SNSのスタンプ製作ビジネスにみる、グローバルな著作権のリスクとチャンス

● 若手クリエイター、スタンプ制作で稼ぐ 知的財産の扱いが課題

2017年12月26日のAFP-BB NEWSに上記の記事(CNS:中華人民共和国の国営通信社の記事を和訳したもの)が掲載されていました。

http://www.afpbb.com/articles/-/3156410
(引用は「」でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)

「SNSが生活に欠かせない現代中国で、スタンプはチャットに必須の「神器」となりつつある。

 24歳の鐘超能(Zhong Chaoneng)さんが制作した、白くて丸っこいキャラクターのウィーチャット(WeChat)スタンプ「乖巧宝宝(訳:お利口さん)」が突如ヒットし、この2年間で「乖巧シリーズ」は1億5000万回ダウンロードされ、収入は50万元(約862万円)を超えた。」

中国でもSNSが広がっていることと、その関連ビジネスの芽も出てきていることが伺えますね。

一方、同記事では、
「中国では知的財産についての認識と、スタンプという新たな業界への理解が欠けており、スタンプを知的財産とし、ビジネスにつなげることを実現させるのはまだ難しいという。」

と、中国において、SNS関連ビジネスの知的財産による保護は、まだ不十分との認識も示しています。

 

● LINEのスタンプと著作権

一方、日本のLINEにおけるスタンプの審査ガイドラインをみると、
5つある大項目の5番目に、
「5.権利・法律

5.1.当社または第三者の商標権、著作権、特許権、意匠権などの知的財産権を侵害し、または使用されている素材がサードパーティの利用条件に違反しているもの
5.2.権利の所在が明確でないもの(例:二次創作など)
5.3.肖像権、パブリシティ権などを侵害しているもの(例:許諾を得ていない人物の顔、似顔絵など)
5.4.権利者からの許諾が証明できないもの
5.5.その他LINEがサービスを提供する地域の法令などに違反し、または第三者の権利・利益を侵害するもの」

として、著作権を始めとする知的財産権など、他者の権利を侵害するもの、あるいは各地の法令などに違反するものは取り扱わない旨を定めています。
https://creator.line.me/ja/review_guideline/

上記の中で、制作された(LINEが販売を認めた)スタンプの著作権による保護は、直接明記されていませんが、この5条の5.1、5.2から、少なくともLINEのスタンプの審査では、制作されたスタンプの著作権を侵害するものは認めないと解釈できるかと考えられます。

 

● 著作権に国境はあるか?

特許権は「属地主義」で国ごとに特許権が設定されますが、

公益社団法人著作権情報センターの「外国の著作物の保護は?」の説明ページにあるように、著作権には国境はなく、海外の著作権もベルヌ条約を始めとする複数の条約によって保護されています。

「著作物は、国境を越えて利用されるため、世界各国は、条約を結んで、お互いに著作物や実演・レコード・放送などを保護し合っています。このような国際的な保護は、著作権は「ベルヌ条約」と「万国著作権条約」、著作隣接権は「実演家等保護条約」と「レコード保護条約」などによって行われています。我が国はいずれの条約にも加入しており、世界の大半の国と保護関係があります。」

http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime5.html

条約加盟国同士では、国内の著作権と同様に海外の著作権も保護されるので、外国のスタンプ、キャラクターだから日本で利用するのは問題ないということにはならないわけですね。(もちろん、その逆も同様です)

● SNS活用と著作権や肖像権

「SNS映えとインスタ映えの支援サービスにみるコンテンツの重要性」https://wp.me/p8EI7Z-pH や、

「「自撮り」が広げるビジネスチャンス」
https://wp.me/p8EI7Z-ka

などの記事で、今後のSNS活用はその支援サービスの充実ともに必要性が高まっていくことや、見せ方と同時に内容であるコンテンツの重要性・価値も高まっていくことをお話し、

「AI・IoT時代における「感性」と「美意識」」https://wp.me/p8EI7Z-qt

では、

「モノ売りからコト売りへ」という潮流の中で、今後も残る知的資産、価値が増す知的資産として「美意識」を捉えることについてお話しましたが、

このような動きの中では、「デザイン」や「コンテンツ」とそれを保護する著作権や商標といった「知的財産権」の重要性が益々高まることが容易に想定されます。

そして、海外も含めて、他者の権利を侵害してしまうリスクも高まって来ます。

特に著作権なら「二次著作物」、商標では「類似」というように、そのものズバリでなくとも似ているだけでも問題になるケースがあるので、要注意ですね。

SNSを自社のマーケティングに活用しつつ、リスクを押さえるためにも、専門家や行政の支援を活用することと、そのための仕組みやネットワークを自社の知的資産として確保する知的資産経営の考え方を利用することを考えてみてはいかがでしょうか?

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