シャープのプラットフォーム開放にみる機器側からのエコシステム競争

【今日のポイント】

スマートスピーカーなどから、スマートホーム分野に進出しているアマゾンやグーグル。

シャープなどは、スマート家電側からプラットフォームを構築し、更にそれを開放して他社サービスと連携することでエコシステムを構築しようとしています。

モビリティも含めて多様な業界がスマートホームやスマートシティ分野に参入して、エコシステム構築競争を繰り広げています。

● AIoT家電が、「COCORO+」サービスや暮らしに役立つ他社サービスと連携する 新スマートホームサービス「COCORO HOME」を開始

2019/5/20 シャープ株式会社は、表記のリリースを公表しました。

(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)

 

『シャープは、“人に寄り添うIoT=AIoT(AI×IoT)”を事業ビジョンの一つに掲げ、クラウドと接続したAIoT家電が、お客様の好みや習慣を学習して、最適な運転やアドバイスをしてくれる生活サービス「COCORO+」を拡充してまいりました。

 このたび、女性就業率の上昇や少子高齢化の進展といった社会背景を受け、各種「COCORO+」サービスを互いに連携させ、さらには暮らしに役立つ他社サービスとも連携する、新スマートホームサービス「COCORO HOME」を開始します。

 また、当社の新スマートホームサービス「COCORO HOME」のプラットフォームを開放し、セコム株式会社、KDDI株式会社、関西電力株式会社をはじめ、他社との連携を積極的に進めることにより、留守宅の子どもや離れて暮らす家族の見守り、食材の宅配、家事代行、家電メンテナンスなどの生活サービスを順次開始・拡充し、快適でココロつながるスマートライフを提案してまいります。』

AI・IoTを活用した生活サービス「COCORO+」の各種サービスを連携させ、更に【他社サービス共連携する】スマートホームサービス「COCORO HOME」を開始するというもの。

更に、この「COCORO HOME」のプラットフォームを開放して他社サービスとの連携による生活サービスの拡充を図っていくと指定舞す。

新サービスのイメージ図はこちら

家電など、利用機器側からのプラットフォーム戦略。アマゾンやグーグルとの棲み分け方が気になりますね

● スマートホームという「戦場(市場)」

スマートホームは以前から、パナソニックや三菱電機などのHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)のメーカーや、ハウスメーカーなども手がけていますが、

今回の記事などから、昨今のAI・IoT、通信の進展によって、また新しい局面に入ってきたかとの印象を受けました。

「Amazon Echo」「Google Home」などスマートスピーカーから入ってきているアマゾンやグーグルと、利用機器側から入ってきているシャープやパナソニック、家(建物)から入ってくるハウスメーカーなどがそれぞれの立場を起点にしてエコシステムの構築を競っていますが、

ユーザーへの提供価値の流れという点から、どのボトルネックを自社で抑えるか、別のボトルネックを押さえるために誰と提携するかという点で各社とも知恵を絞っていると感じます。

シャープの場合は、2019/5/22にリリースしたクラウドHEMSサービス「COCORO ENERGY」で、

AIで蓄電池の充電を賢く制御し、太陽光発電システムの余剰電力を効率的に活用、スマートフォンから電気錠やガス給湯器などの遠隔操作も可能にすると謳っています。

ここに来て、スマートホーム、スマートハウス、あるいはスマートシティなどの「スマート×場所(家、街)」という市場が再度注目を浴びています。

『クラウドHEMSサービス「COCORO ENERGY」の提供を開始』

以前のスマートシティは、行政、エネルギー会社やデベロッパーなどが主体となって進めていましたが、今後はMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などの交通サービスや通信業界などのプレーヤー側が積極的にエコシステムの構築を進めて来ており、ますます誰とどう組むのかという戦略が重要になってきていると感じます。

『MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス) について』
国土交通省 国土交通研究所

中小企業においても、例えば配送サービスやECなどが自社事業に及ぼす影響は大きいため、上記のようなスマートホーム、スマートシティなどの分野にも目配りをしておくことは今後の事業環境を考える上で必要になってきていると考える次第です。

● 本ブログの関連トピックス

・『HEMS対スマートメーターの競争に見る割り切りと見極め

いわゆるスマートホームと呼ばれるような家のIoTにおいて、HEMS同士だけでなく、HEMS+WiFiと、スマートメーター+AI(通信接続としては、低電力の無線通信であるLow Power Wide Areaなど)の競争が始まっていますが、

各機器の電力消費の把握においてどのくらいの精度が要求されるのか、どこまでコストをかける価値があるのかという費用対効果の視点が重要になってきます。

社会(ユーザー)が求めるニーズが現在はどの程度で今後どう変化していくのか、そのスピードと事業展開(技術開発)のタイミングが合わないと競争には勝つことは難しいため、スピード感も含めて、自社ユーザーが本当に価値を感じるところに集中するという割り切りも必要となってきます。

 

・『富士通の戦略解説にみる自社が押さえるべきボトルネック

バリューチェーン、エコシステムが複雑化する中では、このボトルネックも一箇所ではなく複数に増えてくるかと思います。

従って、中小企業でも小さい規模で押さえられる部分が出てくる可能性があり、それを押さえる技術力やサービス力などがコア事業のために強化すべき知的資産となるものと考える次第です。

 

・『アイラ株式会社のサービスポータル基盤および地域生活支援ポータルサービスにみる「アマゾン以外のエコシステムの可能性

自社の知的資産と他社の知的資産をただ組み合わせるのではなく、自社の強みを活かしつつ、複数の企業を選択できるポジショニングを取ることで、自社のエコシステムの構築につなげていく可能性を示しているという意味でも興味深い事例です。

 

・『プラットフォームビジネスにみるエコシステム間の競争

楽天とアマゾンの競争、ESPNなどのストリーミングサービス企業の競争。

あらゆる市場で異業種のプレーヤーが増え、顧客も含めて各プレーヤーのニーズも多様化する中で、一社で全てのニーズを満たすことは不可能になっているため、

いかに自分が必要なエコシステムを形成、あるいは見つけて参加するか、その中で有利な位置につけるかが重要になっています。

 

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