キャッシュレス化の進展にみる、複数の価値の組み合わせ
【今日のポイント】
電子マネーやサブスクリプションなどのオンラン決済を含めて、キャッシュレス化は着実に進んでいると感じますが、
顧客と自社の行動フローの各プロセスごとにどのような価値が生まれ、どうやってその価値を組み合わせるかを検討する事は、費用対効果やリスク想定などの面からも重要と考える次第です。
【目次】
1.最近のキャッシュレス決済の動向
2.キャシュレス化の目的と効果を、自社や顧客など関係者のフローに沿って、各プロセスでの提供価値の視点から考える
自分自身の購買行動や、自分の周りを見ても、キャッシュレス決済の利用は電子マネーなども含めて着実に増えていると感じますが、
最近の動向に関する記事をいくつかご紹介したいと思います。
● 2021年のキャッシュレス決済比率を算出しました
2022/6/1に、経済産業省は表記のプレスリリースを公表しました。
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220601002/20220601002.html
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)
『2021年のキャッシュレス決済比率は30%を超えて堅調に上昇し、32.5%となりました。
その内訳は、クレジットカードが27.7%、デビットカードが0.92%、電子マネーが2.0%、コード決済が1.8%でした。』
⇒キャッシュレス決済の普及促進の施策(特に中小企業向け)については、経済産業省が2020年度から2021年度にかけて、
「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」
を設置して検討を行っていましたが、
2022/3/22に検討結果の取りまとめを発表しています。
検討会のURL: https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_payment/
とりまとめ掲載ページ:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_payment/20220318_report.html
とりまとめ(概要):https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_payment/pdf/20220318_3.pdf
(以下は、上記概要の冒頭からの引用です)
『・ キャッシュレス・ポイント還元事業の成果により、中小店舗に一定程度キャッシュレス決済が広がった。
・ 他方、加盟店手数料の負担が重いことや、キャッシュレス決済導入のメリットが見えづらいこと等が更なる普及の課題として挙げられている。
・ 本検討会では、キャッシュレスのメリット・デメリットを定量的に評価し、社会・加盟店・消費者にとってのキャッシュレス決済のメリットの見える化と、加盟店・消費者両面への周知・広報により、キャッシュレス決済の更なる普及を目指す。
・ 令和3年度は、クレジットカード等のコスト構造分析の詳細化やコスト低減に向けた取組みの検討、キャッシュレス決済の更なる推進の社会的意義の検証、キャッシュレス決済導入の店舗にとってのメリットの定量化・見える化を実施した。』
導入の障害対応として、手数料などのコスト構造の改革を含めたコスト低減や、キャッシュレスの利便性の向上と周知だけでなく、そこに非接触化や得られるデジタルデータの活用など、いかに付加価値を可視化して、実際の活用に繋げられるかが課題と感じた次第です。
● 集金業務のキャッシュレス化・DX化を実現するFintech×SaaSプラットフォーム「enpay(エンペイ)」が、保護者向けキャッシュレス化リクエストページを開設
2022/6/8に、集金業務のキャッシュレス化・DX化を実現するFintech×SaaSプラットフォーム「enpay(エンペイ)」を提供する株式会社エンペイは表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000076355.html
『■「保護者向けキャッシュレス化リクエストページ」開設の目的
保護者向けキャッシュレス化リクエストページの開設により、「お金を集めて、管理する」という集金のフローにおいて、「受け取る側(教育施設スタッフ)」だけではなく、「支払う側(保護者)」のキャッシュレス・ペーパーレス化のニーズも汲み取っていきたいと考えます。
これまで顕在化しにくかった「支払う側(保護者)」の声を反映する“場作り”にも貢献しながら、煩雑な集金作業を簡単・確実に完了させる集金DXを推進します。』
⇒料金の支払いに関わる全ての関係者に目配りし、そのニーズを汲み上げる事で、新たなサービスを開発する例として参考になると感じる次第です。
● 行政のクレジットカードや電子マネー払いなどの対応について
デジタル庁の以下のサイトでは、国への各種納付に関して、クレジットカードや電子マネーの利用に関する法律案の提出をリリースしています。
