労働力不足対応における「デジタル」と「アナログ」の使い方の共通点
● 労働力不足を解決するIoTサービス提供に向けた実証実験の開始
2018年1月25日に、NTT東日本、株式会社PAL、日本マイクロソフトは、
「職場の労働力不足などの解決に向けて、IoTやAI技術を活用し、作業従事者の状態や動きの可視化を行い、人材の有効活用・省力化、早期育成などを実現するIoTサービスの提供に向けた実証実験の開始」を公表しました。
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20180125_01.html
(引用は「」でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)
「<特徴>
①バイタルデータ取得による作業従事者の健康管理、異常検知
ウェアラブルデバイスを用いて作業従事者の心拍数などのバイタルデータを取得することで、作業従事者の体調不良などを検知。早期発見・対処につながる安心・安全な作業環境作りを支援します。
②ビーコンを活用した作業従事者の位置把握
ウェアラブルデバイスとビーコンを活用することで、監督者が不在となる環境下においても、作業従事者が危険区域などに立ち入った際に警告通知を行います。さらに、冷凍庫内などの累積作業時間管理が必要な環境下において、作業従事者の心拍数などのバイタルデータを自動で収集し、危険の兆候を捉えて、作業従事者・管理者に対してアラームを出します。
また、熟練作業従事者の無駄のない動きを可視化することで、他の作業従事者の作業効率の改善や、新人教育への活用を支援します。
③顔認証による勤怠管理
作業開始時に作業従事者がウェアラブルデバイスのカメラで撮影した写真と、事前に登録した写真を、マイクロソフトのAIプラットフォームサービスMicrosoft Cognitive Servicesを活用して比較し、作業従事者本人かどうかを照合します。
④多国籍作業従事者へのタイムリーな作業指示
ウェアラブルデバイスを用いて、管理者から作業従事者に作業指示を送信することにより、効率的な業務運営を支援します。また、Microsoft Azure及びAIプラットフォームサービスMicrosoft Cognitive Servicesを活用して作業指示を多言語に翻訳し、通知することで、多国籍作業員とのスムーズなコミュニケーションを支援します。」
ウェアラブルデバイスで作業従事者のバイタルデータ、位置データなどの情報を収集するとともにそのデータの分析・判断をAIで行い、指示を出す際には多言語機能で翻訳することで、多国籍作業従事者とのコミュニケーションの円滑化も図るというものです。
さらに、熟練作業者の動きの可視化により、他の作業者の効率化や新人教育への活用といった技能伝承にも応用されるとのこと。
・安全確保
・コミュニケーションの促進
・技能伝承
といった、労働力不足に対する課題を、AI・IoTで解決するという、ある意味分かり易い事例ですね。
(NTT東日本リリース https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/images/img_20180125_01_01.jpg )
● 建設作業の足場の高さを変えて、安全性・作業効率をアップ
一方、日経MJにも取り上げられたので、目にされた方もいらっしゃるかと思いますが、エスアールジータカミヤ株式会社が販売している、建設現場の足場の高さを従来の170cmから190cmに変えた、「Iqシステム」が売上を伸ばしているとのこと。
http://document.srg.jp/iq/
技術革新というわけではありませんが、
「「安全」で「作業しやすい」足場を業界の当たり前にするために。
実耐用年数が長期にわたる鋼製足場は、これまでモデルチェンジされる機会がほとんどありませんでした。しかし、足場が導入され始めた当時の日本人の平均身長約160cmに合わせた「階高1700mm」も、現在の平均身長170cmにはそぐわないものに。 作業者への負担を軽減し、建設業界の安全性を向上させるためにも、『Iqシステム』の普及に尽力し続けています。」
と、50年以上前からずっと同じだった足場の高さを、現代人の身長に合わせて高くし、作業の効率化と安全性の向上、労働環境の改善(屈んでの作業から普通に立って作業可能に)を実現しているという、業界の慣習を見直して、顧客への提供価値を高めた事例と言えるかと思います。
エスアールジータカミヤ株式会社サイトより https://youtu.be/eAeJR6igSK0
● 顧客理解と既成概念からの脱却
NTT東日本・日本マイクロソフトのソリューションと、エスアールジータカミヤの足場とは一見対象的なようですが、
課題の対応の手段こそ、AI・IoTと物理的な構造の変更の違いはあれど、
顧客(この場合は、作業従事者自身と、彼らを使う企業)の現状を把握したうえで、今までの慣習などにとらわれず、顧客も見逃していた、あるいは諦めていた課題に対応するという点では、共通するものがあります。
顧客、あるいは自社の現場を、慣習や通念にとらわれずニュートラルな視点で捉えるという意識を持つ人材、そしてそのような意識付けを行うとともに、そこで得た気づきや疑問を、実際のソリューションに結びつける仕組みや組織風土というものも、重要な人的資産であり、構造資産であることを改めて感じた次第です。
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