ステーキ店ケネディの倒産と青山のデジタルラボの成功の共通点は?
● ステーキ店ケネディが破産、「いきなり!ステーキ」と明暗分かれる事に
2017年10月4日のMAG2NEWS(まぐまぐ)で、表記の記事が掲載されていました。
http://www.mag2.com/p/news/281114
ケネディの破産については、多くのメディアに出ていたので、ご存じの方も多いかと思います。
上記の記事では、破産の原因として、競合である「いきなり! ステーキ」の存在を挙げていますが、同じ視点での解説は私が読んでいるメルマガなどでも取り上げられていたので、「いきなり! ステーキ」の影響は大きかったようですね。
(引用は「」でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)
「「いきなり! ステーキ」の1番の競争優位性は「コストパフォーマンスが高い」と消費者に認識されていることです。そして、競争優位性としてもう一つ挙げられるのが「駅からのアクセスが良い」ということです。これは逆に考えると、「ケネディ」の最寄り駅からのアクセスの悪さが際立つことになります。」
上記の立地上の「いきなり! ステーキ」の優位性の理由として、
「「ケネディ」の平均席数は40~50席(座席タイプ)です。「いきなり! ステーキ」の25~35席(立ち食いタイプ)と比べて席数が多く、より広い店舗面積が必要になります。そのため、「ケネディ」は駅チカ立地で展開することが家賃の面で難しく、徒歩5分程度という不便な場所に出店せざるを得なかったと考えられます。おそらく、駅をよく利用する人でも店の存在を知らない人が多かったのではないでしょうか。
一方、「いきなり! ステーキ」はほとんどが最寄り駅から徒歩3分以内という好立地に位置しています。狭い店舗面積でも高収益を稼ぎ出せるビジネスモデルのため、家賃が高い駅チカ立地でも出店が可能です。駅からのアクセスが良いため認知度は高くなります。また、多くの人が気軽に立ち寄ることができます。」
と、立ち食い形式で座席数も少なくして、駅から徒歩3分以内の立地を確保した「いきなり! ステーキ」と座席型で広い店舗面積を必要とする「ケネディ」を比較しています。
● 青山商事、ネットと実店舗が融合した「デジタル・ラボ」を2店舗オープン
話は食事から衣服に変わりますが、
2017年9月14日、青山商事は、昨年10月の秋葉原に引き続き、
ネットと実店舗が融合した『デジタル・ラボ』を 東急プラザ蒲田と調布市仙川にオープンすると発表しました。(10月時点で既に2店ともオープンしています)
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP457192_U7A910C1000000/
上記店舗の特長として、青山商事では、
「従来型の店舗では、十分なスーツの品揃えをするために広い売り場スペースが必要ですが、この2店舗は小型店舗でありながら大型店舗並みのスーツの種類を品揃えしています。これは店内に設置したiPadや大型のタッチパネル式サイネージで、オンラインストアの在庫からサイズ選択できるので、店頭には同じ色柄のスーツのサイズ在庫をほとんど持たずに多くの品番を置くことができるためです。こうすることで、同じ型紙のブランドであれば1品番1サイズの在庫を置くだけで、その店頭在庫をゲージ見本のように使用して試着や採寸を行えます。」
と、実店舗の役割を試着とお客様へ説明に限定して、購買はネット通販を利用することで、店舗の在庫を押さえ、小型店舗でも大型店並みのライナップを備えられると説明しています。
実際に、デジタルラボの実績として、
「『デジタル・ラボ』1号店の「秋葉原電気街口店」では、この次世代型店舗の利便性を感じていただいたお客様の再来店の増加などにより、オンラインストアを利用して購入したお客様の割合が2割以上に上昇しています。」
と実店舗とネット通販の融合は効果を上げているようです。
小型店舗で立地の選択肢を広げ、有利な場所(おそらく駅そば)に展開出来るようにしているところは、「いきなり! ステーキ」を共通していますね。
● お客の購買行動のどの部分のニーズへのソリューションを改革するかを意識する
前節で述べた通り、「いきなり! ステーキ」と「青山 デジタルラボ」に共通するのは立地の成否を分ける店舗スペースを押さえることで、有利な立地への店舗展開を可能にしているところですね。
ただし、一口に店舗を小型化すると行っても、お客様の購買行動の流れでみると、
「いきなり! ステーキ」は、立ち食いによる手軽さという「使用時の価値」で差別化し
青山デジタルラボは、提供できる商品、ラインアップ自体は変えず、主に「支払い・持ち帰りの部分」で差別化し、立地条件に関する選択肢の増加を図っているという点に違いが見られます。
このように、お客の購買行動のどの部分のニーズへのソリューションを改革するかを意識することが、重要であることが見て取れるかと思います。
青山デジタルラボは、紳士服の購買行動のうち、紳士服を買おうという意思決定から試着・選択するところまでは実店舗、その後の流れはネット通販と切り分けることで、お客様に新たな選択肢を提供していますが、
知的資産経営の価値創造ストーリー作成に際して、商品だけでなく、買い方などの購買行動においても複数の流れ・選択肢を作るというのは、顧客提供価値を充実させる一つの方法かと思います。
ただし、業界における自社のポジショニングと自社の知的資産に留意して、実際にお客様への提供価値向上につながるか、慎重な検討が必要ですね。
あなたは、どのようにして自社のお客様の購買行動をサポートされているでしょうか?
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