医療ツーリズムにみる温故知新と情報落差の位置エネルギー

●　実現していない治療のための渡航

2018/8/3の１日５分ビジネス英語で表記のトピックが掲載されていました。
https://matt-english.com/podcast/20180803

（引用は『』でくくります。　太字と改行は筆者挿入、以下同様）

『多くの患者は医療ニーズのために海外に行くことを選んでいる。これは国内で利用できない高度な治療を受けるためか、または自国での医療費用を節約するためである。今日、治療のための渡航は数十億（ドル）の市場だ。

治療のための渡航の中心地は、それぞれ専門化している。
（中略）

治療のための渡航は予想されていたほど成長していない。患者は海外の多くの病院について正確な情報を入手できていないからだ。しかし、QunomedicalやMedigoなどの新しいオンラインサービスは、料金の内訳やスタッフの質などを含む多くの病院についての詳細な情報を提供して、患者が情報を得やすいようにしている。』

と、技術的なレベルおよびコスト面の制約で、自国では受けられない治療を求めて、その治療に専門化している地域への医療ツーリズムが進み始めていること、
患者が海外の医療機関の情報を得ることが難しいため、医療ツーリズムの成長速度は、早くはないが、この情報ギャップを埋めるようなオンラインサービスも登場していることを伝えています。

上記の情報提供サイトの一つ、MEDIGの動画サイトは以下のURLです。
https://youtu.be/jagtC_I-T1A

●　温故知新で日本ならではの医療ツーリズムを

日本においても、湯治や転地療養など、場所を変えて治療を行うというのは、以前から有りますが、さすがグローバルな時代の医療ツーリズムはスケールが大きいですね。

こういった各国の先進医療に伍して、日本の医療ツーリズムを振興させるためには、上記のような湯治などの日本ならではの療養文化を活かして、先進医療だけでなく、観光や癒し系などと組み合わせた医療ツーリズムを温故知新で目指してはいかがかと思いました。

いま、「和食」が世界的なブームとも言われていますので、「食文化」とも合わせて地域振興の視点から、地元の企業・行政で連携して進めてはと考えます。

●　情報落差の位置エネルギー

この記事からもう一つ想起したのは、情報の非対称性という「落差」が持つビジネスチャンスです。

今回の海外の医療情報プラットフォームビジネスも、他国の医療機関の情報の偏り・治療を提供する国と海外の間の医療機関およびユーザー双方の情報落差、特に医療というニーズの緊急性、深刻度の高い分野での情報落差の持つ「位置エネルギー」（水力発電などでいうところの、「水の高低差が持つエネルギー」）が大きなビジネスを生むのでは無いか、
または医療制度面の地域差というのもある意味医療ツーリズムビジネスを生む位置エネルギーとなっていると感じます。

●　自社の事業環境にある「落差」を考える

医療ツーリズムに限らず、サプライヤーとユーザー間の情報の非対称性は一般に見られることですね。

ネットでの情報、ＳＮＳの口コミなどによりその非対称性はだんだん縮小する方向にありますが、海外の情報となると、まだまだその落差は大きいものがあるかと思います。

また、情報に限らず、「その業界では当たり前」の慣行、ノウハウが他の業界から見れば非常に大きな競争力の源泉となっていることも多々あります。

そのような自社事業に有利な「落差」を、例えば自由化・規制緩和の観点から行政が問題視するといったリスクも想定されます。

そのような落差を維持することで競争力を確保するのか、お客様にとっての落差の解消によって新しい提供価値を生み出すのか、「落差」のもつ位置エネルギーを活用するという視点から、自社の事業環境を捉え直すことは、ビジネスチャンスやリスク対策のうえでも有効な一手になってきます。

そして、自社の周りにある「落差」を見出し、その自社にとっての（特に将来に向けての）意味を把握する上で、知的資産経営報告書の価値創造ストーリーの作成は役立つものと考える次第です。

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