AI・IoT・ICTによる知的資産経営の活動範囲の広がりへの期待
【今日のポイント】
デジタル技術は、各種業務の効率化や知見の共有などにおいて活用が進んでいますが、
知的資産経営の視点からも、自社の強み(知的資産)の可視化と共有、活用の手法や活動範囲を広げる効果が期待できるため、その動向には要注目と考える次第です。
【目次】
1.AI・IoT・ICT活用による業務の可視化と得られた知見の蓄積・活用
2.デジタル技術を用いて自社の強みを人材と仕組みの双方から可視化(明確化)し、共有と蓄積・活用へと進む
1.AI・IoT・ICT活用による業務の可視化と得られた知見の蓄積・活用
●FRONTEO、特許調査を高度化したPatent Explorer Xを発表
2021/8/2に自然言語処理に特化した自社開発AIエンジン「KIBIT」と「conceptencoder」を用いて膨大な量のテキストデータの中から意味のある重要な情報を抽出し、企業のビジネスを支援する、データ解析企業である株式会社FRONTEOは表記のプレスリリースを公表しました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)
『検証段階では、より大きな特許母集団に対する特許探索が可能となり、操作性に加え、解析精度も向上するという結果も得られています。
Patent Explorer Xは、知的財産部での特許調査のみならず、研究開発領域でも活用可能で、無効資料調査、先行技術調査、技術動向調査、クリアランス調査といった特許調査の効率化・高度化を実現します。』
⇒『AIを用いて「テキストデータを知見に変える」』との同社のコメントに、知的資産経営へのAI適用の一事例と感じた次第です。
●【AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」機能リリースのお知らせ】~自社ひな形や規約を管理する機能「自社ひな形ライブラリ」をリリース~
2021/8/5にAI契約プラットフォームサービスを提供している株式会社LegalForceは表記のプレスリリースを公表しました。
『自社ひな形や規約を「LegalForce」内に保管できる機能です。
「自社ひな形ライブラリ」のリリースにより、自社ひな形を、取引先から送付されてきた契約書やレビュー中の契約書などと完全に分けて管理することができます。
加えて、ひな形をバージョン単位で管理できるため、最新版のひな形が一目でわかり、また、過去からの変更点を把握しやすくなります。』
⇒ひな型やフォーマットなどと、その変更履歴のデータベース化は、自社の事業環境の移り変わりとその変化への対応の軌跡の可視化と記録でもあるため、自社の知的資産の蓄積と共有の有効な手段と考える次第です。
●生産ラインのサイクルタイム解析システム「ePVS」が IT導入補助金2021の対象ツールに登録されました
2021/7/28に、新東工業株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
『ePVSで生産ラインのサイクルタイムを検出することで、ネックとなっている工程の分析や改善の実施、異常停止の兆候検出を行うことができ、ライン全体の生産性や保守性の向上に繋げることができます。
また、Webブラウザ経由でどこでも確認することができるため、現場以外でも状況確認が可能となるほか、ユーザの要望に合わせた画面構成やレポート作成ができるため、報告作業の負担軽減にも繋げることができます。』
⇒可視化と予測の組合せをいかに自動化して取り込むかが、生産性向上の主要課題の一つであり、かつAI・IoTなどの大きな貢献が期待できることが窺えます。
●弁護士ドットコムと佐賀県が実証実験を開始。クラウドサインによる契約事務の効率化とシステム環境構築を検証
2021/6/4にWeb完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」を提供する弁護士ドットコム株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
『このたびの佐賀県との実証実験においては、以下の2点の検証を行うとともに、職員の皆さまの生産性向上と民間事業者との契約業務の利便性の最大化に向けた支援を行ってまいります。
実証内容
・電子と書面契約を併用することで、契約事務に関する効率化の確認を行います。
・本実証の結果を受けて、電子契約の対象となる県の事務を検討します。』
⇒行政のスマート化を契約業務面から支援する動きの事例となります。
利便性だけでなく、契約業務自体の知見や、過去の契約のデータベース化による業務改革など、今後の展開にも期待する次第です。
また、今後は、以下のトピックスでお伝えしているように、市民参加型のスマートシティ構築や行政のデジタル化が民間の支援も受けつつ推進されていく中で、企業のビジネスチャンスも広がってくるものと考える次第です。
『世界の電子統治に関する国連調査に考える、市民参加型のスマート行政とその中でのビジネスチャンス』
2.デジタル技術を用いて自社の強みを人材と仕組みの双方から可視化(明確化)し、共有と蓄積・活用へと進む
自社の持つ強みを人材や仕組み、社風(企業文化)などの面から可視化することは、既存事業の振り返りと、自社の将来像の実現を図るうえでまず最初に行うステップの一つであり、
知的資産経営においても、知的資産経営報告書や経営デザインシート作成のうえで、自社のビジョンや企業理念などの明確化とともに必須の項目となっていますが、
その方法として、従来のワークショップやコンサルタントによるヒアリング等に加えて、上記の記事で紹介されているような、AI、IoT、ICTなどのデジタル技術を用いることは、客観的な情報を得るという点でも、有効な手段となり得ます。
また、自社の強みに関する情報をデジタル化することは、人的資産の構造資産化(属人化しているスキルや知見の、組織知への転換)や、
リモートワークやWeb会議等による社内外とのコミュニケーションのオンライン化への対応や、取引先やエンドユーザーへの自社の提供価値の訴求方法の変化への対応の面からも、重要な課題となっていると感じます。
契約などの取引に関わる業務、マーケティングや、商品の製造・販売など、事業の各方面において、知的資産の取得と社内での共有、社外への情報発信という知的資産経営の視点から、AI・IoT・ICTに関する自社の業界や他の業界の動向について情報収集し、自社の事業戦略に取り込むことは、今後も有効性を増すものと、検討をお勧めする次第です。
なお、知的資産経営の概要については、本ブログの『知的資産経営とは(概要説明)』
経営デザインシートの詳細については、『経営をデザインする』(知的財産戦略本部サイト)をご参照いただければ、大変幸いに存じます。
★ 以下のブログランキングに参加しております。ぜひ、クリックよろしくお願い申し上げます(^^)。