「顧客接点」の見つけ方や活用方法
【今日のポイント】
顧客接点の確保と拡大は、自社の市場を広げ、あるいは新規市場を開拓する上で欠かせないものですが、自社だけでそれを実現することもまた困難かと思います。
まずは、社外の関係先などを含めた自社の持つ経営資源を知的資産も含めて、顧客接点という視点から見直してみることは、現在の顧客接点とその利用法の改善点や、新たな顧客接点や既存のものも含めた新規の活用方法の発見にも繋がるかと考える次第です。
【目次】
1.自社や他社の顧客接点を知的資産の視点からみてみる
2.購買行動の手前の顧客接点
3.購買行動の入り口の顧客接点
4.購買行動の出口の顧客接点
5.購買行動後の顧客接点
潜在顧客も含めて、顧客接点の確保は、商品やサービスと同様か、場合によってはそれ以上に企業に取って重要性を増していることは、
例えば、スタートアップの企業価値が、企業収益以上にその提供サービスのユーザー数や増加傾向で評価される例などからも窺えるところかと思います。
その顧客接点は自社で持つ場合や他社との連携で外部の顧客接点を活用する場合の双方がありますが、
顧客の購買行動のどの段階で顧客接点を確保するかという視点と、そこで必要な経営資源のうち、知的資産は何かという視点から考えて見たいと思います。
なお、ここで「購買行動」は、ある程度、顧客が何かの欲求や悩みなどのニーズ(課題)を持ち、その解決方法を探したいと考え始めてから、解決方法としての商品・サービスを購入・利用するまでとして、以下では記載しています。
また、購買行動の各段階への対応など、マーケティングの詳細については、本トピックスでは割愛し、顧客接点の視点からのみ考えていきます。
潜在的顧客については、自社の商品やサービスなどで自社が提供している価値に対して、ニーズ自体を明確に認識していただく事が、購買行動前の顧客接点としては、重要になるかと思います。
もう一つは、5.の購買行動後にも記載した、既存の自社の顧客のライフサイクルに沿った商品提案などが考えられます。
ここで、自社が備えるべき知的資産としては、
・人的資産:既存顧客との信頼関係を持ち、商品提案能力を持った人材やその人材を育成できる人材(管理職など)、自社サイトのSEO対策を自身で行えるか、SEOサービス企業を使える人材、想定する潜在顧客像を明確化できる人材
・構造資産:上記のような人材を育成する仕組み(オン・ザ・ジョブ・トレーニングの仕組み、教材など)、自社商品へのニーズを持つ顧客に関する情報とその共有の仕組、自社の提供価値の明確化と共有の仕組み
・関係資産:自社の既存顧客、自社の商品を知っており、それに対するニーズを持ちそうな顧客を紹介してくれる取引先など
等が挙げられるかと思います。
この段階の顧客接点を見つけることは、外部環境の今後の予測なども必要となりますが、以下のように、その予測自体を支援する動きも進められています。
● 【SDGs】Avintonが神奈川大学と連携し、ビッグデータ技術で苦境の横浜観光のイノベーションに貢献
2022/4/27にAvintonジャパン株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
https://avinton.com/blog/2022/03/kanagawa-university-sdgs-collaboration/
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同じ。)
『Avintonジャパンは、神奈川大学、自治体、外郭団体、地域住民等と連携し、オープンイノベーションでSDGsの実現に取り組みを目指すデータプラットフォーム事業をスタートしました。
産官学民が一体となって「観光関連データを活用した横浜の現状分析・未来予測、ソリューション開発」に取り組みます。本プロジェクトの技術パートナーとして選ばれたAvintonは、データプラットフォームの開発を担当します。』
⇒現場の知見とAI等の技術、それらを結び付けてソリューションを作るデザインなどの手法の組み合わせの進展と普及に期待する次第です。
ここは、ニーズや課題をお持ちの顧客が、自社の商品・サービスを認識していただく段階に相当するかと思います。
現代では、まずはネット検索が中心になるかと思いますが、その他には、以下の記事のように、オンラインを含めた無料相談や商品提案などが相当するかと思います。
また、事業提携による他社の顧客接点の利用も非常に重要になってくるかと思います。
● Chatwork株式会社と業務提携しました
2022/2/15に株式会社smallwebは表記の事業提携を公表しました。
https://www.smallweb.co.jp/cont3/19.html
『「Chatwork DX相談窓口」では「Chatwork」をはじめとして、さまざまな場面で中小企業のビジネスを効率化、DXを推進するサービスを紹介しています。
smallwebは、簡単ホームページ作成ツール「とりあえず HP」を提供しています。「とりあえずHP」なら、文字と写真を入れるだけの簡単な操作で素敵なホームページができあがります。』
『このたび「Chatwork DX相談窓口」を介して「とりあえずHP」を提供することで、ホームページ作成の手間や工数の削減に寄与します。』
⇒オンライン相談という顧客接点の活用が、ネット関連のサービスを始めとして広がっている様子が窺えます。
● 浅草・東京スカイツリータウンR周辺エリアで「AI レコメンド機能付き観光デジタルマップ」を期間限定で運用開始!
