臓器を作る3Dプリンターにみる人体のデジタルアーカイブ化の進展

3Dプリンター mohamed HassanによるPixabayからの画像

【今日のポイント】

3Dプリンターによる人の臓器の製造技術の開発が医療分野(再生医療、教育・訓練)で進んでいます。

3Dプリンターの進化に連れて、そこに入力するデータの方も精密さや多様な種類が求められ、人体のデジタルアーカイブ化が進むものと考える次第です。

 

● 透明な人間の臓器
2019/5/13の1日5分ビジネス英語に表記のトピックスが掲載されていました。
(引用は『』でくくります。太字と改行は筆者挿入。以下同様。)

ドイツでの、臓器の組織構造の細部を見るための透明な臓器の製造に関する実験。3Dプリンターで人の臓器までが作られる時代になったと改めて技術進歩の速さに感慨を深くした次第です。

 

● 日本の取り組み

日本でも、3Dプリンターによる臓器の作成に関する研究開発は進んでいるようです。

『機械で臓器を作れるか?臓器を工学で作る時代に向けて』
2019年1月25日富山大学 工学部 工学科生命工学コースでは表記の題で再生医療と臓器製造の関係を解説しています。

『再生医療には3つのレベルがあります。
(中略)
レベル3の再生医療は、人工的に作製した高度な組織、臓器を移植して臓器不全を治療する再生医療です。

このためには、機能する高度な組織・臓器を体外で作る技術が必要です。

そこで私たちは、多種細胞を3次元で配置する機械の手として3Dバイオプリンターを世界に先駆けて開発してきました。

もちろん、この装置だけで臓器が作れるわけではなく、その他にも今までにない培養技術や装置、材料や医薬品、様々な生産技術、製造技術が必要です。

そのような臓器を作るのに必要な一連の技術を考え、挑戦して、高度化することで再生医療をブレークすることを目指しています。』

『精密インクジェットプリンタを応用した「臓器造形システム」による『超軟質精密ウェットモデル』の販売開始?』

上記は、株式会社クロスエフェクトが紫外線照射による精密インクジェットプリンタ技術を応用して、軟質でリアルな心臓モデルを開発、発売するとの記事。

個人差の大きい先天性心疾患の手術の予行演習や若手医師の訓練への貢献を想定しています。

その他、バイオサイエンス学科・医療系大学、研究機関向けの3Dプリンターの販売も既に始まっています。

『バイオサイエンス学科・医療系大学、研究機関向け? バイオ3Dプリンター Bio3D Explorer』

このように、医療の分野でも3Dプリンターの活用が進んでいることが窺われます。

 

● 人体のデジタルアーカイブ化の進展

上記の記事や、先日のトピックス『ノートルダム大聖堂の大火災にみる文化財保護の資金調達へのデジタル化やブロックチェーンによる貢献でご紹介した2019/4/16のWIREDの記事

『火災に遭ったノートルダム大聖堂の「未来」は、遺されたデジタルデータが握っている』 
などからは、今後、「人体のデジタルアーカイブ化の進展」が進むことが予想されます。

上記の記事のように、3Dプリンターは造形、素材、サイズなどの面で進化し続けています。

そうなると、そこに使われるデータも、より精密であることに加えて、寸法だけでなく複数の素材の組み合わせや質感、機能など多くの種類の情報が必要となってきます。

こういったデータを収集・管理するデータベースが整備され、医療分野(治療や訓練・教育用など)や美容(整形)、スポーツなどの分野で、3Dプリンター、XR(視覚、聴覚、触覚)等を通じて利用されていくことは想像に難くありません。

また、以下の記事のように、無形文化財のデジタルアーカイブなども入ってきて、将来は人のスキルや技を再現または伝承するための教材や義足などの補助具、さらには人体自身の改造(バイオハッキング)等に用いられる可能性を感じた次第です。
『無形文化遺産のデジタル・アーカイブ』

 

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