ウーバーの食品配達サービス企業買収にみる、「自社のビジネスを上位概念で定義する」必要性の高まり
【今日のポイント】
ウーバーなども新型コロナの影響を受けていますが、その中でも自社の中で、その影響を追い風に出来る事業の強化に注力しています。
このような対応を可能とするためには、自社の提供価値を上位概念で捉え、そこで強みを構築して環境変化に対応する戦略が必要であり、加えて経営資源の「集中と分散」の使い分けも重要となってくるものと考える次第です。
● ウーバー、ポストメイツを26.5億ドルで買収 料理宅配事業拡充
2020/7/6のロイターに表記の記事が掲載されていました。
この買収については、2020/07/10の1日5分ビジネス英語でも以下の題名で取り上げられています。
『配達戦争、勝者と敗者 Delivery wars: Some win, some lose』
新型コロナによる悪影響を低減し、事業機会を逃さないための、事業ポートフォリオの構築とその更新の重要性が現れている事例と感じる次第です。
● 自社の提供価値を上位概念で捉え、そこで強みを構築して環境変化に対応する
上記の事例や特定の業界に限りませんが、新型コロナ関連のニュースとその移り変わりを見ていると、
「自社の強みを更に上位概念で考えて戦略を立てる企業が生き残る」ことが予想できるかと思います。
新型コロナに象徴されるように、VUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))の時代には、既存市場で持つ強みを横展開や、他の市場に活用することを戦略的かつ柔軟に進めることが、必要になってきていると感じます。
Uberは、自社の事業を「マッチング×輸送のテクノロジーとプラットフォーム」と位置づけている様子が、以下の解説記事からも窺えるかと思います。
『上場したUberに見るプラットフォームビジネスの裏側【第22回】』
2019/6/17のデジタルクロスの解説記事。
『『UberEATS』はなぜ成功した? UberJapanの社長に聞いてみた』
2017/3/2のTIME&SPACE(KDDI提供)の記事。
ウーバー・イーツとウーバー・キャブスは、
マッチングテクノロジーとしてはスマホアプリという共通点があり、
また食品やお客を「輸送する」という共通点がありますが、
その対象は、
市場としては、「旅客」か「食品の配達」
参加者としては、「運転手と乗客」、「レストラン、配達人、お客」
と大きく異なります。
似たビジネスモデルとしてはライザップ(健康コーポレーション)なども頭に浮かびますが、
こちらは、以前のトピックス『ライザップ社長のインタビューにみる「シンプルなメッセージ」の重要性』
でも、取り上げた、
ビジョン⇒ゴール⇒手段の順に考え、更に可視化・シンプル化して社内外に伝えるというプロセスについて、
健康やダイエットに関するノウハウ、そして巧みなマーケティング(CM)によって、ダイエットの分野で、「効果的なダイエットを提供する」だけでなく、更に上位概念の「結果にコミットする」というブランドイメージを構築し、そのブランドをM&Aも活用して他の市場に展開していくという戦略をとっていることが窺えるかと思います。
自社のビジネス(提供価値)を上位概念で捉えてプラットフォームなどの強みを構築し、ある市場(旅客)で得たブランドや資金などの強みを次の市場(食品配達)に展開するというビジネスモデルを作り上げることが、
事業環境の変化が激しい現在、自社の既存の強みも活かしつつ、効率的な市場開拓・拡大を図りながら事業変化に対応して生き残るために必要性を増して行くものと予想した次第です。
● 「集中と分散」の使い分けも重要
上記の内容は、「抽象化(メタ化)と具体化(具象化)のサイクルを回す」という視点から見たものですが、
「分散と集中」という視点からみると、
単に自社事業のドメインを抽象化するだけでは総花的になり、経営資源が分散して他者との差別化を図ることも困難になってきます。
ウーバー・キャブスのタクシーと乗客のマッチングプラットフォームや、ライザップのダイエット事業におけるCMおよび効果を上げるための顧客管理など、
抽象化した提供価値を実現するためには、強みを絞り込み、そこに経営資源を集中して自社の優位性を確立してから、横展開していくという、
「集中と分散の使い分け」の戦略とそれを実行する能力・体制の重要性も高まってきていると考える次第です。
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