『情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案
本法律案は、令和4(2022)年2月8日、第208回国会(通常国会)に提出されました。』
https://www.digital.go.jp/laws/yX0hPui5/
本法案は、令和4年(2022年)4月27日に成立し、公布日は令和4年(2022年)5月9日 、施行日は公布日から6月以内(一部の内容を除く。)となっています。
本法案の概要はこちら。
行政のスマート化も進み始めている事が窺えるかと思います。
また、ここで取得されたデータの利用方法も要注目と考える次第です。
また、現在多くの業界で導入が進んでいる「サブスクリプションモデル」も現金不要のオンライン決済を進める手段の一つであり、キャッシュレス化を促進するものと考える次第です。
2.キャシュレス化の目的と効果を、自社や顧客など関係者のフローに沿って、各プロセスでの提供価値の視点から考える
上記のように、民間、行政の各分野でキャッシュレス化やそのための法改正などの環境整備が進んでいますが、
自社でキャッシュレス化を行う際には、その目的と効果をある程度広げて考え、設計する事が、費用対効果や生じ得るリスク・課題の想定のためにも重要となってきます。
そのためには、現状およびキャッシュレス化後の顧客や取引先の行動フローと自社の業務フローの各プロセスの変化を検討しておく事が必要となってきます。
以下は、キャッシュレス化の例ではありませんが、各プロセスの可視化とその結果の利用という点では参考になるかと思います。
● 全日本物流改善事例大会2022「優秀物流改善賞」を受賞
~見える化ソリューションとWMSを利用した生産性の向上施策~
2022/6/24に株式会社NTTロジスコ( https://www.nttlogisco.com )は、表記のプレスリリースを公表しました。
https://www.nttlogisco.com/info/2022/2029/
『授賞理由
見える化ソリューション(稼働管理システム)の導入により、抽出した客観的なデータをもとに作業者が主体となって、動画検証や議論を重ね、作業の標準化やレイアウトの改善活動に取り組み、生産性を向上を実現させた点を評価いただき、受賞にいたりました。』
⇒分野を問わず、モノやお金の見える化が、プロセスの課題やニーズなどの情報の見える化と共有による改善・改革につながることを改めて感じます。
● 「T-iDigitalRField」の施工管理および安全管理機能を拡張
2022/4/26に、大成建設株式会社と株式会社インフォキューブLAFLAは、表記のプレスリリースを公表しました。
https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220426_8777.html
『施工中に取得した膨大なデジタルデータを活用して、効率的に工事関係者間での情報共有を支援するシステム「T-iDigital Field」※1の機能拡張を行いました。今回追加した機能は、建設現場の施工進捗管理および建機と作業員などのリアルタイム位置情報を地図化して現場での安全性を把握・管理する施工支援アプリケーションです。
※1 T-iDigital Field:
T-iDigital Fieldは、CPS(Cyber-Physical Systems) の概念に基づき、施工中に得られる膨大な各種映像やセンサによるデジタルデータなどを仮想空間上に集積・統合して、デジタルツインを形成するなど高付加価値な情報として工事関係者間へフィードバックするとともに、蓄積したデータをAIや多変量分析などにより、最適な解決策を導き出すことで、現場管理の支援、生産性の向上を目的として技術開発を進めている統合プラットフォーム。
この技術の適用により、工事関係者は現場管理の煩雑さから解放されるとともに、建設作業の遠隔操作や自動化が効果的に機能することでさらなる施工効率や安全性の向上などの新たな付加価値が創出され、これまでの建設業における常識の著しい変革につながることが期待される。』
⇒AIなどの分析・解析技術に加えて、「リアルな現場」と言うデータ源を持つ重要性も同時に感じた次第です。
このように、各プロセスでの課題を可視化するためのデジタル情報取得の手段を、キャッシュレス化の目的の一つに取り入れておく事は、決済システムの選択や、業務フローの改革を進める上でも、費用対効果の向上や導入後のシステムの改善の効率化など複数の面から必要性を増してくるものと思います。
上記のような、各プロセス毎の可視化とそこでの社内外向け提供価値(前後のプロセスなどのフロー全体に対する価値も含む)を考えるうえで、
経営デザインシートや知的資産経営報告書の価値創造ストーリーや、そこで洗い出された必要な社内外の経営資源は、
各プロセスの検討時の参考情報としても、全体最適を確保するための各プロセスと事業フロー全体の整合性を提供価値から検証するツールとしても利用できるものと、活用の検討をお勧めする次第です。
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