク（Human Intelligence Tasks または「HIT」）に細分化して、そのタスク毎に費用対効果の高い人材を確保するという視点
の双方の実例として、大変示唆に富んでいるかと感じます。

●　アマゾンのメカニカルタークは、ユーザー自身の評価やリコメンド機能の転用

以下のように、このサービスは
１＞依頼側は、自社のプロジェクトの中で委託したいタスク（HIT）を決め、
２＞仕事を受託する側の候補者が必要なスキルを持っているかを判断して仕事を発注し、
３＞その結果を見て支払いを行う
という流れとなっています。

「仕事完了日、納品する仕事の形式、仕事項目の表示方法、仕事の完了に対する報酬を含む、お客様の HIT を定めます。
完了しなければならない何百万という HIT をマーケットプレイスにロードできます。
労働力の適正を判断します。タスクを完了するのに特別なスキルが必要な場合は、ワーカーにタスクを実行させる前に、ワーカーに資格テストへの合格を要求できます。あるいは、お客様の HIT に対するワーカーの適正を判断するために、ワーカーが過去に正しく仕事を完了した最低パーセンテージまたは前の最低 HIT 数を要求することができます。
質の高い仕事だけに支払います。仕事項目が完了したら、完了した仕事を確認し、それらを受け入れるか拒否することができます。お客様が受け入れた仕事のみに支払いを行います。
完了した仕事を受け取ります。ウェブサービス API を使用して、開発者は完了した仕事を取得し、それらのアプリケーションに直接統合することができます。」
https://aws.amazon.com/jp/mturk/details/

評価方法などをみると、アマゾンの現在のサービスに使われている技術やノウハウが転用されていることが伺えます。
実際、アマゾンはこのサービスの説明の中で、以下のように自社内で使用していた技術が元になっていることをうたっています。

「Amazon Mechanical Turk は元々、Amazon で人間の判断や知性を必要とする内部データ処理の問題を解決するために発案されたものです。ほどなくこれが他に類を見ない、きわめて有用な仕組みであることがわかったので、サービスとして一般公開することにしました。」
https://aws.amazon.com/jp/mturk/faqs/

●　自社の「知的資産」の本質から、異なる市場の開拓や既存顧客の新規ニーズ掘り起しに繋げる

上記のサービスは、アマゾンの「ＡＩと人の判断の融合」、「ユーザーの購入前、購入後の評価の収集とリコメンド機能等への活用」という自社の既存ビジネスでの「知的資産」をネット上での労働市場のマッチングビジネスに転用したものと言えるかと思います。

既存の自社ビジネスの知的資産の本質（顧客にどんな価値を提供しているのか？、自社の強み＝お客様が自社を選ぶ理由の本質は何で、そこに自社の知的資産はどのように貢献しているのか）を考え、その本質的な強み、価値をＡＩのような新しい技術やサービスと結びつけると、自社の強みを活かした新規事業を見つけるのに役立つと考える次第です。

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