日本の防災新幹線にみる、弱みを強みに変えるためのトライ・アンド・エラーの重要性
【今日のポイント】
自然災害が多いという、日本の弱みを克服し、安全・安心の提供を図る、東海道新幹線の新型車両。
事業環境を含めて自社の弱みを強みに変えるためのトライ・アンド・エラーを効率的に進めるためにも、リアルな実験場や規制緩和などの開発・検証インフラ整備に加えて、自社の強み・弱みとその変化を可視化するツールの整備とその利用も重要と考える次第です。
● 東海道新幹線・新型車両「N700S」デビューに伴う宣伝展開および「Supremeコラボレーション」について
2020/6/24に、JR東海は、表記のリリースを公表しました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『2020年7月1日、東海道新幹線・新型車両「N700S」がデビューします。
N700Sのデビューにあたり、宣伝展開等の各種取組みを実施します。
以下の取組みは、全て特設サイト(https://recommend.jr-central.co.jp/n700s/)
でご確認いただけます。』
この特設サイトを見ると、
『“S”は“Supreme(最高の)”の頭文字です。
“最高の”新幹線を追い求め、技術開発の粋を結集した車両。私たちが“S”に込めた意思は、安全性、安定性、快適性、環境性能その全てを最高レベルでお客様に提供することです。
ビジネス、旅行など多様なシーンにおいて、上質な移動空間をご提供いたします。』
と、快適性や利便性だけでなく、防災など安全・安定などにも注力して開発したことが窺えます。
中でも、高速鉄道では世界初のバッテリー自走システム(リチウムイオンバッテリー採用)により、自然災害発生時などの長時間停電時においても、安全な場所まで自力走行を可能にするなど、自然災害の多い、そして最近さらに増加傾向にある日本の現状に対応している点も要注目と感じます。
● ユースケースの共創・社会実装にむけた「ローカル5Gオープンラボ」のリニューアルについて
2020/7/30にNTT東日本は表記のリリースを公表しました。
『今後は、さらに多くのパートナー様との共創活動を促進するため、ローカル5Gシステムのラインナップ拡大(マルチベンダ化、他周波数への対応)や、圃場など一次産業用途に対応する屋外検証環境を提供し、ローカル5Gを活用した一層のイノベーションの創出に取り組んでまいります。』
機器の持ち込みの可能な約100平方メートルのクローズな検証スペースを提供し、リアルに近い環境での検証を図っています。
また、
『AIやIoT技術の社会実装に向けた共同実証環境「スマートイノベーションラボ」※2との連携が可能※2スマートイノベーションラボ ホームページ:https://business.ntt-east.co.jp/service/sil/』
と、社会実証に至るまでの開発・検証環境をワンストップで提供することを目指しています。
この様な、リアルの検証のインフラは、規制のサンドボックスのような特区などと同様に、多くの業界や業務でオンライン化が進む中でも、重要性を維持するものと考える次第です。
● 我が国の弱みや逆境を強みに変える、実験式の国際競争戦略の重要性が相対的に拡大する
上記の記事からは、
「我が国の弱みや逆境を強みに変える、実験式の国際競争戦略の重要性が相対的に拡大する」様子が窺えるかと思います。
新幹線の記事からは、「長距離輸送インフラ網の多重化による天災等のリスク回避や国際間ハブ競争力の強化と新技術・サービスの開発・実用化促進」が、
高速化だけでなくビッグデータの連携と活用、移動時間の価値の向上など目指した開発を進めることにより、他国が進めているような通信インフラの整備と合わせた交通網でのビッグデータ利用など、交通システムの進化と輸出振興に対抗しようという動きとして進められている事を感じましたが、
交通インフラに限らず、例えば、
『「知的財産推進計画2020」にみる、「新型コロナ対応の仮設と検証のサイクル」』
でご紹介した、
2020/5/27に公表された『知的財産推進計画2020』では、
『ニュー・ノーマルに向けた知財戦略』
と題して、
筆頭に新型コロナ対応を「実証実験と見立てる」としている点が非常に目を惹くかと思います。
同計画の概要はこちら