2022/4/27に、東武鉄道株式会社と株式会社 New ordinaryは表記のプレスリリースを公表しました。
クリックして20220427113022uiczHswa7hJnXovUFxvaKA.pdfにアクセス
『本サービスは、お客様の趣味や好きな食べ物の情報、観光に求める条件等をスマートフォン等の案内に沿って選択すると、AIがモデルコースやおすすめの店舗をデジタルマップ上にて提案するものです。
これにより、浅草・東京スカイツリータウン周辺エリアが初めてのお客様も、何度もお越しになっているお客様も、その時々の好みや状況に合わせた観光が可能となります。』
⇒観光含めて、AIによるコンシェルジュ機能の展開が進むとともに、今後その効果検証と改善サイクルの巧拙も、競合との差別化などのうえで課題になるのではと感じた次第です。
● 『マネーフォワード クラウドStore』、ハードウェアの取り扱いを開始
SaaS導入やPC選定から購入まで、ソフトとハードの両面で企業の効率化を支援し、DX化を推進
2022/2/1に株式会社マネーフォワードは表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000709.000008962.html
『生産性向上に役立つさまざまなサービスを提供するオンラインストア『マネーフォワード クラウドStore』において、パソコンなどのハードウェアの取り扱いを開始しました。
ユーザーは、本サービスを通じて、ハードウェアの購入が可能になります。これにより、SaaS導入やPCの選定から購入まで、ソフトとハードの両面で企業の効率化を支援し、企業のDX化を推進してまいります。』
⇒DXにおけるトータルソリューション提供の事例の一つですが、
従来のハード販売にソフトをつけるのではなく、クラウドなどでのサービスにハードをつける方向での自社の顧客接点の活用例であり、今後も、サービス・プロバイダー側からのハードウェア販売業界への参入は広がるものと考える次第です。
● 契約マネジメントシステム提供のContractS、キャリアインデックスグループ参画のお知らせ
2022/5/20に、ContractS株式会社は表記のプレスリリースを公表しました。
https://www.contracts.co.jp/news/press-release/14918/
『■キャリアインデックスへのグループ参画により実現すること
①シナジー創出による事業の加速
現在、ContractSは業界問わず、大企業から中小企業に至るまで多様な企業にサービスを提供しております。今回のグループ参画により、キャリアインデックスが持つ顧客基盤と連携することで、より多くの企業へのサービス利用を促進いたします。②HR・不動産業界における支援強化
契約業務における課題は業界問わず存在しますが、HR・不動産業界は契約業務の負荷が最も高い業界に挙げられます。HR・不動産業界に強みを持つキャリアインデックスのナレッジを活かし、より深い課題解決を目指します。』
⇒顧客接点を持つ企業との提携において、接点確保に加えて、お互いが持つ知的資産を含めた経営資源を活用してどの様なシナジーを作り出すかを検討することの重要性が窺えます。
●歯科医院開業時やリニューアル時の内装デザインをサポート
店舗デザイン.COM を運営するシンクロ・フードと提携開始
2022/5/17に、歯科医療領域でプラットフォームビジネスを展開する株式会社メディカルネットは表記のプレスリリースを公表しました。
https://www.medical-net.com/common/doc/news/r04/press_20220517.pdf
『当社は、この提携により開業時のコスト削減に加え、歯科クリニック開業時やリニューアル時の内装デザイン及び設計施工を支援できるようになり、開業後の歯科医院経営の運営サポート、歯科医院のプロモーションや集患までオンライン、オフラインで幅広くカバーすることで、ワンストップで歯科医院の経営支援を可能にし、当社が目指す歯科医療のプラットフォームビジネスの構築を進めてまいります。 』
⇒異分野の企業との提携は、双方の知的資産の相互活用に加えて、シナジー効果による新しい知見(知的資産)の獲得の機会にも繋がるものと考える次第です。
ここで、自社が備えるべき知的資産としては、
・人的資産:上記のような、他社の顧客接点も含めて活用することを考え、実行できる知見とネットワークを持った人材など
・構造資産:サイト上の無料相談からクロージングまでを円滑に行える仕組みや、その仕組を構築し、更新できる人材の確保・育成の仕組み。のマッチングサイトのような、顧客接点確保のサービスを活用するための社内業務フロー、事業提携に必要な手順などのマニュアル化など、口コミによる自社の提供価値の認知度向上を高めるためのSNSの利用フローなど
・関係資産:上記のマッチングサイトや、やはり顧客を紹介くれる取引先など
が挙げられるかと思います。
なお、購買行動の入り口と更にクロージングまでの営業行為においては、以下のようなサービスも提供されています。
● 営業生産性を最大化するビジネスナレッジメディア「営業準備ナビ」をリリース
2022/4/28に、営業スクリプトの自動作成ツール「UKABU(ウカブ)」を開発提供している株式会社UKABUは表記のプレスリリースを公表しました(PRTIMES_JPより)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000075692.html
『・商談前にどんな準備をすれば良いのか
・商談はどんな流れで進めれば良いのか
・自社にはどのような営業スタイルがあっているのか
たとえば、
