米国とメキシコのトマト関税にみる他国の法規制の影響
【今日のポイント】
米国とメキシコ間のトマトを巡る関税問題。
米国農家の保護が強化される反面、価格の高騰を通じて消費者や、メキシコに生産拠点を持つ米国企業にも影響が及んできます。
海外の2国間同士の貿易問題が、他国にも影響を及ぼす時代、海外動向にもアンテナを張る必要が増していることが窺われます。
2019/5/7のロイターに、表記の記事が掲載されていました。
このトピックスは、2019/5/21 の1日5分ビジネス英語でも
『米国とメキシコの食料戦争』
という題で紹介されていましたが、今後米国以外にも影響が及ぶ可能性が想定されます。
● 2国回貿易競争が他国に及ぼす影響の拡大
上記の記事からは、「2国回貿易競争が他国に及ぼす影響の拡大」が予想されるかと思います。
若干古い記事ですが、2012年の世界のトマト生産市場で、メキシコは生産量のシェアは2%と10位(1位は中国の31%)ですが、輸出量のシェアでは21%と1位を占めています。
このことから、トマトはメキシコにとって輸出の割合が極めて大きな生産物であることが見て取れます。
『メキシコ産トマト生産および対日輸出状況について』独立行政法人農畜産業振興機構
今回の関税で一時的にせよ、米国への輸出が減少すれば、メキシコ産の安いトマトが、日本を含む他国に振り分けられ、その国の農業に影響を及ぼすと予想できます。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
また、今回の協定終了について、メキシコのロペスオブラドール大統領は、米国への移民抑制に取り組むメキシコの努力に逆行すると批判したとの記事もありましたが、上記のAlicの解説記事にも、
『メキシコでは、特にトマトを対象にして、このような施設栽培を中心とする施設農業技術を、農村部や貧困地域の社会開発の一環として推進している。
(中略)
シナロア州などでは、合併事業、資本参加などの形で、米国資本が入っており、米国企業と連携してビジネスを行う企業も存在し、農村で多くの雇用を生み出している』
と、メキシコのトマト生産に進出している米国資本やメキシコの雇用、ひいては移民の増減にも大きな影響を与えることが予想されます。
2019/5/9のロイター
『米トマト輸入関税は移民抑制策に逆行、メキシコ大統領が批判Reuters Staff』
米中貿易戦争など、2国間の貿易の状況が、当該国だけでなく、世界の市場や雇用などにも影響を及ぼすグローバルな時代であることを改めて感じた次第です。
●本ブログの関連トピックス
・『仮想通貨への各国の反応にみる「規制の壁」の種類』
ファーウェイのブロックチェーンを用いた知的財産保護システム公開と、仮想通貨に対する中国政府の反応に関する記事。
通貨や課税のように、国家権力の源泉に関連するような規制の場合は、その壁を乗り越える事が困難なだけでなく、その技術やビジネスモデルにメリットがあれば、国自身が乗り出してくる、つまり国家が競争相手になるという局面を迎えることを想定する必要が出てきます。
・『法規制の影響の予測方法ー「空のタクシー」政策にみるエネルギー自由化との共通点』
空とぶタクシーやドローンの普及における法規制の問題。
インフラ保守へのドローン利用の様な生産性向上の取り組み、変動料金制による市場原理導入と環境問題や混雑解消などの社会課題への対応、新しいサービス創出の促進などは、エネルギー自由化による業界変化に通じるものがありますね。
このように、自由化が進んでいる業界の例をみることは、今後の規制緩和の進み方や課題を予測する上で有効なことは間違いないかと思います。
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