上記のような各国にまたがる事態への対応をみても、仮説⇒検証⇒再仮説⇒再検証のトライ・アンド・エラーのサイクルを回すという視点が、政府の施策レベルでも重要視される可能性が窺えるかと思います。
背景には、新型コロナという想定外の事象が世界規模で生じていること、
また、東日本大震災などの大規模災害も含めて、決まったレールの上を走るということが実態としてできないことが明確になってきたことなども挙げられるかと考えています。
新型コロナ対応を始めとして、企業レベルでもVUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))といわれる複雑かつ不確実性が高まっている現在、
いかに我が国の天災などの弱みを、従来我が国が持っている、高品質や信頼性などの強みと組み合わせて強みに変えるために、
仮説と検証のサイクルを他者より早く、低コストで効率よく回していくかが問われていると改めて感じます。
官民を問わず、想定外の事象が生じる中での仮説と検証のサイクルを回し続ける仕組み自体とそこで蓄積される知見自体が、非常に貴重な日本の資源であり、海外インフラ輸出戦略にも活用されていく事を期待するものです。
『「インフラ海外展開懇談会」の中間取りまとめ(電力・エネルギー)を行いました』
2020/5/21の経済産業省リリース。
●自社の目の前の課題のにおける強味と弱味とビジョンから逆算した中長期の計画における強みと弱みの変化の整合をとっていく
新型コロナ対応では、オンライン化等の推進が課題となっていますが、これは、今まで地域など狭い商圏で事業を行ってきた企業にとっては、必要性を感じていないものであり、以下のアンケート調査結果にもみるように、テレワークなどの導入が進んでいない一因となっているかと思います。
『デル テクノロジーズ、中小企業のテレワーク導入状況に関する調査結果を発表』
2020/7/29のデル・テクノロジーズ株式会社プレスリリース記事。
調査概要を同リリースから抜粋します。
『業種別では、テレワークの導入が最も進んでいるのは「情報通信業(69.2%)」、続いて「金融・保険業(53.7%)」となりました。一方、「導入しておらず、検討もしてない」と回答した47.2%の業種別の内訳は、「建設業(64.8%)」、「製造業(58.5%)」が上位となり、業種によってテレワークの導入率に大きな差が出る結果となりました。』
『テレワークを導入しない理由については、「業種として難しい」が7割を超え、業種によりテレワークの実現が困難である状況が顕著になりました。』
『従業員数別では、従業員数が少ないほどテレワークへの関心度合いが低くなる傾向が見られました。』
現場を持っていたり、商圏が地域で閉じている様な業種や少人数規模の企業では導入が進んでいませんが、その様な企業ほど、リアルな作業やコミュニケーションに依存している分、新型コロナに自社や取引先が感染した際の影響は大きいのではと感じています。
上記のような、新型コロナという環境変化により、「地域密着型」などの「強みが弱みに変化」する可能性が高い中では、
テレワーク等のオンライン化などの対応も進める一方で、
中長期には、やはり「地域密着型」という従来の強みや提供価値も自社の将来像からみて必要となる場合も多いことが想定されます。
短期と中長期それぞれの課題・強みや弱みの整合性を取っていく一般的な方法としては、「ネット(オンライン)とリアルの併用」ということになるかと思いますが、
その割合、どのプロセスはオンライン化するのか、リアルなコミュニケーションなどを維持すべき部分、併用の割合とそれを変化させて行くステップや時期は、各社それぞれで変わるものですので、
自社の将来像とそこで必要な経営資源(特に人材と取引先)、現状と短期の対応およびそこで必要な経営資源を可視化し、自社の将来像との連動性、整合性をとっていく事が必要となります。
その方法として、例えば、経営デザインシートの現状と将来像の間に、もう1段階「新型コロナ対応」を入れ、
将来像の環境変化に「ウイズコロナ」を入れて、3つの段階ごとにおける自社の経営資源や強み・弱みを可視化し、社内外と共有して対応を検討していくことも有効な方法となり得るものと、検討をお勧めする次第です。
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