映画「パラサイト」の労働契約順守に考える、コンプライアンスと企業評価における知的資産経営の役割
【今日のポイント】
米アカデミーで4冠に輝いた「パラサイト 半地下の家族」はその勤労基準の遵守の面でも注目を浴びています。
業界慣行の先を行き、従業員満足度と顧客満足度を上げるためのきっかけづくりとしては、まず業界慣行と他業界や世の中の動向の比較も必要であり、そこでは経営デザインシートや知的資産経営報告書の作成も有効なきっかけになるものと考える次第です。
● 米アカデミー4冠「パラサイト」、ポン・ジュノ監督の“勤労基準の順守”も原動力に–韓国映画
2020/2/10のワウコリアに表記の記事が掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『ポン・ジュノ監督の映画「パラサイト 半地下の家族」が現地時間9日、「第92回 アカデミー賞」で作品賞を含む全4部門でトロフィーを手にした。
注目が集まるなか、映画が「標準勤労契約書」を順守していたという点にもフォーカスがあたっている。
「標準勤労契約書」は労働現場で書面勤労契約の原則を拡散・定着させるために、勤労基準法 第17条に則って使用者と勤労者間で必ず交わす契約書だ。
勤労基準法 第17条は使用者が勤労契約を締結する際に、勤労者に賃金・勤労時間などを明記する必要があり、勤労契約に関する事項が明記された書面を勤労者に交付することが義務付けられている。
使用者がこれに違反すると、500万ウォン以下の罰金が科せられる。』
このようなコンプライアンス遵守が、作品や関係者の評価にも繋がるという点でも興味深いですね。
● 業界・企業の慣行と一歩先ゆくコンプライアンス
同記事では、標準勤労契約書法は、映画業界で浸透しつつあると報じていますが、それでも、調査結果からは、映画スタッフの約半数は契約の経験がないと回答しています。
その中での、今回の「パラサイト」への評価は、規制の遵守だけでなく業界の慣行などを見直して、ES(従業員満足度)を向上させる事が、事業の成果にもつながるという好例ではないかと思います。
知的資産経営の面から見ると、
俳優、映画作成スタッフという「人的資産」への配慮が、企業や商品の評価向上というブランドなどの「構造資産」や、顧客(観客)や取引先との信頼関係という「関係資産」の構築・強化にもつながっています。
同記事では、
『ポン・ジュノ監督は同じ記者会見で「『パラサイト』だけで特別に「標準勤労契約書」の作成をしていたわけではなく、2~3年前から映画スタッフの給与などを正しく整備するようになった」と話した。』
と業界の中でも、パラサイトの監督は映画スタッフの処遇・環境に配慮していたことが語られています。
このように、業界の横並びから一歩も二歩も先に行く事で、特に構造資産としての仕組みの強化は生産性向上にも好影響を及ぼし、差別化と企業競争力強化にもつながっていきます。
とはいえ、「業界の慣行」が世の中、他業界とは異なることを意識すること自体、なかなか難しく、その慣行を見直し、改善を実行するには、お手本やロールモデルが必要になってくることが予想できます。
まずは、自社の属する業界の外にも目を向けて、商取引、労働環境などの見直しを図る広い視野が必要であり、そのきっかけとして、知的資産経営報告書や経営デザインシートの作成も役に立つと考える次第です。
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