このような課題を抱えている営業パーソンはきっと世の中に数多くいらっしゃいます。しかし、大抵はこの課題を解決しようとする時、勘と根性で「営業資料をもっとよくしよう」「お客様にもっと気に入られるようにセールストークを磨こう」「第一印象をよくするために外見を整えよう」と考えてしまいます。
それ自体は決して悪いことではないのですが、テクノロジーが進化したこの時代には、この時代なりの解決方法があります。』
⇒同社の営業準備ナビのサイトはこちら
https://www.ukabu.co.jp/eigyojunbi-navi/
上記サイトでは、営業に関連する情報提供なども掲載されています。
事前準備や段取りの重要性は昔から語られていますが、DXの活用など、まだまだ工夫や進化、そしてビジネスチャンスの余地があることを改めて感じた次第です。
購買行動の出口としては、決済、商品の搬送があるかと思います。
このフェーズを自社の顧客接点として持つか、他社のシステムやサービス(顧客接点)を利用するかについては、
中小企業の場合は、以下の事例のように、ECモールなどで他社のサービスを利用することが多いかと思います。
● 交通反則金、電子マネーやカード払いなど対応へ~キャッシュレス法成立
2022/4/30のiPhone Maniaに表記の記事が掲載されていました。
https://iphone-mania.jp/news-452549/
⇒デジタル庁の関連記事はこちら。
https://www.digital.go.jp/laws/yX0hPui5/
『情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案
本法律案は、令和4(2022)年2月8日、第208回国会(通常国会)に提出されました。』
行政のスマート化も進み始めている事が窺えるかと思います。
また、ここで取得されたデータの利用方法も要注目と考える次第です。
なお、キャッシュレス化によるデータ活用やエコシステム構築の動きとしては、以下の記事なども参考になるかと思います。
『iPhoneが店頭決済端末に Appleが「Tap to Pay」を2022年内に米国展開』
2022/2/10のITmedia Mobileの記事。
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2202/10/news129.html
『Tap to Payは、顧客側のApple Payやタッチ決済対応のクレジットカード、デビットカード、デジタルウォレットなどを、店舗側のiPhone(NFC対応のiPhone XS以降)にかざすことで決済が完了する仕組み。
iPhoneに加えて、米国の小売店の90%以上が利用するApple Payや、専用のiOSアプリをあわせて活用することで、「ほぼ全ての企業が会計時にiPhoneだけでTap to Payを利用できる」とAppleはアピールする。』
⇒2022年5月時点での、日本のアップル社のApple Payに関する説明サイトはこちら
https://support.apple.com/ja-jp/HT201239
『Apple Pay で買い物をする
お店で、App 内や Web 上で。ほかにもいろいろな場面で Apple Pay で支払いができます。』
⇒決済という手段により、アマゾンのアマゾンプライムのような顧客の囲い込みやエコシステム構築を図る動きとも感じた次第です。
ここで、自社が備えるべき知的資産としては、
・人的資産:対面で顧客に接する場合は、今後も継続的なお付き合いをしたいと相手に信頼感を持たせられる人材
・構造資産:自社の他の商品を紹介する仕組み(サイト上での類似商品や、関連商品の紹介バナー、リアルのチラシなど)、複数の決済システムの整備とそれを適宜更新できる仕組み
・関係資産:商品の搬送を委託する業者
等が挙げられるかと思います。
この段階は保守メンテなどのアフターフォローが中心となりますが、
もう一つは、顧客のライフサイクルに沿って、自社サービスを中心に顧客に提案を行う、顧客生涯価値の向上の視点も欠かせないかと思います。
ここで、自社が備えるべき知的資産としては、
・人的資産:自社の商品の提供価値と、顧客のライフサイクルやTPOに沿ったニーズ双方に関する知見を持った人材
・構造資産:上記のような人材の確保・育成の仕組み、顧客のライフサイクルやTPOに沿ったニーズとその変化に関する情報を収集・分析する仕組みやデータベースによる共有と活用の仕組み、販売時やその後のアフターフォロー時に顧客のお困り事や、自社の商品・サービスに対する不満も含めた評価を取得し、共有する仕組み
・関係資産:自社を信頼して、今後も頼りにしてくれる(何かあったら自社のことを思い出してくれる)顧客
などが挙げられるかと思います。
以上、かなり雑駁ながら、購買行動の段階別に、顧客接点の視点から必要となる知的資産を考えて見ましたが、
当然ながら、購買行動の各段階への対応自体が全体として整合し、顧客生涯価値の向上と自社ブランドの確立・価値向上のサイクルを回すように設計される事が必要であり、
そのような全体観を持ち、マネジメントできる人材や、顧客接点の取りこぼしを防ぐような仕組みなども必要となります。
また、上記の各段階で必要な知的資産を個別に確保することは難しく、また全体として整合が取れている必要がありますので、各段階で利用する知的資産はかなり重なる部分も多いかと思います。
知的資産に限らず、自社が社内と社外双方に持つ経営資源を、顧客接点の確保という視点から、見直して改善点や新たな市場の発見につなげてみてはと検討をお勧めする次第です。
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