国内初の知財ファンドにみる「巡らせる仕組み」
● “埋蔵知財”を檜舞台にイノベーションのインフラ狙う、国内初の知財ファンド
2017年12月7日のMETI Journalでは、表記の題名で
2013年に官民ファンドの産業革新機構を中心に設立され、国内初の知財ファンドを運営するIP Bridgeを紹介しています。
https://meti-journal.jp/p/158
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
『「ホールドアップ問題」と「ホールドアウト問題」が知財業界で話題を集めている。ホールドアップ問題とは、他技術への切り替えが難しい特許を保有する企業が、利用者に対して著しく高額のロイヤルティーを請求することだ。特許権を用いて事業会社から巨額の特許使用料や和解金を得ることを目的とした「パテント・トロール」がこれに当てはまる。
一方、ホールドアウト問題とは利用者が権利者とのライセンス交渉に誠実に応じず、権利侵害を続ける“技術のただ乗り”行為だ。
こうした悪質な行為が横行する背景には、権利者、利用者のライセンス料に対する相場観の違いがある。アイピーブリッジは「知財活用を通じてオープンイノベーションを推進することがミッション」(藤木氏)であり、パテント・トロールのような「不合理な行為は経営理念から外れる。ライセンスする特許権の価値やロイヤルティーの妥当性をしっかりと説明した上で、利用者が権利を活用して成長することを重視する」(同)。対話を通じて双方が知財の価値を適切に評価し、ウイン・ウインの関係を築く。』
と、権利者と利用者の間を「適切な知財の価値評価」によって取り持つことで、両者がウイン・ウインの関係となるようサポートすることをミッションとしています。
● お金と技術の循環
IP Bridgeは自社の強みを、
『各分野のプロが集う混成チームにある。大手企業の知財部門出身者や投資会社・金融機関の出身者、弁護士、弁理士、CEO(最高経営責任者)経験者など、企業経営を丸ごとサポートできる陣容を整えている。専門家集団が徹底した市場調査に基づき知財価値を評価し、利用者に適正なライセンス契約を働きかける。』
と、知財を相手のビジネス(市場)に応じて価値評価する体制にあるとして、
『こうして企業や大学に眠っている権利流通を促すとともに、発明者に収益の一部を還元する。適正な対価を求めることで、発明者のR&D(研究開発)投資への意欲を一層引き出す好循環を生む。』
と権利者の研究開発への投資意欲を引き出すことを目指しています。
また、同社は、知財をベースに成長を目指すベンチャー企業や中小企業を支援する、イノベーション事業にも力をいれているとのこと。
現在の技術をベースにした新規商品の開発や、知財面からの企業の海外展開支援なども手がける中で、
知的財産という形での技術の循環と、ビジネスおよびライセンスによる収益というお金の循環の双方を回すことで、知的財産の活用促進を進めています。
● 知的資産を「巡らせる」仕組み
知的財産に限らず、自社の知的資産を人的資産、構造資産、関係資産の中で次々と転換させながら更にレベルを上げていくという「技術やノウハウ・ネットワークを巡らせる」仕組み、知的資産を自社の競争における「強み」に変え、それによって収益をあげるという「お金を巡らせる仕組み」の双方の歯車を上手く噛み合わせることが、知的資産をマネタイズして利益を上げていくことにつながるかと思います。
IP Bridgeのように、自社の中で完結するのではなく、他社の技術やお金も利用しつつ、このような循環の歯車を噛み合わせる部分となるために自社の知的資産を用いることは、成長戦略の一つとなるものと考える次第です。
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