教育サービス実証事業への校舎提供にみる、課題と検証のフィードバックを得る「場」という資産・資源
【今日のポイント】
郡山市と、マーケティング支援事業を手掛けるウェブレッジ社の廃校を利用したテストフィールド実証実験。
技術やビジネスの課題設定・対策と検証をコミュニティとして行える場を提供するという支援ビジネスとして、他の分野でも参考になるものと考える次第です。
● 郡山市との旧郡山市立大田小学校活用事業に関する契約締結のお知らせ ~「WR smart School Test Field」として10月開所予定~
2019/8/2に、マーケティング支援事業および品質向上支援事業を手がける株式会社ウェブレッジは表記のリリースを公表しました。
郡山市が、旧郡山市立太田小学校を、同社にテストフィールドとして賃貸するというものです。
(引用は『』でくくります。 太字と改行は筆者挿入、以下同様)
『活用事業について
今後ウェブレッジは、賃貸借契約を締結した旧大田小学校にて「WR smart School Test Field(ウェブレッジ 学校テストフィールド)」の構築に着手します。
WR smart School Test Fieldは廃校を活用した「学校型」実証実験施設であり、主に学校教育現場で利用するICT教育サービスや、VR、AR、ドローンなどのICT機器をリアルな学校環境で検証できる施設となる予定です。
計画する施設名称
WR smart School Test Field
計画する施設の用途
1.学校テストフィールドとして活用
2.コワーキングスペース、オフィススペース、宿泊施設として活用
3.交流会、セミナー、展示会の開催
4.社内外の利用者を対象としたカフェ・交流スペースの運営
5.テストラボとしての活用 他活用事業の概要・コンセプト
・学校向けICT教育サービスのプレ実証実験を目的とした「smart School Test Field(学校テストフィールド、以下「STF」)」を構築する。
・STFは、カメラセンサーなどによる定量的空間情報(位置指標・環境指標など)の変化量と適正化指標(バイタル指標など)に基づいて、「学習に最適な環境やコンテンツ」の実証実験を行うためのテストフィールド。
・利用者(子ども、教職員、保護者)の安心安全の確保、利便性向上、負担軽減のため、学校現場への導入前にSTFを活用し、ICT教育サービスおよび機器の実証実験をおこない、サービスの品質向上をはかる。
・EdTech事業者は、教室型、校庭型、体育館型、プール型、そして学校全体のリアルな環境を有するSTFで実証実験を行い、実際の学校教育現場に近い実証データを取得することができる。』
「コミュニティ」と「商品・サービス開発と検証」の双方が連動する「場」を提供する試み。
公共の場だけに複数企業やNPOのコラボにも有効かと思います。
● 開発課題の提供という資産・資源
以前のトピックス
『「火星探査のためのロボット蜂開発」に思う「開発環境・開発課題という資源」』
や
『中国の月着陸にみる高度な課題設定という世界情勢を見るときのヒント』
さらに
『「深海」という技術開発課題と新市場を提供する「資源」』
のように、宇宙空間や深海は、最新技術の開発と適用のテストフィールドとして、その利用価値が高まっていますが、
ウェブレッジ社の試みは、廃校となる小学校のように、身近なところにも、新しいビジネスを検証し、立ち上げるためのフィールドを見つけられることを示している事例かと思います。
● コミュニティからフィードバックを得る「場」という資産・資源
今回のテストフィールドは、複数の異なる立場のプレーヤーの関係から生じる課題の検証、参加者それぞれがフィードバックを得られるという価値も提供しています。
このように、コミュニティと商品開発やテストマーケティングを行う場は、先日のトピックス
『「HELLO DESIGNデサインと日本人」に学ぶ誰にでも必要なデザイン思考とパッケージ力』
でご紹介したデザイン思考(デザインの本質は「課題の発見とその解決」にあり、人々の心や行動の変化からそこにある潜在的な課題や願望を読み解くことがデザインの根底にある考え方)を活用する場としても有望なものかと思います。
例えば、客足が遠のいた商店街なども、上記のような視点からの活用を考えることは、選択肢の一つとなりえるものだと思います。
『横浜市のICT活用による市民参加型実証にみる社会課題対策の選択肢とビジネスチャンスの広がり』
でご紹介したICT活用の市民参加型実証、
『エルビス・プレスリーのダンスを見せる交通信号に考える地域ブランドの活用と提携方法』
でお伝えした、地域間で提携することによる地域ブランドの活用、
『ブロック塀対策とチェルノブイリツアーにみる防災意識維持の課題と対策』
で採り上げた地域防災、
『空き家対策補助事業とAI・IoTによる営農ビジネスから考える地域創生』
などの記事で採り上げている少子高齢化対策や地域創生など、
多くの社会課題について、この「課題設定・対策と検証をコミュニティとして行える場」という視点から、自社あるいはその周辺、地域の資産を見直してみることは、知的資産を含めて既存の資産の新しい活用先を検討する上で有望な方法としてお勧めする次第です。
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