トヨタとNTTの協業にみる、経営資源の補完関係
トヨタとNTT、「コネクティッドカー」向けICT基盤の研究開発に関する協業に合意
3月27日に、トヨタ自動車とNTTグループは、
ネットに繋がる自動車「コネックティッドカー」の普及に向けて、ICT基盤の研究開発に関する協業に合意しました。
http://newsroom.toyota.co.jp/jp/detail/15921641/
トヨタのプレスリリースによれば、協業の狙い、対象の分野、両者の役割分担は以下のとおりです。
「協業の狙い
トヨタとNTTグループは、各社が持つ技術やノウハウを共有し、クルマから得られるビッグデータを活用することによって、事故や渋滞といった社会が直面している様々な課題の解決や、お客様への新たなモビリティサービスの提供に必要となる技術の研究開発に共に取り組むことで、将来の持続可能なスマートモビリティ社会の実現をグローバルな視点を持ってめざしていく。
対象分野
1.データ収集・蓄積・分析基盤
2.IoTネットワーク・データセンター
3.次世代通信技術(5G、エッジコンピューティング)
4.AI(人工知能)を活用したエージェント
各社の役割
トヨタ
自動車のユースケースにおける知見と、車両側のデータの要件に基づき、モビリティサービスの価値創造を目指したコネクティッドカー向けのICT基盤の研究開発。
NTTグループ
・株式会社NTTデータ:社会インフラ構築実績と設計力、技術力と戦略的に強化中のグローバル対応力、また、30年に亘る大規模データの高度数理分析・解析の研究と経験を活かし、データ収集・蓄積・分析基盤に関する技術を創出。
・NTTコミュニケーションズ株式会社:グローバルに展開するICTサービス(Tier1 IPバックボーン、VPNやデータセンター)を活用し、IoTに最適な次世代グローバルインフラを創出。
・株式会社NTTドコモ:次世代の移動通信システム「5G」の標準化牽引ならびに高度な研究・技術開発の実績を活用し、5Gの自動車向けの標準化を推進すると共に、5G移動通信システムの実証実験を先導。
・NTT:エッジコンピューティング技術の研究開発、国際標準化活動の推進。NTTグループのAI技術「corevo」の知見を活かした運転アドバイスや音声インタラクション技術等の研究開発。」
プロジェクトを推進するための包括的な共同開発
今回の研究開発の協業は、コネクティッドカーのICT基盤整備という非常に大規模なプロジェクトを進めるために必要な技術開発を行うものですが両者がそれぞれに得意な分野で技術開発を進めながら、プロジェクトに必要な技術を取得し、ICT基盤を構築するという点で、自社にない経営資源の補完を技術開発レベルで行うものといえるかと思います。
トヨタ自動車とNTTグループの協業は、規模が大きすぎて参考にならないと考える中小企業も多いかと思いますが、規模こそ違え、自社にない経営資源を獲得、それも互いに今は持っていないのでこれから取得するために提携するということは、中小企業でも必要な場面が多々あるかと思います。
強みの背景にある知的資産をベースに提携を考える。
今回のリリース記事のように、技術開発は事業における強みの開発であり、また知的資産の充実にもなり得るものです。
単に今互いが持っている知的資産だけで提携内容を考えるのではなく、現在の知的資産をベースに、今後持つべき知的資産も視野に入れて、取引先・提携先との関係を考えていくことが重要だと考える次第です。