テクニクスのオフィスの音響による生産性向上にみる、極めた技術の用途展開の価値
【今日のポイント】
高級オーディオなどに用いられる音響技術を、ワークプレースの環境向上に適用した事や、減塩醤油の開発秘話。
自社が極めた技術などの強みを他の市場に転用するうえで、強みと弱みの双方を要素分解し、整理することの重要性を示唆する事例かと思います。
その強み、弱みの整理と用途開発のツールとして、経営デザインシート等の知的資産経営の手法も利用検討をお勧めする次第です。
● 健康経営ソリューション『COMORE BIZ』においてテクニクスを採用した、緑と音による空間ソリューションの提供を開始
2020/7/16にパソナ・パナソニック ビジネスサービス株式会とパナソニック株式会社は表記のリリースを公表しました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『パソナ・パナソニック ビジネスサービス株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:青山光洋、以下、PBS)とパナソニック株式会社(本社:大阪府門真市、代表取締役社長:津賀一宏、以下、パナソニック)は、PBSが提供する健康経営ソリューション「COMORE BIZ」(以下、コモレビズ)において、パナソニックの高級オーディオブランド「テクニクス」の音響システムを採用した、緑と音による空間ソリューションを共同で開発しました。コモレビズの新たな展開として7月16日(木)より販売を開始します。』
(中略)
『その一例として、テクニクスのサウンドシステムを格納したボックスの上部に、コモレビズの最適な緑視率(※1)に設計された植物を配した、オリジナルビルトインプランターを開発。
テクニクスの高精度チューニング技術を駆使することで、スピーカー本体は空間に溶け込みながらも天井から空間全体を包み込むような音場を形成します。
独自収音・編集した自然環境音のハイレゾ音源(※2)をお客様のニーズに応じて組み合わせ、音源ごとに指向性を制御しながら高音質で再生します。
朝には上方から小鳥のさえずりが、夕方には下方から虫の鳴き声が聴こえるなど、まるで自然環境にいるような時間の流れ、空間の広がり、開放感、心地よさを提供します。
※1:緑視率とは:建築学会で使われる「緑視率」の定義は、「人の視界に占める緑の割合で、緑の多さを表す指標」とされています』
複数の人間に、共通の効果を提供する手法や、音楽という感性主体の商品技術の健康経営®や生産性向上などの用途への展開は、新規市場開拓例としても要注目ですね。
音楽で極めた音響技術を空間毎のカスタマイズにより、家屋全体を同一の音楽空間に変える点も含めて、量から質への転換が新規の用途と市場を生み出す事例でもあるかと思います。
※>「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
なお、2020/8/4には、上記リリース時に開催した、コモレビズWebセミナー2020「バイオフィリックデザイン 音と緑によるワークプレースでのWELL-BEINGの実現」のレポートを公開しています。
『【お知らせ】「バイオフィリックデザイン 音と緑によるワークプレースでのWELL-BEINGの実現」開催レポート公開しました。』
● 減塩醤油の開発物語
こちらは分野がガラリと変わりますが、キッキーマンは、自社サイトで、自社の減塩醤油開発の経緯を以下の様に記載しています。
『50年以上前に、入院中の患者さんの塩分摂取量を抑えるために開発された「保健しょうゆ」。
それがキッコーマンの「減塩しょうゆ」のはじまりでした。
今では、「減塩しょうゆ」を通じて、一般のお客様にも食と健康の可能性を広げています。』
同業他社では、2015/7/21の流通ニュースが、ヤマサ醤油と九州大学の減塩ポン酢の開発を報じています。
『減塩調味料は、塩味を補うために塩化カリウムを使用することも多く、独特のえぐみが強く出てしまうことがあったが、酢酸(醸造酢に含まれる香気成分)、HEMF(味噌や醤油などの発酵食品に含まれる香気成分)、メチオナール(芋、醤油等に含まれる香気成分)、イソアミルアルコール(果実、野菜、醤油などに含まれる香気成分)を加えることで、しょうゆの香り豊かで、減塩しても満足できる味に仕上げたという。』
この様に、醤油の塩分低減と言っても、各社が色々工夫を凝らし、年月をかけて開発してきた事が窺われます。
● 極めた技術と、流通などによる用途拡大
上記のオフィス環境に関する記事は、音響技術という個人の感性や利用環境(屋内外、部屋の仕様)、使用目的などに大きく依存するニーズへのカスタマイズやビジネスとして成立するための汎用化への対応自身が、技術資産や知的資産となって、オフィスなどでの健康経営という新規用途への拡大に適用される事例と言えるかと思います。
また、減塩醤油の開発記事は、従来の醤油や、病人向けに開発してきた製造から流通までの技術、体制が一般の消費者の健康志向や行政の減塩関連指針変更への対応に適用されることで、新しい市場を生み出した事例となります。
「これだけは自信がある」と言うものを、強みの要素に分解して、それぞれの要素が別の市場に使えないかを考え、更にその強みを統合し直して、新規市場に対応するための方法を、事業提携も含めて考え、実行することが、事業環境の変化の大きな現在、自社の強みの有効活用方法として求められていることが窺えます。
上記のように、自社の強みを別の用途に適用するためには、普段から自社の強みの源泉や弱みと他社の強みや弱みを明確にし、それらの組み合わせを考えられる様に整理しておくことが必要となります。
そして、その強みの整理と組み合わせ検討のツールの一つとして、知的資産経営報告書や経営デザインシートの活用もお勧めする次第です。
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