RPAの社内開発とブラックホール観測にみる、「課題」の探し方

David MarkによるPixabayからの画像

【今日のポイント】
RPAで導入時の自社の課題を認識する当事者意識の重要性。

この課題の発見力(形成力)は今後ますます重要となってきます。

その力をつける上で、現場を観察することによる課題の発見というデザイン思考と、特殊事例の課題をについて、抽象化と具体化を往復することで自社の状況に当てはめてみるというアナロジー、この2つの方法を有望なものとお勧めする次第です。

 

社員が使うロボットは、社員が作れ――三井住友海上が7カ月でRPAチームを育成できた理由

2019/8/27のITmediaエンタープライズに表記の記事が掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

『RPAの難しさは、導入後にやってくる。その1つが、現場でロボットを開発、運用管理する体制作りだ。RPAの全社展開を目指す三井住友海上は、開発未経験の社員を集め、約半年でRPA専門チームを育成した。その方法とは。

(中略)

しかし、あえてRPA未経験の社員を集め、専門チームとして育成した企業がある。三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)だ。同社は、RPAという用語が広く知られる前から、VBAやマクロなどを使って業務自動化に取り組んできた。同社は実際にどうやってRPAチームを育てたのか。今回、現場で活躍するデジタル戦略部 業務プロセス改革チームの倉本亜矢子さん、谷口真代さん、徳永加奈子さんの3人にお話を聞いた。』

「自分自身のものと考えられる課題を持っている事」による当事者意識の重要性と、何故エクセルなどが現場でずっと使われ続けるのか(自分の課題をその場で自分で何とか解決できる)の理由が窺えます。

 

ヘリウム封入HDDを採用、生データは保護しない――ブラックホール初観測の裏側

舞台は宇宙に飛びますが、2019/6/4のTechTargetには表記の記事が掲載されていました。

同記事は、2019/5/29の『ブラックホール初撮影データの保存先に『クラウド』が選ばれなかった理由』の後編です。

前編では、巨大ブラックホールの観測を目指した「イベント・ホライズン・テレスコープ」(EHT)のプロジェクトチームが、電波望遠鏡(光ではなく電波を観測する望遠鏡)で得た電波信号データの記録と分析のために、クラウドではなく従来型の手法を採用した理由を解説しています。

『電波望遠鏡は64Gbpsの速度でデータを記録し、1回の観測時間は10時間を超えることもある。つまり電波望遠鏡が1回稼働するごとに、0.5PB前後のデータが生成される可能性がある。それぞれの拠点で同時にデータを記録するため、記録速度と収集するデータの量だけを考えても、クラウドにアップロードするのは非現実的だった。

(中略)
データ処理についても「クラウドを使うことは非現実的だった」と、ヘイスタック観測所でコリレーション(変数間の相関関係を分析する手法)ワーキンググループの共同リーダーを務めるジェフ・クルー氏は語る。』

後編では、過酷な使用環境に耐えるためにヘリウム封入型HDDを利用し、大量のデータの保護については、費用対効果を考えて、生データのバックアップは取らず、データを関連付けして縮小したデータを保管するなどのの対策を取っています。

バックアップも含めたクラウドとHDDの使い分けですが、今回の宇宙のような特殊な事例は、新技術今後の課題は何かを考える上で参考になるところがあると感じる所です。

解決策以上に重要な課題の設定

先日ご紹介した、山口周氏のベストセラー

「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」
では、『正解のコモディティ化』というキーワードで、論理的思考のツールやメソッドの普及により、競争相手と同じ正解を皆がもってしまうという、差別化が困難になる状況を指摘しています。

また、同じく山口氏の最近の著書

『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』
では、

・『ニュ ータイプはあくまで 「課題の設定とその解決 」にこだわる』

と、イノベーションの停滞の原因を、セグウェイの例を引きながら『課題の不足』と指摘しています。

イノベーションは手段、あるいは課題達成時の結果としての状態であり、目的化する事を避けるべきとも解かれていますが、やはりビジョン⇒課題設定⇒目的⇒手段の順に考える事が必要であることを改めて感じます。

 

自社の課題の見つけ方

・現場の観察

HELLO,DESIGN 日本人とデザイン (NewsPicks Book) 石川 俊祐 () では、著者の石川氏は、

『デザイナーとは問いを設定し、その問いを解決する人である。』

と、デザインの本質は「課題の発見とその解決」にあり、人々の心や行動の変化からそこにある潜在的な課題や願望を読み解くことがデザインの根底にある考え方と説いています。

いわゆる「課題形成力」と「課題解決力」という、個人でも企業でも普遍的に必要とするスキル・能力であり、石川氏も語っているように、「デザインは必要なときに外注するもの」ではないことを強く感じた次第です.

 

・中長期の課題を遠い分野からのアナロジーで考える

今まで何度か採り上げている宇宙や深海、あるいはプロスポーツ選手など特殊な状況で出てきている課題と対策例は、自社の中長期の課題を考えるうえで、今の延長線上から離れて視野を広げ、思考を自由にするという効果が高いものと考えています。

『「宇宙ゴミの掃除ベンチャー」にみる「プレーヤーと受益者のギャップ」という市場機会を見つける方法』

『深海で光るサメ!~「深海」という技術開発課題と新市場を提供する「資源」(その2)』

NASAの事故レポートにみるマネジメントシステムの進化への期待』

『中国の月着陸にみる高度な課題設定という世界情勢を見るときのヒント』

『小惑星の上で活動するロボットに思う「超高度な課題」と「稚気」の重要性』

『ラグビーのビッグデータ活用に考えるプロのデータの適用先拡大』

上記のように、

現場を観察することによる課題の発見というデザイン思考と、

特殊事例の課題の本質は何かを考えて、抽象化と具体化を往復することで、自社の状況に当てはめてみるというアナロジー。

両者とも、知的資産経営報告書のSWOT分析や、将来の価値創造ストーリーを描く上でも有効なメソッドの一つとして利用してみることをお勧めする次第です。

 

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