グーグルの米国内大規模投資にみる企業誘致競争の変化のポイント

【今日のポイント】
グーグルの米国内での大規模投資は、ネットや物流の発達により、企業が拠点を選ぶ際の条件において、人材の確保や地域・国の行政の方針・施策などが相対的に大きくなってきていることを窺わせます。
AI・ビッグデータの活用が企業競争力に大きな影響を与える中で、地域レベル、企業レベルでも人的資産の占める重要性が高まってくることを示す一例と考える次第です。
2019/02/22の1日5分ビジネス英語に表記のトピックスが掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)
『グーグルは同社のオンラインサービスをサポートするために、同社のサービスを拡大しようとしている。
グーグルはユーザーにとって速く信頼性が高くありたいと考えている。
新しい投資は米国50州のうちの24州で10,000件以上の建設の仕事を創出するのに役立つだろう。
グーグルはシカゴとワシントンで存在感を増やし続ける。
グーグルのスタッフはバージニア州とジョージア州で2倍になる予定だ。
またニューヨーク市に新しいキャンパスを設置する予定だ。
これらの新しい投資はグーグルが米国でのリソースや収入を増やすのに貢献するだろう。』
グーグルは、シリコンバレーだけでなく、シカゴやワシントンなど米国内で多くの拠点の増強と人材の確保にかなり力を入れていることが窺われます。
● 「市場へのリーチ手段の高度化」による拠点の集約
今回の記事からは、「市場へのリーチ手段の高度化による拠点の集約」の流れをみることが出来るかと思います。
市場に近接した拠点はもちろん必要ですが、IT、特に情報提供型のビジネスでは海外の市場(ユーザー)にサービスを提供することは以前よりも容易になっているため、
自社の拠点をどこに置くかについては、市場よりも自社に必要な人材の確保や各地域の行政の方針、国家レベルの政策への配慮などの影響が相対的に大きくなってきているのではないかと感じます。
米国内では以下の記事にみるように、例えばシカゴなどのシリコンバレー以外の地域もスタートアップの集約地として注目されているようですが、
いずれにせよ海外に拠点をおく必要性が相対的に下がってくる可能性を感じました。
米国・カナダにおけるテクノロジー・イノベーションハブの現状(JETRO)
● エコシステムの観点からの企業誘致
グーグルなどの従業員一人あたりの収益は1億円を超え、純利益も3000万円を超えているとのことなので、雇用だけでなく米国内に還流する利益も大きく上昇することが予想されます。
また、グーグルほどではないにせよ、大きなエコシステムを構成する企業を誘致できるかどうかは、その企業だけでなくエコシステムに属する他の企業の誘致にも有利に働く可能性が高まりますね。
そして、以下の記事にあるように、グーグルのような高収益企業の拠点を有することで、世界各国でグーグルが取得した利益が米国に還流するのではないか思われます。
2016年02月04日 Google・Yahoo!・Twitter・Facebook・Microsoft・Appleの従業員1名が稼ぐ収益を比較するとこうなる
● 人材獲得が変える、企業誘致の条件
上記のように、企業誘致は従来と同様、あるいはそれ以上に今後地域や国レベルで重要な課題となってくるかと思います。
その際に、中国に見るように、「世界の工場」から「世界の市場」へとその企業誘致における魅力が移り変わってきたように、
データサイエンティストやAI人材のように優秀な人材の確保が企業競争力に非常に大きな影響を与える中では、
今後は市場としての魅力だけでなく、人材獲得の面で企業にとって、ひいては個々の従業員にとって魅力のある環境を提供できるかが、国際競争力に及ぼす影響が更に大きくなってくるものと予想しています。
そして、地域レベルだけでなく、企業レベルでも人的資産の重要性が今後高まってくる可能性を感じます。
その際には、
「フランスのスタートアップコミュニティにみるビジョンへの共感が牽引する新しいエコシステム」
でお伝えしたように、スタートアップでも、ICTやコミュニティの活用などやり方しだいでグローバルに展開できる時代では、高い志や高難度の課題を含むビジョンを掲げられる企業が、優秀な人材やスタートアップ企業の夢やチャレンジ精神を刺激して共感を得るものと考える次第です。
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