省エネ法の改正の解説にみる「企業単体から集団へ」の規制・支援の変化
● 時代にあわせて変わっていく「省エネ法」
2018//6/14に資源エネルギー庁のサイトに表記のコラムが掲載されました。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/shoenehoukaisei.html
(引用は『』でくくります。 改行は筆者挿入、以下同様)
『
1.2030年度に向けて必要なさらなる省エネ対策
2.産業・業務部門における省エネ法の改正ポイント
3.運輸部門(貨物輸送分野)における省エネ法の改正ポイント
4.社会全体で省エネ対策を推進していくために』
の4点に分けて、2018年6月に国会で成立した「省エネ法」の改正のポイントを解説しています。
その中の、2.産業・業務部門における省エネ法の改正ポイント
で、事業者単位の取り組みは限界を迎えつつあるという認識のもとに、複数事業者の連携による省エネの取り組みも適正に評価する制度を新たに設け、各事業者の省エネの取り組みを促進することを目指すとしている点に注目しました。
『現行の省エネ法では、事業者のエネルギー消費効率を事業者単位で評価しています。たとえば、同じ業界にあるA社とB社が上工程をB社に統合・集約することで省エネを図った場合を考えてみましょう。統合して上工程を廃止したA社はエネルギー消費量が減ってエネルギー消費効率が改善し、省エネ評価が向上しますが、一方で、エネルギー消費量が増えてエネルギー消費効率が悪化するB社の省エネ評価は悪化することとなります。
そこで改正法では、新たに「連携省エネルギー計画」の認定制度を設け、認定を受けた複数の事業者が、事業者間の連携により削減した省エネ量を、それぞれの事業者に分配して報告できることとしています。
また、現行法で両者にプラスの評価となるような複数事業者の連携による省エネの取り組みに対しても、それぞれの事業者の省エネ取り組みへの貢献度合いを踏まえて、省エネ量を分配することができるようになります。
より適正な省エネの評価を得られることで、事業者が積極的に連携し、省エネに取り組むことが期待されます。』
と、企業間での工程の集約化や効率化を適性に評価することで、企業グループ単位の省エネ活動の促進と、各事業者の省エネへのモチベーションアップを図っています。
資源エネルギー庁サイト http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/img/r3uy-2az0z1vo.png
● 企業連携の進展、エコシステムと規制・支援の対象の変化
エネルギー問題や、少子高齢化、環境問題など事業者単位では対応が困難な課題は多く、またAI・IoTなどの技術面で今まで以上に企業や取引先、顧客の間のコミュニケーションや取引を促進する環境が整ってきている中で、今回の省エネ改正や、
「東京都の顧客データ等利活用モデル創出事業にみる「モデル企業」という機会」
https://wp.me/p9D2bS-Bw
で紹介した、中小企業のグループも対象にした支援制度のように、
バリューチェーン全体にわたる複数の企業を対象とした規制や支援は今後増えてくるものと予想されます。
また、「プラットフォームビジネスにみるエコシステム間の競争」
https://wp.me/p9D2bS-zl
などでも採り上げたように、
あらゆる市場で異業種のプレーヤーが増え、顧客も含めて各プレーヤーのニーズも多様化する中で、一社で全てのニーズを満たすことは不可能になっているため、いかに自分が必要なエコシステムを形成、あるいは見つけて参加するか、その中で有利な位置につけるかが重要になってきているなかで、複数の関連する企業を対象とした支援策や規制について、リスクとチャンスの両面からアンテナを張っておくことが必要だと改めて感じています。
● グループ単位で知的資産を考える
上記のように、企業間連携やお客様も含めたエコシステムという、「関係資産」の重要性が増してきているわけですが、
それと同時に、このような「アンテナ」を張って、企業間連携をコーディネートできる人材という「人的資産」、企業間でデータのやり取りやコミュニケーションを効率的に行うシステムなどの「構造資産」も含めて、自社の中だけでなく、自社事業に必要な知的資産を取引先などまで広げて考えることがますます重要になってきていると感じます。
そのような視点を持ち、社内外と共有するためにも、知的資産経営報告書のSWOT分析や価値創造ストーリーにおいて、自社の置かれているバリューチェーンやエコシステム全体を含めて作成することが必要になってきていると考える次第です。
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