ＡＩの作る情報は誰のもの？（データの利用権限に関する契約ガイドライン）

●　知的財産推進計画２０１７

ＡＩ・ＩｏＴの利用が進むに連れて、「データ」の重要性が高まっていることは異論のないところかと思います。

その中で、ＡＩ・ＩｏＴにかかわるデータの取り扱い、特に商取引において、知的財産関連の契約面からの検討が、内閣府の知的財産戦略本部で検討されてきました。

（引用は「」でくくります。　改行は筆者挿入、以下同様）
以下にその主な論点を記載します。

●データの利活用促進のための知財制度の在り方について
データ利用に関する契約の支援
健全なデータ流通基盤の構築
公正な競争秩序の確保
利活用促進のための制限のある権利の検討

●ＡＩの作成・利活用促進のための知財制度の在り方について
学習用データの作成の促進に関する環境整備
学習済みモデルの適切な保護と利活用促進
ＡＩ生成物に関する具体的な事例の継続的な把握
ＡＩのプログラムの知財制度上の在り方
ＡＩ生成物の知財制度上の在り方

そしてこれらの検討を踏まえて、２０１７年５月１９日には、知的財産推進計画２０１７が策定・公表されています。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20170516.pdf

この推進計画については、
「知的財産推進計画２０１７にみる今後のＡＩ活用施策の方向」
https://wp.me/p8EI7Z-89　でも取り上げましたが、

この計画では、イノベーションの創出という課題の中で、

「現時点では、法規制による保護では不足で、契約での対応が必要」と結論づけ、その対応として、
「IoT推進コンソーシアムデータ流通促進ワーキンググループ」による
「データの利用権限に関する契約ガイドラインver1.0」が2017年５月３０日に公表されました。

●　「データの利用権限に関する契約ガイドラインver1.0」の構成

以下に上記ガイドラインの構成を記載いたします。

１．基本的な考え方 ：データが広く利活用に供される観点およびケース毎に公平・適正に利用権限を定める観点から記載（データの保有者の権利保護よりも活用促進に軸足を置いているイメージ）

２．契約前段階の合意形成プロセスと利用権限の定め方 ：各種取引を行うに当たり、取引の対象となった目的物等からデータの創出が想定される場合には、あらかじめ当事者間で協議し、データの利用権限を明確に定めておくことが望ましいとの観点から、下図の合意プロセスの各段階について記載

３．契約における規定事項等：条項案の構成として、定義、データの利用権限の配分、免責、継続的創出に対する非保証、利用条件等、事前同意、分担金の支払い、関係者が複数の場合の処理、データの提供等、データの形式、データの秘密管理、共同利用データに関する取扱い、対象データの変更、契約期間中におけるデータの利用権限の取決め、契約終了時のデータの取扱い、その他の各項目毎に契約のポイントを記載

●　データ取引と知的資産経営

上述のように、現時点では、ＡＩ、ビッグデータに関して法制度による保護は後手に回っており、ビジネスの当事者間での契約で対応することが求められている状況です。

その中で、データの取引相手と自分の目的をお互いに明確化して共有することで、Win-Winの関係を作る事が必要となります。

そして、データ自身も知的資産ですが、Win-Winの関係自身が重要な知的資産（関係資産）であるは商取引一般と同じくデータ取引においても忘れてはならない視点かと思います。

また、今までの記事でも紹介してきましたが、中小企業も利用できるＡＩ・ＩｏＴ絡みのサービスは少しづつ出てきています。
しかし、取引先などとの交渉・契約の際に、データを自社の知的資産として保護・活用を意識し、さらにそれを実践することは大変むずかしいですね。

ＡＩ・ビッグデータを利用できる人材（人的資産）を社内で育成することは、中々困難ですので、まずは外部の専門家や行政の支援を活用することが現実的かと思います。
このように、データの取引先とのWinWin-Winの関係、そして外部専門家との関係という、関係資産の構築の視点から知的資産経営を適用していくことが、ＡＩ・ＩｏＴ活用の第一歩ではないかと考える次第です。

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