eスポーツの普及問題にみる知財を使ったマネタイズとコミュニティ作りの方法のヒント

eスポーツ esports

【今日のポイント】

新規市場の立ち上げや新しいビジネスモデルの構築において、知財を使ったマネタイズは、特に同業他社と連携して行うことは中々難しいですが、グーグルなど他業界の先行事例も見ながら進めることが必要かと思います。

また、新規市場立ち上げのためのコミュニティづくりにおいて、自社や業界としてもブランド戦略も連携させて進める必要があると感じる次第です。

 

● ゲーム大国日本に「eスポーツ」が本格的に普及していない3つの理由

2019/1/27の文春オンラインに表記の記事が掲載されていました。

(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

日本で高額賞金は違法?

まず日本では法律上、海外のような高額賞金を簡単に出すことができない。正確には、賞金拠出の自由度が極めて低い。

海外では、ゲームユーザーからの売上や、大会チケットの売上で賞金を補填することが可能だが、日本ではこの方法は景品表示法や賭博罪に抵触する可能性がある。そのため、大会の賞金が高額になる場合でも、ゲーム会社や主催者が一括で捻出する必要がある。
また、モニターを使った娯楽を有料で提供すると風営法に反する場合があり、バーやカフェなどの既存施設でeスポーツ大会を開催するのはハードルが高い。

(中略)

ゲーム会社の寛容な姿勢も不可欠

また、普及にはゲーム会社の寛容な姿勢も不可欠だ。人を集めて草サッカー大会を開くとき、施設の利用料はかかっても「サッカーという競技」の利用料は発生しないが、eスポーツにおける「競技」は各ゲーム会社が制作した「ゲームソフト」だからだ。
サッカーゲームであれば『ウイニングイレブン』や『FIFA』シリーズなど、それぞれの「競技=ゲームソフト」の権利は必ず誰かが保有している。これら各ゲーム会社のIP(知的財産権)をどれだけ柔軟に活用していけるかも課題となる。

(中略)

eスポーツ業界が一体となれるか

3つ目は、eスポーツ業界の一体感だ。オリンピック開催にあたって、それぞれの競技団体のトップが揉めることは想像し難いが、競合同士であるゲーム会社の衝突は避けられそうにない。

ゲームには多くのジャンルがあるが、同ジャンルのゲームタイトルは完全な競合同士になる。サッカーゲームひとつとっても、上記の2タイトルがしのぎを削っており、オリンピックでeスポーツが正式競技になった場合、どちらが採用されるかは協議が難航しそうだ。』

と、eスポーツ(コンピューターゲーム、ビデオゲームで争うスポーツ競技)の日本での普及に関する課題として、

1.賞金や開催場所に関する法規上の制約

2.ゲーム会社の知的財産権に関する姿勢、スタンスからの開催主体の制約

3.eスポーツ業界全体の取りまとめ役の問題やゲーム会社同士の衝突による一体感醸成のハードル

の3点を挙げて、普及促進に向けた問題提起をしています。

賞金などの規制緩和ももちろんですが、民間でやれる事として、ゲーム会社の知的財産を使ったマネタイズの問題に興味を惹かれました。

 

● ユーザー課金や観客からの課金とそれ以外のビジネスモデル

通常のプロスポーツなら、観客からの課金(チケット代)とTV放映やストリーミングの放映権などの収益源がまず頭に浮かびますが、

eスポーツは、ネットとの親和性は高いと考えられますので、Google検索のビジネスモデルなど、通常のプロスポーツとは異なる収益源も考えられるのではないかと思います。

● TV放映以外のメディア利用によるコミュニティ作り

今回の記事では、

2020年のオリンピックに向けてゲーム会社がeスポーツに投資を続ける事で、ゲームユーザーのコミュニティを育てる事が、興行の成立や、放映権による収益につながると、海外の先行例から提言しています。

すでに始まっていると思いますが、SNSによるゲームユーザーとファンのコミュニティ作りや、オンラインRPGゲームなどの他のゲームとのコラボなど、色々方法は考えられるかと思います。

その際に、オープンイノベーションの考え方で、eスポーツで関係者が共有すべきところと、競争すべきところとを関連する知的財産も含めていかに切り分けてこの業界を育てていくのか、知財によるマネタイズと併せて注目したい次第です。

 

● 自社ブランドとコミュニティづくりを連携させる

上記のように、業界全体でのコミュニティづくりは、全く新規の市場を立ち上げる際には非常に重要ですが、

自社事業においても、コミュニティ作りは、「モノ売りからコト売りへ」の流れの中でますます重要になってきているかと思います。

その際に、自社の強みとして特許などの技術力だけでなく、自社のブランドというのもコミュニティ作りと、その中で自社が占める位置を強固にするためにも大変重要な知的資産となってきます。

知的資産の活用を考える際に、コミュニティづくりとブランドの連携という視点もぜひ加えて検討することをお勧めする次第です。

 

● 関連する本ブログのトピックス

・「エアロネクストの知財戦略にみる一貫したブランド構築戦略の重要性

事業分野や持つべき資産を絞りつつも、ブランドのように優先して構築すべき自社資産については一貫した知財戦略を実行しているドローン企業。

他社と連携するためにも強いブランドづくりはB2B、B2C問わず大変重要であり、ブランド構築から逆算して知財戦略を立てる必要がありますね。

 

・「パラオのサンゴ礁保護規制にみる優先順位をつけたブランド維持

優先順位を付けて「尖る」価値を見つけること、そしてそこで他社に先駆けて取り組むことが自社ブランドの構築と強化につながります。

 

・「エルビス・プレスリーのダンスを見せる交通信号に考える地域ブランドの活用と連携

地域間で連携して、縁の有名人などの各地域のコンテンツを、「共通のメディア」に載せることで、全体のブランド訴求力を上げるというのも、大変有効な方法かと思います。

 

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